医療のIoTとは?注目される背景やメリット・デメリットを紹介

2024.09.11

IoTという言葉は日常生活でよく耳にするようになりましたが、医療分野でも活用が進んでいます。医療機関でIoTを導入するためには、メリット・デメリットを把握して、導入の目的を明確にすることが大切です。

本記事では、医療業界においてIoTが注目される背景や、導入によるメリット・デメリットを解説します。併せて、IoTが医療の現場にどのような変化をもたらすかを理解できるよう、現場の活用事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

医療におけるIoTとは 

医療におけるIoT(Internet of Things)とは、医療現場で利用される機器や設備が、インターネットを経由してつながる仕組みのことを指します。従来の医療機器は、それぞれ独立した存在であったため、機器同士の連携にはどうしても限界がありました。

一方IoTでは、それぞれの医療機器がインターネットを通じてデータを共有し、連携することが可能です。人の手が加わらず迅速に連携を図れることから、医療現場の効率が大幅に向上します。

例えば、患者のバイタルサインをモニタリングするデバイスが異常を検知した場合、そのデータが即座に担当医のデバイスに送信されることで、迅速な対応が可能となります。

医療業界に限らず、マンパワーには必ず限界があります。IoTを導入すれば、医療業務を自動化でき、人手不足の解消とともに業務の効率化を図れるでしょう。

医療IoTとIoMTの違い

医療IoTは「IoMT(Internet of Medical Things)」と呼ばれることもあります。どちらも医療分野におけるIoT技術を意味しているため、医療IoT=IoMTと捉えて差し支えありません。

なお、IoMT学会では、IoMTを「医療機器とヘルスケアのITシステムをオンラインのコンピューターネットワークを通じてつなぐ」と定義しています。

医療業界でIoTが注目される背景

医療業界でIoTが注目される背景には、いくつかの社会的な問題が関係しています。

医療業界は、依然として人手不足の状態が続いており、医師や看護師の負担増加が問題となっています。また、高齢化に伴う医療費の増大も大きな問題となっており、限られた人員で十分な医療サービスを提供することが困難な状況です。

このような課題を解決する手段として、IoT技術の導入が注目されています。医療施設への地理的な障壁から十分な医療を受けられない方も多いことから、近年は遠隔医療やリモートモニタリングの需要が高まっています。

医療IoTを導入するメリット

超高齢化社会を迎える日本において、IoTは医療の課題解決に不可欠な技術です。医療IoTを導入するメリットとして、以下の3つが挙げられます。

  1. オンライン診療を実施できる
  2. 医療サービスの質が向上する
  3. 人手不足の解消に期待できる

オンライン診療を実施できる

IoTを導入することで、医療機関はオンラインで診療を実施できるため、医療機関・患者双方の負担を軽減できます。

医療機関側にとっては、診察のために来院する患者の数を抑制できるので、院内の混雑の緩和につながります。また、医療スタッフの業務負担が軽減されるので、より患者一人ひとりに質の高い医療サービスを提供できるようになるでしょう。

一方、患者は通院の手間を省けるうえに、待ち時間による不要なストレスを抱えることなくなります。特に、遠隔地に住んでいる方や移動が困難な高齢者にとっては大きな利点となるでしょう。

患者の負担が軽減されれば、結果として患者満足度の向上やクレームの低減につながるでしょう。

医療サービスの質が向上する

IoTを導入すれば、医療サービスの質が向上して、より質の高い治療を提供できます。従来の診断・臨床データに加えて、IoT機器でリアルタイムに収集したデータを活用することで分析精度が上がり、より適切な医療サービスを提供できるようになるためです。

例えばウェアラブルデバイスを活用して、患者の日常生活のバイタルサインをモニタリングすれば、そのデータを参照することにより、個別に適切な治療計画を立てられます。従来の医療機器では、患者の日常生活の情報を得る手段が限られていましたが、IoT機器を活用することで、高精度の情報をリアルタイムで入手できようになりました。

IoTの導入によって、情報収集の効率や精度が高まり、患者一人ひとりに合わせたきめ細かい医療サービスが提供可能となります。

人手不足の解消に期待できる

医療IoTの活用により、業務を自動化することで、人手不足の解消が期待できます。例えば、患者のバイタルサインや活動データをリアルタイムで自動的に収集することで、医療スタッフが手動でデータを収集・記録する手間が省けます。

また、在宅療養中の患者を遠隔でモニタリングすれば、訪問看護や在宅医療の頻度が減り、スタッフは他の業務に注力できるようになります。

結果として医療機関全体の負担が軽減され、限られた人手を効率的に活用できます。人手不足の現場で起こりやすいヒューマンエラーの減少し、医療ミスの防止にもつながるでしょう。

IoT導入における課題とデメリット

医療IoTの導入においては、課題やデメリットも併せて押さえておく必要があります。メリットとデメリットを比較しながら、課題への対策を見据えて導入することが重要です。

IoT導入における課題・デメリットには、以下の3つが挙げられます。

  1. 導入コストがかかる
  2. 情報漏洩のリスクがある
  3. 障害や故障が発生する場合がある

導入コストがかかる

医療IoTの導入において無視できないのが、経済的コストです。IoT機器や関連システムの購入・設置に加えて、設備メンテナンスなどのランニングコストも継続的に発生します。

加えて、医師やスタッフがIoT機器を使いこなすには、操作法を習得するための教育や研修が欠かせません。よって、経済的コストだけでなく、教育コストがかかることも念頭に置く必要があります。

新しい取り組みである以上、どうしても経済的コスト・教育コストは発生してしまいます。コストを低減するためには、経済的負担の小さいリーズナブルなIoT機器や、使いやすさに定評のあるIoT機器を選ぶなどの対策が必要です。

情報漏洩のリスクがある

医療データには、患者の病歴や検査結果など、秘匿性の高い個人情報が含まれているため、セキュリティ対策が必要です。医療IoT機器は、インターネットを通じてデータを送受信するため、不正アクセスやデータの流出、改ざんといったリスクはどうしても避けられません。

よって、IoT導入時は堅牢なセキュリティ対策が必須です。具体的には、データの暗号化、アクセス制御、監視システムの導入など、あらゆる角度からのセキュリティ対策が必要となります。

徹底的にセキュリティを強化したい場合は、情報セキュリティの専門家にコンサルティングを依頼するのも方法のひとつです。情報漏洩を確実に防止するためにも、必ずセキュリティ対策に注力しましょう。

障害や故障が発生する場合がある

IoT機器は、通信障害やハードウェアの故障などのリスクが伴います。これらのトラブルにより、 IoT機器から収集されたデータが活用できなくなると、医療サービスの提供に支障をきたす可能性も否めません。

具体的には、重要な患者データがリアルタイムで送信されない、またはデバイス自体が動作しないといった問題が発生する可能性が考えられます。あらゆるトラブルに備えるため、日頃のメンテナンスを徹底しましょう。定期的な点検やソフトウェアのアップデートを実施して、常にIoT機器の正常な動作を確認することで、未然にトラブルを防げます。

ただし、日頃メンテナンスを実施しているにも関わらず、不測の事態が生じる可能性もあります。よって、障害が発生した際は、迅速に対応できるマニュアルを準備しておくことも重要です。

医療IoTの活用事例

医療IoTのメリット・デメリットを把握しても、実際の現場でどのように活用されているかイメージしづらいこともあるでしょう。ここでは、医療IoTの活用事例を5つ紹介します。

  1. 在宅患者にオンライン診療を提供
  2. ウェアラブルデバイスでデータ収集
  3. 院内設備の稼働状況をリアルタイムで把握
  4. IoTカメラを活用した患者の見守り
  5. 患者の服薬サポート

在宅患者にオンライン診療を提供

近年は、感染症のリスク防止の観点から、オンライン診療に注目する患者が増えています。オンライン診療に対する需要に対応するため、導入に踏み切る医療機関も年々増えている状況です。

オンライン診療に対応すれば、患者は自宅から専門的な医療サービスを受けられ、通院の手間を省けます。医療機関にとっても、診察の効率化や患者満足度の向上を図れるうえ、集患戦略の一環として有効です。禁煙外来などの自由診療をオンラインで提供して、遠方に住む患者や忙しくて通院が難しい方へのアプローチを図ると良いでしょう。

「march」は、診察予約からオンライン診療・決済・配送まで、オンライン診療に必要な機能を用意したサービスです。直感的なUIと利用ガイドを備えており、誰でも簡単にシステムを利用できます。

導入から運用まで医療DXのプロが徹底的にサポートいたしますので、オンライン診療の導入を検討している医療機関は、ぜひお気軽にご相談ください。

ウェアラブルデバイスでデータ収集

ウェアラブルデバイスは、患者の健康状態をリアルタイムで監視して、重要なデータを収集するためのツールです。例えば、腕時計型のウェアラブルデバイスを患者に装着してもらえば、体温、活動量、血圧、脈拍などの健康指標を測定できます。

取得したデータはリアルタイムで医療機関へ送信されて、医師・看護師が患者の状態を常に把握できるようになります。血圧や脈拍の異常な変動が検知された場合は、自動的にアラートを発信して、医療スタッフに通知させることも可能です。

また、収集したデータを継続的に分析することで、患者の健康状態の傾向を把握して、予防医療にも役立てられます。

院内設備の稼働状況をリアルタイムで把握

IoTセンサーを活用すれば、病院内の設備の稼働状況や故障状況をリアルタイムで把握できます。医療機器や設備の状態を常に監視できるため、突然の問題が発生した際でも迅速に対応できるようになるでしょう。

例えば、MRI装置などの医療機器にIoTセンサーを取り付けておけば、突然の異常が発生した際にアラートが発信されて、技術者が迅速に修理やメンテナンスを行えます。重大な故障につながる前に早期発見できるため、機械寿命の延長につながり、また将来的なコスト削減にもつながります。

また、医療機器の効率的な管理ができるのも大きなメリットです。機器の稼働率を把握できることから、稼働率が低い機器が浮き彫りになり、購入抑制などのコストを削減できます。このようにIoTセンサーを活用することで、医療機器の適切な管理につながります。

IoTカメラを活用した患者の見守り

IoTカメラを導入すれば、ナースステーションなどの離れた場所から患者の見守りができます。巡回時間でなくとも患者の状態を観察できるので、いざというときに迅速な処置・対応が可能です。

また、IoTカメラとナースコールを連動させることも有効です。患者が呼び出しを行った際は、現場に駆けつける前に映像で状況を確認できるため、臨機応変に対応できます。

このようにIoTカメラの設置は、患者の見守りによる安全確保のほか、院内の業務効率の向上に大きく寄与します。

患者の服薬サポート

患者のお薬の飲み忘れは決して少なくありません。特に、認知症の患者や高齢の方は、服薬したかどうかまで失念してしまうリスクがあります。服薬支援に特化したIoT機器を活用すれば、飲むタイミングや量を患者に知らせることができるため、確実な服薬を促せます。

また、患者が実際に薬を摂取したかどうかを確認して、そのデータを医療機関や家族と共有することも可能です。「IoT機器による患者への服薬支援」「医療機関や家族との情報共有」という二重の対策で、徹底した服薬管理が可能となります。

医療機関側にとっては、患者の服薬状況を確認する手間が省けるため、業務の効率化につながるでしょう。

まとめ

IoTの導入は、医療現場の課題解決に大きく貢献しますが、一方でリスクも伴います。そのため、メリットとデメリットをしっかりと比較検討して、自院に合ったIoTシステムを導入しましょう。

オンライン診療の導入を検討している医療機関は、ぜひ「march」をご利用ください。「march」は、診察予約からオンライン診療、決済、処方薬の配送まで、オンライン診療に必要な機能を揃えています。

また、直感的なUIと豊富なカスタマイズオプションにより、それぞれの医療機関のニーズに合わせて対応しています。医療DXのプロによるサポートも充実しているので、導入や運用に多くの時間やコストを費やすことなく、スムーズかつ安定的に利用できます。オンライン診療の導入を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

監修者尾崎 功治

2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。

日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属

リンク:オンライン診療クリニックmarch clinic

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