クリニックを開業するにあたり、開業資金の調達方法に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。また、資金調達方法として融資を検討している方も多いでしょう。開業資金の調達方法には、融資を受ける以外に助成金や補助金制度を活用する手段もあります。
この記事では、融資を行っている団体や金利、クリニック開業で利用できる助成金や補助金について詳しく解説します。クリニックの開業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
クリニック開業時の資金調達額はいくら必要?
クリニックを開業する際にかかる費用には、物件の契約料や内装工事の費用、医療機器類の費用などがあり、数千万単位での資金調達が必要です。
診療科目や開業形態によりますが、一般的には5,000万円〜1億円の資金が必要とされています。多額な資金の準備が必要となるため、自己資金だけでは足りないことも多く、融資を受けたり、助成金や補助金を活用したりする方も多いです。
自己資金の目安は、開業資金の1〜2割ほどと言われています。一般的なクリニックの開業資金を考慮すると、1,000万円程度の自己資金があれば、余裕を持って開業できるでしょう。
クリニック開業の際の資金調達方法
融資を受ける
助成金を活用する
自己資金を活用する
親族から借りる
医療機器をリースで準備する
融資を受ける
クリニック開業には多くの資金がかかるため、不足分を融資で賄うことが多いでしょう。
一般的な融資先として、日本政策金融公庫や医師会が挙げられます。しかし近年では、一般の金融機関でもクリニック開業向けの融資制度を設けているところが増えているため、選択肢の一つとして覚えておくとよいでしょう。
融資期間によって金利や上限金額が異なります。返済総額に大きく影響するため、事前に調べて申し込み先を決めましょう。各団体の詳細については後述しているので、詳しくはそちらをご覧ください。
助成金を活用する
融資を受けることも重要ですが、希望金額が高額になるほど審査は厳しくなるうえに、借入期間が長期化しやすくなるデメリットがあります。
その点、厚生労働省や経済産業省が管轄している助成金・補助金は、返済不要の制度も多く、一定の受給条件をクリアすれば受給できる可能性が高くなります。
助成金・補助金は、開業資金全体を賄うものではないため、資金調達の一手段として活用して、不足部分は自己資金や融資で補うようにしましょう。助成金・補助金制度について詳しくは、後述しているのでそちらをご覧ください。
自己資金を活用する
診察を中心とした診療科であれば、自己資金なしで開業できる可能性があります。しかし高額な医療機器や広い医療施設を必要とする診療科であれば、自己資金の準備が必要となるでしょう。
将来的にクリニック開業を目指している勤務医の方は、少しずつ開業に向けて資金をためておくことが大切です。
親族から借りる
親族からの借り入れは、親族が開業を応援してくれていて、資金面で援助してくれる場合に有効な方法です。
しかし、親族から借りる際は、贈与とみなされないよう注意する必要があります。借入金の証拠を残すため、お金を受け取る際は、銀行振り込みにして記録を残すようにしましょう。
また、親族から借りる前に、金銭消費貸借契約書を作成したうえで、契約に基づいて返済していく必要があります。開業直後は、資金繰りによって返済が困難になるケースも考えられるため、契約書作成時に据え置き期間を設けておくと安心です。
出世払いの形態を選択する場合は、返済前に税務調査が入ると贈与とみなされる可能性があるので注意が必要です。税務調査のリスクが気になる方は、最初から出世払いではなく、 返済時期を明確にして計画的に返済していくことをおすすめします。
医療機器をリースで準備する
開業時に必要な医療機器をリースで準備することは、初期費用を抑えられるだけではなく、節税対策にも繋がります。高額な医療機器を一度に購入する場合の減価償却費とは異なり、前倒しに費用計上できる大きなメリットがあります。
もう一つのメリットは、新しい医療機器への更新によって、常に質の高い医療を提供できることです。技術革新の激しい医療分野で活躍するでしょう。
クリニック開業の融資を行う団体一覧
各団体によって融資の上限金額や金利、返済可能期間など諸条件が異なります。それぞれの条件を詳しく調べたうえで、自分に合った融資を選びましょう。
クリニック開業の融資を行う団体は、下記の4つです。
日本政策金融公庫
医師会
金融機関
福祉医療機構
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、財務省が管轄する政府関係金融機関の一つで、中小企業や小規模事業者に向けた経営支援を中心に行っています。
特に、資金調達のハードルが高いと言われる創業企業への支援も積極的に行っているのが特徴です。創業初期でも審査が通りやすいうえ、比較的低金利で融資を受けられるため、融資を受けるメリットが大きいでしょう。
日本政策金融公庫の融資内容は、運転資金の上限額が4,800万円、設備資金の上限額が7,200万円となっています。
返済期間は20年まで設定が可能で、開業2年以内は利息だけ支払うこともできます。基準金利は返済期間によって異なり、5年以内の返済で1.50%、20年以内の返済で2.40%です。
なお、担保や保証人の有無などの信用リスクに応じて、「特別金利」が適用となる場合があります。特別金利が適用されると、通常の基準利率よりも低い金利で融資を受けることが可能です。
医師会
医師の開業を支援するため、開業支援ローン制度と呼ばれる融資制度を設けている医師会もあります。
融資内容は医師会によって異なりますが、クリニックの内装費用や建築費用、医療機器の購入費用などが対象となります。
医師会に加入することや、事前に該当地域の医師信用組合に入会することなどが条件となりますが、一般的には民間金融機関の金利よりも低金利で設定されています。借入限度額や返済期間などの諸条件は、医師会によって異なるので、加入前に確認しておきましょう。
金融機関
信用金庫や銀行など、民間の金融機関でも開業資金の融資を受けられます。
地方銀行や信用金庫は、地域経済の活性化に積極的なこともあり、比較的融資を受けやすいメリットがあります。さらに、開業に関するさまざまな相談に乗ってくれるなど、柔軟なサポートを受けられることもポイントです。
開業したい地域に地方銀行や信用金庫がある場合には、一度相談するとよいでしょう。
福祉医療機構
福祉医療機構は、福祉医療分野に特化した融資を行っている機関です。
融資内容は、クリニック開業の建物や土地の取得、不動産関連の貸付、医療機器購入費用など、融資対象が広いのが特徴です。
返済の最長期間は30年と長く、貸付時の金利が固定金利であり、さらに低金利なのもポイントです。ただし、訪問診療などの無床診療所を開設する場合は、診療所不足地域であることが条件です。
クリニック開業で利用できる助成金一覧
助成金や補助金は、国や地方公共団体によって制定されているものが多く、一定の要件をクリアしていれば、返済不可のものがほとんどです。
クリニック開業で利用できる助成金は、下記の3つです。
創業助成金
事業継承・引継ぎ助成金
トライアル雇用助成金
創業助成金
創業補助金とは、国や地方公共団体が開業時に必要な経費の一部を補助してくれる制度のことです。経済産業省の中小企業庁が管轄しており、新規事業の立ち上げによる地域経済の活性化を目的としています。
創業補助金の返済は、基本的に不要とされていますが、一定の条件を満たすと返還が必要となる場合があります。創業補助金の申請期間は限られており、毎年申請期間が異なるため、中小企業庁のホームページを随時チェックしておきましょう。
創業補助金の上限額は200万円で、補助率は1/2以内です。受給するには、以下の2つが必要となります。
使用目的が事業遂行にとっての必要性が明確な経費
交付決定日以降に補助事業期間内の発注などで発生した経費および証拠書類
必要経費の約半分の補助が出る場合もあるので、ぜひ有効に活用しましょう。
事業継承・引継ぎ助成金
事業継承・引継ぎ補助金は、地域経済の発展や活性化に貢献する中小企業者から事業を継承したうえで、再チャレンジを行おうとする中小企業者などを支援するための制度です。
医療法人は受給対象外となりますが、個人の開業医の場合は申請が可能です。事業継承・引継ぎ補助金は、以下の2種類に分けられます。
後継者承継支援型
事業再編・事業統合支援型
「後継者承継支援型」は、先代から事業を受け継いだ際に受給できます。補助金の割合と上限額は、補助率1/2に対して上限金額が225万円、補助率2/3に対して上限金額が330万円の2種類です。
「事業再編・事業統合支援型」は、企業の統合や再編の際に受給できます。補助金の割合と上限金額は、補助率1/2に対して上限金額が450万円、補助率2/3に対して上限金額が600万円となります。
いずれも基本的な補助率は1/2ですが、特定の条件をクリアしている場合は、2/3となることもあります。
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、厚生労働省が実施する助成金の一つです。就業が難しい求職者への救済措置として作られた制度であり、雇用の創出を目的としています。
トライアル雇用助成金は、職業経験や長期的なブランクがある求職者を、ハローワークを通じて一定期間雇用した場合に受けられます。
支給対象期間は、最長で3ヶ月間となり助成額は、対象者1人につき月額4万円です。なお、助成金を受給するには、「1週間の所定労働時間が30時間以上であること」と「一定期間解雇していない事業者であること」が条件です。
まとめ
クリニック開業には、物件のテナント費用や内装費用、医療機器の導入費用などをはじめとする多くの初期費用がかかります。
クリニックの開業では数千万円の資金が必要となるので、資金調達方法の適切な選択が重要です。資金を調達するには、融資だけに頼らず、自己資金や助成金、補助金なども積極的に活用しましょう。
特に助成金や補助金は、返済の必要がない資金なのでチェックしておくことをおすすめします。
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この記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属