近年、インターネットの普及や社会情勢を踏まえて、遠隔診療を導入するクリニックが増えています。遠隔診療を導入するにあたり、「オンライン診療」という類似した言葉を見聞きし、違いがわからないという人もいるのではないでしょうか。
本記事では、遠隔診療とオンライン診療の違いを明らかにするとともに、遠隔診療のメリット・デメリットを詳しく解説しています。遠隔診療の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
遠隔診療とオンライン診療の違いとは?
遠隔診療とオンライン診療の大きな違いは、実施する目的にあります。遠隔診療はへき地・離島など通院が難しい地域からでも受診できるようにすることが目的です。一方、オンライン診療は患者の通院時間の削減や医師の働き方改革を進めることを目的としています。
遠隔診療の定義
1997年に厚生労働省が発表した資料によると、遠隔診療とは「情報通信機器を用いた診療」と定義されています。
元々、遠隔診療の主な役割は、へき地や離島に住む患者へ十分な医療サービスを提供することでした。あくまで対面診療の補完として実施されていた取り組みであり、「離島、へき地の場合」と場所も限定されていました。よって、全ての患者が等しく遠隔診療を受けられたわけではありません。
現在は、情報通信機器の普及や法改正による規制緩和、医療のICT化(情報通信技術を活用して業務効率化を図ること)が求められる社会情勢の変化によって、徐々に広まりつつあります。
なお、遠隔診療と似たような言葉として「オンライン診療」がありますが、現在では同じ意味で使われる場合がほとんどです。
オンライン診療の定義
オンライン診療は、2018年に施行された「改正医療法」によって新たに創設された診療形態です。遠隔診療と同様、「情報通信機器を用いた診療」と定義されています。
厚生労働省が2018年に発表した「過疎地域における遠隔医療」の資料でも、今まで「遠隔診療」と定義していたものを、新たに「オンライン診療」と定義する旨が記載されています。
オンライン診療の主な目的は、患者の通院時間の削減や医師の働き方改革を推進することです。遠隔診療と目的が異なることから、遠隔診療の基準やルールについても見直されました。
遠隔診療からオンライン診療へと変わった背景
かつて遠隔診療と呼ばれていた診療形態は、今ではオンライン診療として幅広く認知されています。では、なぜ遠隔診療からオンライン診療へと変わったのか、その背景をひも解いていきましょう。
2015年に遠隔診療の活用方針が発表された
1997年における遠隔診療は、「離島・へき地の患者」「特定の慢性疾患の患者」など非常に限定的な条件の下でしか認められていませんでした。情報通信機器の活用が一般的でなかったこともあり、遠隔診療はそれほど普及していない状況が続いていました。
しかし、2015年8月10日、厚生労働省から各都道府県へ通達された事務連絡によって、遠隔診療に対する解釈が大きく変化します。
事務連絡の内容は、「1997年の遠隔診療について示された条件は、あくまでも例示である」というものです。つまり、医師の判断のもとであれば、例示に該当しない患者に対しても遠隔診療を行ってよいという、事実上の規制緩和となりました。
さらに、2018年に診療報酬改定のタイミングで「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が公表され、遠隔診療は「オンライン診療」へと呼称が変更されました。
2022年にオンライン診療における規制が緩和された
2022年に入り「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の一部が改訂され、オンライン診療の規制がさらに緩和されました。
主な内容としては、2020年4月から特例措置として認められていた、初診からのオンライン診療が恒久化されたことです。つまり、新型コロナウィルス収束後もオンライン診療が継続できることとなりました。
初診は原則として、「かかりつけ医」が行うとされていますが、患者の医学的情報を十分に把握できる場合など一定の要件を満たす場合に限り、かかりつけ医以外の医師でも初診を行えます。
患者の医学的情報を十分に把握できない場合、かかりつけ医以外の医師はオンライン診療を実施する前に「診療前相談」を行わなければなりません。
初診には一定要件が設けられているものの、オンライン診療が恒久化されたことにより、多くの医師や患者が恩恵を受けられると期待されます。
遠隔診療がもたらす3つのメリット
次に遠隔診療がもたらすメリットを解説します。
具体的には下記の3つです。
- 患者と医療機関の負担が軽減される
- 遠方の患者からの受診機会が増える
- 通院・治療の継続率が高まる
1.患者と医療機関の負担が軽減される
遠隔診療を実施することで、患者と医療機関、双方の負担を軽減できるメリットがあります。
患者にとっては、クリニックに出向く必要がなくなり、移動時間や待ち時間のストレスが軽減されます。一方、医療機関は予約・受付・会計までネット上で完結でき、事務担当者の負担を減らすことが可能です。
また、遠隔診療であれば、診療の予約のキャンセルや変更に柔軟に対応できます。例えば、予約がキャンセルされると自動的に予約枠が「空き」の状態になり、クリニック側がスケジュールを調整しなくても、患者が自ら予約することが可能です。
このように遠隔診療を実施することで、「通院時間の削減」「待ち時間の削減」「業務効率化による負担軽減」など、患者と医療機関、双方の負担を軽減できるメリットがあります。
2.遠方の患者からの受診機会が増える
遠隔診療を導入することで、遠方の患者でも気軽に受診できるようになるため、患者獲得の機会を増やせます。
医療法人社団SEC新宿駅前クリニックの調査によると、病院を選ぶ基準として「通いやすさ・アクセス」と挙げた方が4割以上と最多でした。そのため、遠隔診療を導入すれば、患者に「通いやすい」と感じてもらえるため、受診機会の拡大につながるでしょう。
地元での集客に限界を感じている方は、集客目的で遠隔診療を導入するのもおすすめです。
3.通院・治療の継続率が高まる
遠隔診療の導入により、受診までのハードルが下がるため、通院・治療の継続率向上に期待できます。
例えば、慢性疾患を抱える患者は定期的な通院が必要となりますが、遠方からの通院で負担になりすぎると、精神的にも負担となるでしょう。患者のスケジュールの都合によってキャンセルとなるリスクも大きくなります。
遠隔診療を導入すれば、患者が抱える精神的な負担を大きく軽減できます。「通院」を一番のストレスに感じている患者からすると、自宅や職場から直接医師の診察を受けられるのは大きな魅力となるでしょう。
遠隔診療で注意したい3つのデメリット
遠隔診療を導入するデメリットを事前に把握することで、緊急時に適切な対策が打てるでしょう。遠隔診療で注意したいデメリットは、下記の3つです。
- 病気の症状によっては対応できない
- 対面よりも意思疎通が難しい
- 医療者と患者の双方にITリテラシーを求められる
1.病気の症状によっては対応できない
緊急性のある疾患や、精密な診断が難しい疾患などは、遠隔診療ではなく対面診療での対応が必要です。厚生労働省が公表しているFAQでも、「緊急を要する症状である場合、医師の判断で対面診療へ切り替える」とアナウンスされています。
また、レントゲン検査や呼吸器検査など、専用の医療機器を用いる場合も遠隔診療では対応できません。
遠隔診療を導入する際は、事前にどのような症状や疾患に対応可能か検討しておきましょう。対応の可否を事前に検討しておくことで、いざ遠隔診療を導入した際にスムーズに活用できます。
2.対面よりも意思疎通が難しい
遠隔診療は、画面越しでの言葉のやり取りとなるため、対面診療よりも意思疎通が難しいデメリットがあります。画面を通して伝わる情報は限られているため、患者の微妙な表情や仕草、声のトーンまでを把握できないでしょう。
特に、痛みの部位の特定は対面診療よりも困難になると考えられます。対面診療では医師の触診により、痛みの部位を正確に把握できますが、遠隔診療では患者の説明だけが頼りとなるため、痛みの詳細な判断は難しいでしょう。
このように遠隔診療では、患者から得られる情報量に制限があるため、対面診療と補完的に組み合わせて実施することが大切です。
3.医療者と患者の双方にITリテラシーを求められる
遠隔診療では、パソコンやタブレット、スマートフォンなどのデバイスを使用します。よって、医療者と患者の双方にITリテラシーが求められることを考慮しておきましょう。
遠方診療を実施する前に、オンライン対話の際に使用するソフトウェアの使い方についても押さえておかなければなりません。また、インターネットを用いるという特性上、患者の個人情報を守るために万全なセキュリティ体制を整えておくことも重要です。
初めて遠隔診療を利用する患者に負担をかけないよう、クリニックのホームページで遠隔診療の大まかな流れや、診療時に用いるアプリケーション、接続トラブル時の対応などを説明しておきましょう。
まとめ
遠隔診療には、患者と医療機関の負担を軽減できるなどのメリットがある一方で、全ての症状に対応できないなどのデメリットもあります。メリット・デメリットの両方を押さえたうえで、遠隔診療(オンライン診療)を導入しましょう。
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この記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属