クリニックでは、医師の診察前に看護師が問診を行うケースが多く見られます。しかし、病院勤務では外来での問診経験が少なく、問診に関する教育機会も限られているため、「十分なスキルを備えた看護師が不足している」という課題を抱える現場も多いでしょう。
本記事では、問診のスキル向上を目的として、問診のコツや重要性について解説します。この記事で紹介する内容を実践することで、質の高い問診を行えるようになるでしょう。
問診の基礎知識
問診とは、医師が患者の健康状態を理解するために行うものです。
ここでは、問診の目的やその重要性について、また多くの人が混同しやすい問診と診察の違いについても解説します。
問診の目的
問診を行う目的は、病気の見当をつけて誤診を防ぐためです。問診を通して、患者から主訴・現病歴・既往歴・家族歴・生活習慣・服薬歴などの情報を聞き出していきます。特に現病歴については、「辛い症状は何か」「いつから症状が出ているか」「症状が出たきっかけは何か」と詳しく聞き出す必要があります。
このように問診は、医師が適切な診断を下すために、患者の身体状態を詳細に把握することを目的としています。
問診の重要性
問診は、より正確な診断と治療につなげるために重要です。プライマリ・ケアの外来患者を対象にした研究によると、適切な問診で患者から詳しい情報を聞き出すことで、患者の「約86%」は診断できるとされています。つまり、問診で約9割の患者の診断を確定できることになるため、いかに問診が重要なのかが伝わるでしょう。
近年では、Web問診票を活用する医療機関が増えています。しかし、対面ではないため、患者が既往歴や家族歴を正確に記入できていないという課題も浮き彫りになってきました。したがって、記入漏れを防ぐためには、直接問診で聞き出すことが不可欠です。
しかし、医師が問診を行う場合、診察時間が長引く可能性があり、結果的に患者の待ち時間が長くなってしまう恐れがあるでしょう。そのため、医師と看護師が連携して問診を行う必要があります。
診察との違い
診察と問診について、病気の診断に必要な情報を集めるという行為は同じですが、得られる情報に違いがあります。問診は、あくまで患者の主観や既往歴など、患者から「主観的な情報」を聞き出して、治療方針を検討するための手段として行われます。
一方で診察は、打診・聴診・視診などの検査を行い、「客観的な情報」を収集して患者の健康状態を把握するための行為です。問診の段階で大部分の診断はできているものの、診察まで行わなければ、診断を確定することは難しいとされています。
つまり、問診と診察はお互いに補完し合う関係にあります。問診による主観的な情報と診察による客観的な情報から総合的に判断し、診断の確定へとつなげていきます。
問診の質を高める5つのコツ
問診のコツを知っておくことで効率よくかつスムーズに、診断に必要な情報を聞き出すことができ、問診の質を高められます。
ここでは、問診の質を高めるコツを5つ紹介します。
患者が端的に答えられる質問をする
患者に問診をするときには、端的に答えられるよう、答えやすい質問の仕方を意識しましょう。たとえば、「ズキズキ痛みますか? じんじん痛みますか?」というように、症状を具体的に尋ねつつ、患者に回答の選択肢を与えることで答えやすくなります。
反対に、「どのような痛みですか?」という端的な質問をすると、患者は言語化に悩み、答えにくいと感じる場合があるので注意しましょう。
いつから・どこが・どんな風にを聞く
問診において、「症状はいつからあるか」「どこに症状があるか」「どんな症状か」の情報は、医師が診断を下すうえで非常に重要です。
加えて治療歴があるか、症状は悪化していないかどうかも確認しましょう。治療歴の有無によって、その後の治療方針が大きく変わります。また、症状が悪化している場合は、別の疾患の可能性を考慮する必要があるため、「痛みの場所は広がりましたか?」「何か動作や姿勢によって、痛みは変化しますか?」と詳しく聞き出すことが大切です。
患者の家族まで既往歴を聞く
家族の既往歴は、遺伝性疾患のリスクを評価するうえで、重要な手がかりとなります。患者の家族に心臓病・高血圧・脳卒中・一部のがん・糖尿病などの既往歴があれば、遺伝が関与する可能性があるためです。問診票の質問項目には、「既往歴」と「家族歴」があり、特に家族歴は記入漏れが発生しやすい項目なので、注意しましょう。
家族の既往歴を聞き出す際は、「家族の既往歴はできれば3世代分あるのが理想です。親族に○○の病気の人はいますか?」と聞くよりも、1親等ずつ順番に聞いていく方がより確実に情報を得られるでしょう。
ただし、家族の既往歴は、プライバシーに関わるデリケートな情報なので、無理に聞き出す必要はありません。先に家族の既往歴を確認する目的を伝えておくと、患者も安心して答えられるでしょう。
患者の希望を聞く
問診のタイミングで検査の仕方や治療方針、薬の種類など患者の希望をあらかじめ聞いておきましょう。
患者の中には、宗教的な事情で一部の治療を拒否する方もいます。患者の希望を把握せずに治療を進めてしまうと、後々トラブルへと発展する可能性もあるので注意が必要です。たとえば、顆粒の薬は飲めない方や、アレルギーで一部の貼付薬は使えない方など、患者によってさまざまな事情があるため、事前に確認しておくことが重要となります。
多くの場合、問診票には患者の希望に関する項目が設けられていません。そのため、問診票を活用しているクリニックであっても、念のために口頭で確認するようにしましょう。
患者の心配事を聞く
患者から「この症状によって何を心配に思っているか」を聞くことも重要です。病気によっては、日常生活や学校生活に影響が出るのか、治療費の負担が大きくならないかと、患者が心配している可能性があります。患者の心配事は、診断そのものとは関係ありませんが、不安を解消することで、患者から治療への理解と協力を得やすくなります。
患者の不安を和らげることもクリニックの重要な役目であるため、患者の心配事を問診のタイミングで聞いておきましょう。心配事の内容によっては治療の方針を再検討したり、ソーシャルワーカーなどにつなげたりするなど、対応が必要となる場合があります。
このように患者の心配事を解消してから治療を始めることで、患者が前向きな気持ちで治療に取り組めるようになり、治療への協力を得やすくなるでしょう。
まとめ
問診は、医師が適切な診断を行ううえで重要です。紙ベースの問診票の場合は、記入漏れによって診察の精度に影響を与えてしまう可能性があります。そのため、問診票と併用しながら、医療従事者による直接問診を行うことが問診のコツといえます。
とはいえ、問診に時間をかけすぎると、患者の待ち時間が長くなり、患者満足度が低下してしまうでしょう。また、オンライン診療においても、問診と同時に行うことは次の診療への影響を招き、業務効率の低下につながります。
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この記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属