医療のICT化とは?推進される背景と現状、メリットを解説 

2024.09.04

近年、厚生労働省により医療のICT化が推進されています。ICT化を進めることで、現在の医療現場が抱えている人員不足や、現場の業務負担増加などさまざまな問題の解消につながるでしょう。

この記事では、医療のICT化について、背景や現状も踏まえながらわかりやすく解説します。また、ICT化のメリットやデメリット、現場に取り入れる際の活用事例なども紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

医療のICT化とは

そもそもICTとは、情報通信技術(Information and Communication Technology)を意味します。医療分野におけるICT化とは、医療従事者と患者の双方がデジタル技術を活用して、情報を共有し合い、医療の質と効率を向上させる取り組みのことです。

近年では、電子カルテや遠隔医療、オンライン診療など、インターネットやAI技術の活用をした医療サービスが積極的に推進されています。医療のICT化を推進することで、現代の日本が抱える医師や看護師不足の解消、医療従事者の業務量の改善、地域による医療格差の是正などが期待できます。

医療のICT化は、医療現場で働くスタッフだけでなく、患者にとってもメリットが大きい取り組みと言えるでしょう。

医療のIT化との違い

ITとは、情報技術(Information Technology)の略で、ハードウェアやソフトウェアなどの情報通信技術を指す言葉です。

一方で医療のICT化とは、 ITを活用して医療現場と患者間でコミュニケーションを取り、情報を共有することを指します。

つまり、 ITは「技術そのもの」を意味する言葉であり、 ICTは「技術を使って人やモノとやり取りを行う」という違いがあります。

医療のICT化が推進される背景と現状

医療のICT化が推進される背景には、日本の少子高齢化や、慢性的な医師や看護師不足が関係しています。

近年は超高齢化社会の影響により、医療を必要としている人口が増え続けている一方、医療を提供する側の医師や看護師の人員が圧倒的に不足しています。さらに少子化の影響もあり、人材不足の解消の見込みが立ちにくく、医療業界の人員不足は今後さらに深刻化する一方です。

人員不足が続くと、医療従事者1人あたりの業務負担が増加して、離職者が増える悪循環に陥ってしまいます。

そこで期待されるのが、 ICTの活用による医療現場の業務効率化です。 ICT化を推進することで、医療現場のスタッフが抱える業務負担を減らし、本来の業務に専念できるようになります。さらに優秀な人材の確保と育成、人員不足の解消にもつなげられるでしょう。

現在は、新型コロナウイルスの影響により、電子カルテやオンライン診療システムの普及率が伸び続けています。令和2年時点で電子カルテの導入率は、病床数400以上の大規模病院の場合では91.2%、一般診療所でも49.9%と、年々増加傾向です。

オンライン診療においては、令和3年4月時点で15.2%の診療所で実施されており、令和2年と比較すると緩やかながらも、実施件数が増加傾向にあります。

医療のICT化によるメリット

新型コロナウイルスと高齢化社会を背景に、医療のあり方を見直す動きが広がっており、今後はますます医療のICT化が推進されるでしょう。

ここでは、医療のICT化によるメリットを4つ紹介します。

  • 臨機応変に最適な医療の提供ができる
  • 医療業務の負担軽減につながる
  • 新薬開発や新しい治療法開発に貢献できる
  • 地域間の医療格差の解消につながる

臨機応変に最適な医療の提供ができる

医療現場のICT化に伴い、電子カルテの導入や医療システムとの連携が進むことで、患者の処方薬や既往歴、検査結果などの情報共有が医療現場内でスムーズに行えるようになります。

さらに、他の医療機関との情報共有や連携が可能となるので、患者はどこの医療機関を受診しても適切な医療サービスを受けやすくなるでしょう。医療機関側にとっては、患者の情報を迅速に把握できるため、より正確な診断や治療につなげられます。

従来は対面診療のみで、通院が難しい高齢者や疾患を持つ方にとっては、通院が大きな負担となっていました。しかし、オンライン予約やオンライン診療を導入することにより、患者一人ひとりに合わせた診療を提供できるようになるでしょう。

医療業務の負担軽減につながる

医療現場では、医療従事者が診察や治療を行うだけでなく、予約管理やカルテ管理、診断書の作成など多くの事務作業が発生します。

事務作業の負担が大きいと、本来の医療業務や患者との診察に時間を割くことが難しくなり、医療ミスのリスクが高まる可能性があります。そこで医療ICTを活用すれば、患者の医療情報や診療記録、検査結果などのあらゆる情報を一元管理して、即時に共有できるようになります。

また、データ入力や出力の自動化も可能なため、医療スタッフは本来の業務に専念できるようになり、結果的に患者の満足度の向上にもつながるでしょう。

新薬開発や新しい治療法開発に貢献できる

医療業界全体のICT化が進むことで、従来は紙媒体で管理されていた膨大な量の医療情報が電子化されて、ビッグデータとして解析が可能になります。

ビッグデータを詳細に分析することで、専門的な研究の精度が上がり、特定の疾患に対する新薬の開発や、有効性の高い治療法の開発が促進されるでしょう。また、膨大なビッグデータの活用により、新薬の開発期間が短縮して、開発コストを削減できます。

地域間の医療格差の解消につながる

近年は、地域による医療格差が問題視されています。都心に比べて、郊外や地方では病院の数や診療科の種類が少ない傾向にあり、患者は必要な医療を受けられない現状です。

しかし、ICT化が進むことで、病院が少ない地域に住んでいる方にも質の高い医療や適切な治療を提供できます。

また、歩行困難などの理由で長時間の通院が困難な高齢者も多くいます。中には通院が必要となっても公共交通機関の利用が難しかったり、予約が取れなかったりして、通院を断念してしまう人も少なくありません。

高齢者が増え続けている日本では、地域や年齢に関係なく、平等な医療提供が必要不可欠と言えるでしょう。

医療のICT化に潜む課題とデメリット

推進が期待されるICTですが、どのような課題やデメリットがあるのでしょうか。ここでは、ICT化を導入する際に考えられる課題やデメリットを3つ紹介します。

  • スタッフや患者のITリテラシーの問題が生じる
  • システムに異常が出ると対応できない
  • セキュリティ対策が求められる

スタッフや患者のITリテラシーの問題が生じる

高齢の医師や看護師の中には、パソコンやスマートフォンを使いこなせない人もいるため、医療のICT化として新しいシステムを導入しても、十分に使いこなせない可能性があります。

高機能なシステムを導入しても、適切な運用が伴わなければ、その効果は最大限に発揮されません。特に、医療従事者が使いこなせないシステムは、患者側にも浸透しにくく、導入効果が得られにくくなります。

ICT化を進める際は、スタッフ一人ひとりが新しいシステムを積極的に活用できる環境を整えることが重要です。そのためには、講習会の実施したり、操作方法のマニュアルを充実させたりする必要があるでしょう。また、誰でも簡単に操作できるシンプルなUIのシステムを選択することも大切です。

システムに異常が出ると対応できない

災害時などのトラブルによりシステムに異常が現れると、医療業務に支障をきたす可能性があります。

そのため、ICT化を進める前に、システムが何らかのエラーで稼働しなくなった場合の対策方法を考えておく必要があります。例えば、停電時の電力対策や、システムが稼働しなくなった際の対応マニュアル作成などを事前に準備しておくと安心です。

緊急時に医療の提供を止めないためには、システムエラー時の対処法を現場スタッフと共有しておくことが重要です。エラーメッセージの対処法に加えて、システムエラーが発生した場合に連絡する担当者の連絡先を共有しておきましょう。

セキュリティ対策が求められる

医療のICT化は、情報漏洩のリスクも伴うため、セキュリティ対策を強化することが重要です。

ICT化された医療現場では、患者の個人情報や受診歴、処方薬などのデータ共有をネットワーク上で行います。もし、これらの情報が漏洩すれば、患者にとって不利益をもたらすだけでなく、医療機関にとっても社会的な信用を失う重大な問題につながります。

ハッキングなどで個人情報が流出されないよう、セキュリティソフトを適切に選択して、対策を強化する必要があるでしょう。

また、オンライン診療や電子カルテを使用する際は、セキュリティリスクについて患者に説明して、同意を得たうえで利用するなどの配慮も必要です。

医療ICTの活用事例

医療のICT化を検討する中で、実際にどのように医療現場で活用できるのか疑問に思う方も多いでしょう。ここでは、医療におけるICTの活用事例を4つ紹介します。

  • オンライン診療(遠隔診療)
  • 電子カルテ・電子お薬手帳
  • リモートモニタリング
  • 地域医療情報連携ネットワーク

オンライン診療(遠隔診療)

新型コロナウイルスの蔓延以降、オンラインを利用した遠隔診療の需要が高まりつつあります。

オンライン診療を導入すれば、自宅で医師の診察を受けられるため、高齢者や疾患を抱えている方、遠方にお住まいの方でも容易に診療を受け続けることができるでしょう。

また、患者同士の接触機会が減るため、インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症の拡大を防ぐ効果が期待できます。

オンライン診療を導入すると、問診や診察をオンラインで完結できるため、業務全体の効率化も図ることも可能です。さらに患者の待ち時間が減ることで、診察室の回転率が上がり、より多くの患者を診察できるようになるでしょう。

電子カルテ・電子お薬手帳

電子カルテとは、従来の紙のカルテを電子化して、患者の診療情報を電子データとして記録・管理するシステムのことです。

従来の紙カルテでの管理は、カルテ記入後に所定のシステムに入力する作業が発生して、情報共有するまでに多くの時間を要する課題がありました。しかし、電子カルテを導入することで、患者の診療記録や検査結果、処方薬や既往歴など、すべての情報を最初からデジタルデータとしてシステム上で管理できるようになります。

さらに、電子カルテを検査システムと連携すると、検査結果がすぐに反映されて確認できるため、院内の滞在時間の削減につながるでしょう。

電子版のお薬手帳とは、従来の紙のお薬手帳をスマートフォンアプリで管理できるようにしたものです。アプリになることで、お薬手帳を忘れることもなくなるうえ、急な来院時でも薬の記録を確認することが可能となりました。

かかりつけ薬局以外でも薬の服用歴を簡単にチェックできるため、患者への案内もしやすくなるでしょう。

リモートモニタリング

リモートモニタリングは、医師による遠隔地からの健康管理や診療に活用できます。

例えば、ペースメーカーの状態や患者の心拍数などのデータを定期的に送信することで、医師は患者の状態を遠隔から監視し、必要に応じてペースメーカーの設定を調整できます。また、患者の体調データに基づいて、最適な治療方針や生活習慣指導も行えます。

従来は、看護師が24時間365日見守りを行う必要がありました。しかし、リモートモニタリングシステムを導入することで、患者の身体に異常が起きた際はすぐに通知が届くため、いざという時に迅速な対応が取れるようになります。

地域医療情報連携ネットワーク

地域医療情報連携ネットワークとは、厚生労働省が推進しているICTを活用した情報共有システムのことです。

地域医療情報連携ネットワークを活用することで、大規模病院と地域クリニックの連携がよりスムーズになるため、緊急入院や手術が必要な際は、迅速かつ的確な対応が可能となります。

現段階での普及率はそれほど高くないものの、最近では、放射線科で撮影したX線画像を医療機関同士で即時共有ができるようになっています。

まとめ

医療ICT化の推進は、医療従事者の負担軽減、患者の利便性向上、医療の質向上などさまざまなメリットが期待できます。医療現場の業務がスリム化することで、スムーズな診療や適切な治療につながりやすくなり、結果的に患者の満足度向上にもつながるでしょう。

ICTの中でもオンライン診療は、小規模の医療機関でも比較的取り入れやすいシステムです。オンライン診療を導入することで、遠隔地に住んでいる方や、通院が困難な患者への診療が可能となります。

オンライン診療システムの導入を検討している方は、ぜひ「march」をご検討ください。シンプルでわかりやすいUIとなっているので、ITに不慣れな方でも安心して利用できます。無料見積もり・フリートライアルも実施しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

お役立ち資料ダウンロード

  • オンライン診療の流れ
  • サービスの体系
  • サービスの機能紹介
  • LINEを活用した売上拡大と業務改善
  • オンライン診療の需要について
  • 導入方法

この記事の監修者

監修者尾崎 功治

2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。

日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属

リンク:オンライン診療クリニックmarch clinic

お役立ち資料ダウンロード

資料ダウンロード

無料トライアルのお申込

お申込はこちら
  • お役立ち記事検索

    カテゴリー