クリニックにおけるBCPとは?具体的なBCP対策と注意点を紹介

BCPの策定は、今や民間企業だけの課題ではありません。医療機関においても、災害やパンデミックなどの非常時に迅速かつ適切に対応できるよう、事前にBCP(事業継続計画)を策定することが重要です。

本記事では、医療機関におけるBCPの必要性に加えて、具体的な対策や注意点を解説します。クリニックでBCP策定を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

クリニックにおけるBCP(事業継続計画)とは

クリニックにおけるBCPとは、大規模災害や緊急事態が発生した時でも、事業を中断させずに継続させるための計画のことです。主な目的は、患者さまの安全を確保すること、診療の継続性を維持することにあります。

近年では、日本の自然災害リスクの高さから、BCP策定の重要性が高まっています。東日本大震災や熊本地震、平成30年7月豪雨災害等を経て、医療機関においてもBCPの重要性が認識されるようになり、策定を推進する動きが加速している現状です。

医療・福祉業界のBCP策定状況

内閣府が令和5年に発表した資料によると、医療・福祉業界では「策定済みが41.3%」「策定中が36.1%」との結果となっています。つまり、全体の77.4%がすでに策定済み・着手済みである現状です。

また、厚生労働省が令和3年に作成したBCPの研修資料によると、医療機関に期待されるBCPのレベルは、一般企業よりも高いとされています。人の生命に関わるサービスを提供しているため、災害時においても継続的に医療を提供することが今後は強く求められるでしょう。

クリニックなどの小規模な医療機関においては、限られたリソースの中でBCPを策定・実行することが難しい場合があります。しかし、災害はいつ起こるか分からないため、早急な対処が必要です。

医療機関のBCP策定は義務化されている?

2024年7月でBCP策定が義務付けられているのは「災害拠点病院」であり、クリニックは対象となっていません。同様に、2024年4月に義務化の対象となるのは「すべての介護サービス事業者で」あり、クリニックは対象外です。

現状、すべての医療機関でBCP策定が義務化されていないものの、今後は義務化の対象になる可能性も否定できません。災害への備え・義務化への備えという「二重の備え」として、BCP策定に早めに取り組むことが望ましいといえます。

クリニックにおける具体的なBCP対策

ここでは、BCPの具体的な対策を6つ紹介します。事前に対策項目を押さえておけば、BCP策定にスムーズに取り組めるでしょう。

インフラ対策・整備

自然災害が発生した際、インフラが寸断される可能性があるため、インフラ対策・整備は欠かせません。医療施設におけるインフラ整備とは、ネットワーク・データベースの保全、備蓄の確保のことです。

具体的な対策としては、非常時に発動する自家発電システムの導入が挙げられます。クリニックの設備や医療サービスを考慮して、優先度の高いものから順に対策を講じていきましょう。

人的資源の備え

自然災害などが発生した場合でも、医療サービスを継続的に提供するためには、十分な人員を確保することが重要です。災害時の状況は予測が難しいため、さまざまなケースを想定して、人員確保のための計画を立てる必要があります。

具体的には、従業員が被災した場合や、交通網が遮断されて出勤が困難となった場合などが挙げられます。このようなケースを想定して、近隣の医療機関と連携を強化し、相互に支援できる環境を構築しておくことが大切です。また、従業員の安全や健康を確保するための対策も併せて検討する必要があります。

非常時における指揮命令系統の確立

非常時において適切な医療サービスを提供するためには、現場を指揮する責任者が欠かせません。非常時は混乱状態が予想されるため、指揮命令が十分に機能していないと、現場の統率が乱れてしまいます。

BCPを策定するうえでは、平時の指揮命令系統が崩れることを前提に、非常時の体制を構築しておくことが重要です。第一の責任者が不在の場合には第二の責任者が指揮を引き継ぎ、それでも対応が困難な場合には第三の責任者が指揮を執るなど、代行者の順序を明確に決めておきましょう。

業務の優先順位の整理

自然災害などが発生すれば、平時と同様の医療サービスの提供は困難です。よって、BCP策定時に業務の優先順位を整理しておかなければなりません。

患者の安全確保と医療機関の機能維持のため、医療機器の稼働状況やスタッフの出勤状況などを考慮しながら、優先する業務を整理しましょう。

また、地震・台風・洪水など災害の状況によっても、必要な対応が異なります。洪水であれば、人命救助を最優先とし、建物の浸水対策を行い、医療機器や記録装置を安全な場所に移動させる必要があるでしょう。限られたリソースで効率的に対処できるよう、優先順位を明確にしておくことが重要です。

サイバー攻撃への備え

近年は医療機関を狙ったサイバー攻撃も珍しくありません。ネット環境を利用している以上、システム障害やサイバー攻撃へ対する備えも重視しましょう。

具体的には、定期的に医療のシステムやソフトウェアの脆弱性診断を行い、必要に応じてセキュリティを強化することです。セキュリティ対策を怠らないようにすることが、患者情報の保護と医療機関の信頼性の維持につながります。

また、セキュリティに強いオンラインシステムを導入したり、厚生労働省のサイバーセキュリティ研修を受講したりするのも対策のひとつです。

患者情報のバックアップ体制の整備

非常時においても患者情報の記録・保持は極めて重要です。通常のカルテ・電子カルテを問わず、非常時にも難なく確認・記録できる体制を整える必要があります。

電子カルテには「オンプレミス型」と「クラウド型」があり、自然災害発生時のことを考えるとクラウド型が望ましいでしょう。

オンプレミス型
自院にサーバーを設置し、電子カルテを保存するタイプ
クラウド型
自院でなく、インターネット上に電子カルテを保存するタイプ

クラウド型の電子カルテは、自然災害が発生しても、インターネット環境さえあれば容易にアクセスできます。万が一、クラウドサーバーに障害が発生した場合でもオフラインで確認できるよう、定期的なバックアップを取っておくことも大切です。

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BCP策定後に実施すべきBCMとは?

BCPは策定して終わりではなく、継続的に取り組む必要があります。そこで重要となるのが、策定したBCPを組織内に浸透させるマネジメント(BCM=Business Continuity Management)です。

具体的には、定期的な研修や訓練を通して、クリニック内の文化としてBCPを根付かせる取り組みが挙げられます。課題となる部分を継続的に改善することがBCMの目的です。BCPを策定した後は、BCMも意識的に実践しましょう。

クリニックのBCP策定における注意点

BCP策定において、押さえておきたい注意点が3つあります。策定したBCPが適切でなければ、修正を余儀なくされ、余計な時間がかかってしまうかもしれません。事前に注意点を押さえたうえで、BCP策定に取り組みましょう。

実現可能な計画を策定する

BCP策定においては、実現可能な計画を策定することが重要です。現実とかけ離れた理想を計画に落とし込むと、非常時に上手く運用できなくなります。現実的なBCP策定を実施するためには、現状のリソースを正確に把握することが重要です。

たとえば、クリニックが利用できる人的・物的・技術的資源を明確にすれば、その範囲内で実現可能な計画を立てられます。机上の空論や希望的観測で策定するのではなく、現実的な目線で策定しましょう。

定期的な改善を実施する

BCPは、一度実施して終わりではありません。BCMやインフラ点検を通じて、継続的に改善する必要があります。たとえば、新しい医療機器の導入やシステムのアップデートが行われた場合、BCPにどのような影響を与えるかを評価して、必要に応じて計画を調整することが重要です。

また、クリニックで災害に備えて備蓄品を準備している場合は、それらの備蓄品を常に適切な状態に保つために、ローリングストックを継続的に行う必要があります。

他クリニックのBCPを模倣しない

BCP策定において、他クリニックのBCPを参考にすることもあるでしょう。しかし、他クリニックとは立地・患者層・診療科目・規模などの条件が異なるため、同じBCPになることはありません。

他クリニックのBCPをベースにしつつ、自院に適した形へ計画を組み立てていきましょう。たとえば、自院が所在する地域の地理的条件や気候特性を考慮して、地震・洪水・台風などの自然災害に対するリスク評価を行うなどです。

他クリニックのBCPを参考にする際は、模倣とならないよう注意してください。

まとめ

緊急事態に備えて、BCPを早めに策定することで安定したクリニック運営につながり、患者の安全を守るための鍵となります。

「march」は、オンライン診療に必要な機能をすべて有するサービスです。クラウド型電子カルテの導入や、処方薬・商品の在庫管理など、BCP策定に役立つ機能を豊富に取り揃えております。BCP策定を検討している医師・担当者の方は、ぜひ導入をご検討ください。

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この記事の監修者

監修者尾崎 功治

2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。

日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属

リンク:オンライン診療クリニックmarch clinic

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