オンライン服薬指導は、自宅や職場にいながら指導が受けられることから注目を集めています。しかし、オンラインでの指導には特有の実施要件や流れがあるため、導入前に正しく理解しておくことが重要です。
本記事では、オンライン服薬指導の基本から具体的な手順までわかりやすく解説します。オンライン服薬指導を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
オンライン服薬指導とは
オンライン服薬指導とは、インターネットを介して薬剤師が患者に服薬指導を行うことです。従来の対面指導と異なり、患者は自宅や職場など、どこからでも指導を受けられます。
調剤報酬点数については、令和4年の調剤報酬改定により「服薬管理指導料」が新設され、対面とオンラインの両方で以下の点数が適用されます。
- 原則3月以内に再度処方箋を持参した患者に対して行った場合「45点」
- それ以外の患者に対して行った場合「59点」
オンライン服薬指導を行う際には、患者のプライバシーを保護し、適切な環境で指導が行わなければなりません。
具体的には、薬剤師がいる空間に指導に関係ない人がいないか、患者がいる空間に第三者がいないかを確認する必要があります。ただし、薬剤師と患者が同意している場合は、家族や支援者などの第三者の同席することが可能です。
オンライン服薬指導の実施要件
オンライン服薬指導を実施するためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
- 薬剤師の判断
- 患者に対し明らかにする事項
薬剤師の判断
薬剤師の判断とは、オンライン服薬指導を行う際、患者の状態や薬剤などの情報を十分に理解した上で、適切に指導できるか判断することです。患者の服薬状況の把握は、対面と同様に以下の情報を収集して行います。
- お薬手帳の情報
- 他の薬局からの情報提供
- 処方箋を発行した医師の診療情報
- 患者から聴取した情報(併用薬、副作用歴など)
なお、注射薬や吸入薬など、特別な技術が必要な場合は、医師の指導や患者の理解度を考慮し、オンライン指導が適切かどうかの判断が必要です。困難であると判断した場合は、対面指導への切り替えを推奨します。
患者に対し明らかにする事項
患者に対し明らかにする事項とは、オンライン服薬指導を実施するにあたり、事前に伝えるべき情報に関する事項のことです。薬局開設者は、オンライン服薬指導を行う際、薬剤師に下記の重要事項を明らかにさせた上で、指導を実施する必要があります。
- オンライン服薬指導の実施可否の判断(通信の問題などでオンライン指導が難しい場合、対面指導を促す)
- 情報漏洩リスクの説明(オンライン服薬指導中の情報漏洩リスクとその責任の所在)
- 意思疎通が困難な患者への対応(患者の状態によっては家族などが代わりに指導を受けられる)
- 必要事項の変更時の対応(必要事項に変更が生じた場合、患者に対して再度説明)
オンライン服薬指導を実施する際は、それぞれの事項を伝えるよう、すべての薬剤師が心がける必要があります。
令和4年度調剤報酬改定の要点
令和4年度に調剤報酬が改訂されたことで、いくつかの重要な項目が変更されました。主な変更点は、以下の2つです。
- 服薬指導料の点数が見直された
- 初回からオンライン服薬指導が可能となった
服薬指導料の点数が見直された
調剤報酬の改定に伴い、服薬指導料の点数が見直されました。特に情報通信機器を用いた服薬指導に関しては、「薬剤服用歴管理指導料4」と「在宅患者訪問薬剤管理指導料」の引き上げが大きなポイントです。令和4年4月1日以降の調剤報酬点数は、下記の通りです。
薬剤服用歴管理指導料4 | 原則3月以内に再度処方箋を持参した患者に実施した場合「45点」それ以外の患者に実施した場合「59点」 |
在宅患者訪問薬剤管理指導料 | 在宅療養の患者であり通院が困難な方へオンライン服薬指導を実施した場合「59点」 |
初回からオンライン服薬指導が可能となった
初回からオンライン服薬指導を実施できるようになったことも、重要なポイントです。以前は、対面で服薬指導を行った患者にのみ、オンラインでの指導が許可されていましたが、今回の改定でその制限が撤廃されました。
ただし、全てのケースでオンライン服薬指導が認められているわけではありません。薬剤師が患者の状態を適切に把握し、実施可能であると判断した場合にのみ、初回からオンライン服薬指導を行えます。
オンライン服薬指導の流れ
ここでは、オンライン服薬指導の実際の流れを紹介します。全体像を理解することは、服薬指導をスムーズに行うために重要です。
1.対面またはオンラインで診療
まずは、患者が医療機関で対面またはオンラインでの診療を受けます。診療後、医師は電子処方箋を発行し、患者に渡します。患者は、この電子処方箋をもとに事前に指定した薬局で薬を受け取るか、自宅に郵送してもらい薬を受け取るか、いずれかを選択します。
なお、薬局側は処方箋の原本が届くまでの間、FAXなどによる情報で調剤が可能です。処方箋の内容を確認し、「使用にあたり手技が必要な薬剤がないか」などを事前に確認しておきましょう。
2.オンライン服薬指導の準備
処方箋の内容を確認した後、オンライン服薬指導の準備を進めます。具体的には、患者の服薬歴や健康状態を踏まえた薬の効果・副作用・服用方法などの説明資料を用意します。また、ビデオ通話の環境が整っているか、機器が問題なく動作しているかの確認も重要です。
薬剤師がオンライン指導の実施が難しいと判断した場合は、患者にその理由を丁寧に説明し、対面での服薬指導に切り替えることを提案します。
3.オンライン服薬指導
薬剤師の責任と判断のもと、オンライン服薬指導を実施します。対面と同様に薬の使用方法や注意点・副作用について、ビデオ通話を通じて患者と対話します。
厚生労働省が示す、以下の注意点も押さえておきましょう。
- オンライン服薬指導を実施する場所(薬局)
- オンライン服薬指導を受ける場所(患者)
- 本人確認(薬剤師・患者双方)
- 通信環境(情報セキュリティ・プライバシー・利用端末)
服薬指導が終了したら、薬剤を配送します。配送後は、患者が薬剤を受け取ったかを確認する必要があります。
オンライン服薬指導における薬局の事前準備
オンライン服薬指導を実施するためには、クリニック・病院との連携はもちろん、薬局側での事前準備も必須です。ここでは、必要な事前準備を3つ紹介します。
システムの導入
オンライン服薬指導を実施するにあたり、カメラや通話アプリなどの環境整備が必要です。しかし、必要な機器やソフトウェアを一から揃えるのは、大きな手間と時間がかかります。そこで、オンライン服薬指導の環境を構築するために「オンライン診療システム」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
オンライン診療システム「march」は、初期開発費用が不要で、パソコン一台でオンライン診療の環境を整えられます。診察予約からオンライン診療、薬の配送、さらには配送状況の確認まで一括で管理できるため、スムーズな運用が可能です。
導入や運用に際しては、DXのプロによるサポートが受けられるため、安心して利用できます。無料体験も実施中ですので、ぜひお気軽にお試しください。
薬剤師の知識・技能の習得
システムの導入後は、オンライン服薬指導に必要な知識と技能を習得することが重要です。具体的には、ビデオ通話を利用した指導における機器の使用方法や、回線不良時のトラブルの対応などが挙げられます。
また、患者のプライバシー保護や情報セキュリティに関する知識も不可欠です。さらに、オンライン服薬指導に関する法的要件や、ガイドラインの理解も深める必要があるため、定期的な情報収集や研修を通じて、知識・技術の定着を図りましょう。
業務手順の整備
オンライン服薬指導を円滑に行うには、業務全体の流れを把握し、手順を整備することが重要です。特に、薬の配送や保管に関する手順は厳密に従わなければなりません。
具体的には、配送業者の選定、温度管理が必要な薬剤の取り扱い方法、配送後の確認作業など、一連のプロセスを明確にすることが求められます。また、実際の運用を通して業務手順を適宜見直し、より効率的で安全な服薬指導につなげる工夫も欠かせません。
オンライン服薬指導時の注意点
オンライン服薬指導を実施するには、いくつかの注意点を事前に確認しておくことが重要です。不測の事態に備え、万全の準備を整えましょう。
回線不良に備えておく
オンライン服薬指導では、通信環境が安定していることが前提ですが、予期せぬ回線不良が発生する可能性もあります。そのため、事前に回線トラブルが起きた場合の対応策を準備しておくことが重要です。
たとえば、回線トラブルに強いインターネット環境を構築する、回線トラブルが発生した際の対応を患者へ事前に伝えておくなどの対策があります。
また、定期的なテスト接続を行い、ネット環境の安定性を確認することで、当日のトラブルを最小限に抑えられます。
服薬指導に関する情報を適切に管理する
調剤事故や調剤過誤を防ぐため、患者情報の記録・管理は極めて重要です。
具体的には、使用した薬剤の詳細、指導中に確認した患者の状態、質問や回答の内容を記録し、一元管理する仕組みが必要です。なお、録音・録画して記録を取る方法がありますが、必ず事前に患者の同意を得る必要があるため注意してください。
万全のセキュリティ体制を整える
オンライン服薬指導においては、患者の個人情報や健康情報を取り扱うため、万全のセキュリティ体制を整えることが必須です。
基本的な対策として、定期的なOSのアップデート、通信の暗号化、アクセス権限の設定、セキュリティソフトの導入が挙げられます。また、セキュリティに強いオンライン診療システムを導入することで、リスクを事前に防ぐことも可能です。
また、スタッフへの定期的なセキュリティ教育を実施し、ヒューマンエラーによる情報流出を防止する対策も必要となります。単に知識を伝えるだけでなく、実務に活かせるような演習やシミュレーションを取り入れると効果的です。
まとめ
オンライン服薬指導を実施するにあたり、全体像を把握し、注意点を押さえた上で準備を進めることが大切です。オンライン服薬指導の実施要件と流れを改めて確認したい際には、ぜひ本記事を参考にしてください。
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この記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属