クリニック開業は、医師にとって新たなキャリアのスタートとなります。しかし、クリニック開業にあたっては備品や医療機器など、多くの準備が必要です。そのため、何から始めたら良いのか迷う方も多いのでしょう。
本記事では、クリニック開業時に必要な備品や医療機器について、部屋別・診療科目別に解説します。さらに、クリニック開業の流れや注意点についても解説しているので、スムーズな開業に向けてぜひ参考にしてください。
クリニック開業に必要な備品【部屋別】
クリニックの開業時は、各部屋に備品を用意する必要があります。
受付・待合室 | ・椅子・ソファ(患者用の快適なスペースを確保) ・受付カウンター・パソコン ・案内掲示板や雑誌ラック ・雑誌、絵本、漫画など ・テレビやディスプレイ ・空気清浄機 など |
診察室 | ・診察机 ・医師用椅子 ・患者用椅子 ・体重計 ・血圧計 ・聴診器 ・検査用ライト ・カルテや書類を整理するための棚や引き出し ・パソコンや電子カルテシステム ・消毒液や手袋などの衛生用品 ・プライバシーを守るためのパーテーションやカーテン ・体温計 ・ゴミ箱(感染性廃棄物用と一般用) など |
処置室 | ・処置台 ・医療用キャビネット(薬品や医療器具の収納用) ・包帯、ガーゼ、絆創膏 ・消毒液 ・注射器、針 ・血圧計 ・パルスオキシメーター ・酸素吸入器 ・AED(自動体外式除細動器) ・バイタルサインモニター ・救急カート(緊急処置用) ・輸液ポンプ ・点滴スタンド ・医療廃棄物用のゴミ箱 ・手袋、マスク、ガウンなどの個人防護具(PPE) など |
ここでは、部屋別に必要な備品を詳しく紹介します。
受付・待合室
クリニックの受付・待合室は、患者が最初に触れる場所であり、快適な環境を整えることが大切です。待ち時間を少しでも快適に過ごしてもらうためには、以下のような備品を用意する必要があります。
【受付・待合室で必要な備品】
- 椅子・ソファ(患者用の快適なスペースを確保)
- 受付カウンター・パソコン
- 案内掲示板や雑誌ラック
- 雑誌、絵本、漫画など
- テレビやディスプレイ
- 空気清浄機 など
もし、クリニックの待合室に雑誌や絵本、テレビがないと、患者は手持ち無沙汰になり、退屈に感じてしまいます。また、椅子やソファが足りないと、座れない患者が増えてしまい、疲れたり不快な思いをしたりする可能性が高まります。患者の待ち時間がストレスにならないよう、必要な備品はしっかり準備しましょう。
診察室
診察室では、患者のプライバシーを守り、リラックスできる環境作りが重要です。温かみのある照明や清潔感のあるインテリアを選び、患者が安心して診察を受けられる空間を作りましょう。診察室で必要な備品は、以下のとおりです。
【診察室で必要な備品】
- 診察机
- 医師用椅子
- 患者用椅子
- 体重計
- 血圧計
- 聴診器
- 検査用ライト
- カルテや書類を整理するための棚や引き出し
- パソコンや電子カルテシステム
- 消毒液や手袋などの衛生用品
- プライバシーを守るためのパーテーションやカーテン
- 体温計
- ゴミ箱(感染性廃棄物用と一般用) など
処置室
処置室では、緊急事態に対応できるよう、医療機器や薬品を常に揃えておくことが大切です。また、使いやすく整頓された環境を保つことで、迅速かつ正確な対応が可能になります。処置室で必要な備品は、以下のとおりです。
【処置室で必要な備品】
- 処置台
- 医療用キャビネット(薬品や医療器具の収納用)
- 包帯・ガーゼ・絆創膏
- 消毒液
- 注射器・針
- 血圧計
- パルスオキシメーター
- 酸素吸入器
- AED(自動体外式除細動器)
- バイタルサインモニター
- 救急カート(緊急処置用)
- 輸液ポンプ
- 点滴スタンド
- 医療廃棄物用のゴミ箱
- 手袋、マスク、ガウンなどの個人防護具(PPE) など
クリニック開業に必要な医療機器【診療科目別】
クリニックを開業する際は、診療科目に応じた医療機器の選定が重要です。医療機器の稼働率と採算を考慮し、投資に対して効率的な収益を上げられるようにしましょう。ここでは、診療科目別に必要な医療機器を紹介します。
内科
内科クリニックでは、患者の多様な症状に対応するために、幅広い医療機器が必要になります。内科で必要な医療機器は、以下のとおりです。
【内科で必要な医療機器】
- 一般撮影装置
- 超音波診断装置
- CR/PACS装置
- 内視鏡
- 内視鏡洗浄器
- 心電計
- 電子カルテ など
上記のような医療機器は、初期導入コストが高額になることが多いため、開業時には稼働率と採算を十分に考慮することが重要です。たとえば、地域の患者ニーズや診療内容に基づき、頻繁に利用する機器を優先的に導入することで、無駄のない運営ができます。また、導入後のメンテナンスコストや機器の寿命も含めて、長期的な視点で選定しましょう。
小児科
小児科では、子供の体調を迅速かつ正確に把握するための医療機器が主になります。小児科で必要な医療機器は、以下のとおりです。
【小児科で必要な医療機器】
- 一般撮影装置
- CR/PACS装置
- 血球計数CRP測定装置
- 滅菌器
- 小児用聴診器
- 吸引器
- 吸入器
- 電子カルテ
- 順番待ち予約システム など
子供は長時間待たされることが大きなストレスになるため、「順番待ち予約システム」の導入がおすすめです。順番待ち予約システムを活用すれば、診察の順番が近づいたタイミングで来院するよう通知できるため、子供は長時間待合室で待つ必要がなくなり、保護者の負担も軽減されます。
医療機器の選定に加え、子供たちが快適に過ごせる環境作りも重要です。診察の質を高める機器と、親子の負担を軽減するシステムをあわせて導入することで、より良い医療サービスを提供できます。
皮膚科
皮膚科のクリニックを開業する際は、顕微鏡などの医療機器が重要です。皮膚生検や病理組織検査を行う際に欠かせない機器であり、疾患の診断や治療方針の決定に寄与します。皮膚科で必要な医療機器は、以下のとおりです。
【皮膚科で必要な医療機器】
- 顕微鏡
- CO2レーザー装置
- Qスイッチレーザー装置
- 滅菌器
- 電子カルテ など
クリニックの開業にあたり、必要な機器をしっかりと選定し、効果的な診療を提供できる体制を整えましょう。
眼科
眼科診療では、眼底カメラや視野計など、高精度の医療機器が必要です。これらの医療機器を活用することで、疾患の早期発見や進行状況の把握が可能になります。眼科で必要な医療機器は、以下のとおりです。
【眼科で必要な医療機器】
- 眼底カメラ
- 眼圧計
- 視野計
- 液晶視力表
- 診療デスク/電動椅子
- 検眼鏡
- 視力検査機器
- スリットランプ
- レンズメーター
- 滅菌器
- 電子カルテ
眼科診療において、高精度の医療機器は、患者の目の健康を守るために欠かせないツールです。眼科医療の質の向上に大きく貢献しており、今後もその重要性はますます高まっていくことが予想されます。
脳神経外科
脳神経外科では、MRI装置など高度な医療機器が必要です。これにより、脳の状態を詳細に画像化し、脳の腫瘍・脳血管性疾患・変性疾患・脳奇形など、さまざまな疾患を発見できます。脳神経外科で必要な医療機器は、以下のとおりです。
【脳神経外科で必要な医療機器】
- 一般撮影装置
- MRI装置
- CT装置
- CR/PACS装置
- 超音波画像診断装置
- 電子カルテ
上記の医療機器は、脳神経外科の診療の質を向上させ、患者に適切な治療を提供するために必要不可欠です。開業にあたっては医療機器を適切に選定し、診療体制を整えましょう。
クリニック開業の流れ
クリニック開業の流れは、以下のとおりです。
1.経営方針を決める
2.開業地を決める
3.開業資金の準備を始める
4.医療機器選定
5.開業に必要な届出を行う
6.スタッフを募集する
1.経営方針を決める
クリニックの開業にあたって最初に重要なのは、経営方針を明確にすることです。経営方針は、クリニックの理念や目指す方向性を示すもので、今後の運営に大きな影響を与えます。以下のポイントを考慮し、方針を策定しましょう。
- クリニックの理念・ミッション
- ターゲットとなる患者層
- 提供する医療サービスの種類
- クリニックの運営方針
経営方針を明確にすることで、開業後の運営がスムーズになり、患者からの信頼も得やすくなります。
2.開業地を決める
次に、クリニックの開業地を決めましょう。立地は集客に直結するため、慎重な選定が求められます。
まず、開業を検討している地域の医療ニーズや、同じ地域に存在する他の医療機関の数・提供しているサービスについて調査します。競合が多すぎる場合は、別の地域を検討するか、独自のサービスを提供して差別化を図る必要があるでしょう。
また、交通アクセスも重要な要素です。患者が通いやすい立地であることは、クリニックの集客に大きな影響を与えます。公共交通機関の利用状況や、駐車場の有無、周辺の道路状況など、交通アクセスの良さも考慮して決めましょう。
3.開業資金の準備を始める
クリニックの開業には多額の資金が必要です。まずは、開業にかかる具体的な費用を把握しましょう。開業資金には、物件の費用や内装工事費、医療機器や備品の購入費用、人件費、広告宣伝費、運営資金などが含まれます。これらの費用を細かくリストアップし、予算を立てることが大切です。
次に、資金調達の方法を検討します。自己資金のほか、銀行融資や日本政策金融公庫などの公的金融機関からの借入が一般的です。クリニック開業の際に活用できる補助金や助成金制度は、以下のとおりです。
制度名 | 内容 |
創業補助金 | ・都内で創業を予定している、または創業して5年未満の中小企業者等を対象に、従業員人件費、賃借料、広告費等、創業初期に必要な経費の一部を助成する補助金 |
トライアル雇用助成金 | ・職業経験の不足などから就職が困難な求職者等を、原則3ヶ月試行雇用(トライアル雇用)することで、常用雇用のきっかけを図ることを目的とした助成金 ・トライアル雇用を行う事業主に対して、助成金が支給される |
事業承継・引継ぎ補助金 | ・中小企業・小規模事業者の事業承継やM&A等を支援する補助金 ・支援の対象によって「経営革新事業」「専門家活用事業」「廃業・再チャレンジ事業」という事業に分かれている |
調達先によっては事業計画書の作成が必要になるので、必要書類を準備しておきましょう。
4.医療機器選定
次に、クリニックで使用する医療機器の選定を行います。医療機器の選定では、操作性やアフターフォロー、金額を重視することがポイントです。メーカーの評判や製品のレビューを参考にし、導入する機器が長期的に使用できるかどうかを検討しましょう。また、最新の技術や機能を備えた機器を選ぶことで、診療の精度や効率が向上し、患者の満足度も高まります。
高性能な機器の導入が難しい場合は、一部リースの活用や中古品の購入などで、初期費用を抑えることも検討しましょう。
5.開業に必要な届出を行う
クリニックを開業する際は、法律や規制に基づいてさまざまな届出を行う必要があります。クリニック開業に必要な届出の一覧は、以下のとおりです。
提出する機関 | 提出書類名 |
保健所 | ・開設者の医師、歯科医師免許証の写しとその原本 ・開設者の医師、歯科医師臨床研修等修了登録証の写しとその原本 ・開設者の職歴書 ・土地の登記事項証明書 ・建物の登記事項証明書 ・賃貸の場合は、賃貸借契約の写しとその原本 ・敷地の平面図 ・建物の平面図 ・ビルの一部を使用する場合は、フロア図 ・敷地周囲の見取図、案内図 ・その他(X線診療室放射線防護図など) |
開業地を管轄する厚生局 | ・保険医療機関・保険薬局指定申請書 |
※東京都多摩府中保健所、関東信越厚生局のHPを参考
6.スタッフを募集する
医療サービスの質は、スタッフの専門性や対応力に大きく依存します。適切な人材を確保するため、まずは必要な人員を明確にし、役割に応じたスキルや資格を整理しましょう。
一般的には、医師、看護師、事務スタッフなどの職種が考えられますが、クリニックの専門性や提供するサービスに応じて、必要な職種は異なります。
求人広告を掲載する場合は、医療専門の求人サイトや地域の求人情報誌を活用することが効果的です。また、SNSやクリニックの公式Webサイトを利用して、直接応募を促すこともひとつの手段になります。求人情報には、クリニックの理念や働く環境、給与体系、福利厚生などの詳細をしっかりと記載し、応募者に魅力を伝えましょう。
クリニック開業における注意点
クリニック開業における注意点は以下の3つです。
- 電気工事が必要か確認する
- 内装工事では法律を遵守する
- 医療機器導入は人件費も含めて計算する
それぞれの注意点を押さえた上で、クリニックの開業を進めましょう。
電気工事が必要か確認する
クリニックを開業する際に、電気工事が必要かどうかを確認しましょう。特にMRIやCTなどの大型医療機器は、高い電力供給が必要です。
電気容量が少ない物件の場合、必要な医療機器を導入できず、診療業務に支障をきたす可能性があります。開業前にどのような医療機器を導入するかを決め、電気容量を確認した上で、必要な電気工事を行うことが大切です。
内装工事では法律を遵守する
クリニックの内装工事を行う際は、建築基準法・消防法・医療法・バリアフリー法などの法規制を遵守しなければなりません。
建築基準法 | 国民の生命や健康、財産を守るために、建築物の敷地、構造、設備、用途に関する最低基準を定めた法律 |
消防法 | 火災の予防や鎮圧、災害による傷病者の搬送など、火災や災害から国民の生命や財産を守ることを目的とする法律 |
医療法 | 医療提供施設の開設や管理、整備などに関する事項を定めた法律 |
バリアフリー法 | 高齢者や障害者などの移動や施設の利用を円滑にすることを目的とした法律 |
上記以外に、都市計画法や地方公共団体が定めた条例を守る必要があります。内装工事を行う際は、専門の業者と協力し、法律を遵守した上で進めましょう。
医療機器導入は人件費も含めて計算する
医療機器を導入する際は、人件費も考慮することが大切です。高額な医療機器を導入する場合、初期費用だけでなく運用コストや人件費を見積もる必要があります。
たとえば、MRIやCTなどの高度な医療機器を扱うには、専門的な知識や技術が必要です。そのため、高度な機器を扱える技術者や看護師の雇用が必要となるでしょう。
このように、医療機器導入を計画する際は、初期費用だけでなく、人件費を含めて総合的に考えることが重要です。
オンライン診療を導入するなら「march」がおすすめ
クリニック開業にあたり、オンライン診療の導入を検討している方には「march」がおすすめです。
marchは、医療機関の視点から開発されたシステムです。予約管理から決済、処方薬配送まで、クリニック運営のあらゆる業務をサポートしており、事務作業を大幅に削減し、ペーパーレス化を実現します。スタッフの負担を軽減し、より多くの時間を患者とのコミュニケーションに充てることができるでしょう。
オンライン診療導入時にmarchを選ぶことで、患者にとっても便利な環境を整えられます。ぜひフリートライアルで、 marchの使いやすさや魅力を体感してみてください。
まとめ
クリニックを開業する際は、各部屋に必要な備品を整える必要があります。受付・待合室には椅子やテレビ、診察室にはプライバシー保護と清潔感を保ちながら、診察に必要な医療機器を揃えましょう。処置室には、緊急対応に備えて、医療機器や薬品を常に揃えておくことが大切です。医療機器を導入する際は、診療科目に応じて必要な医療機器を適切に選定する必要があります。
クリニック開業を成功させるためには、綿密な計画と準備が不可欠です。ぜひ本記事で紹介したクリニック開業の流れや注意点を参考にし、スムーズに診療体制を整えてください。
お役立ち資料ダウンロード
- オンライン診療の流れ
- サービスの体系
- サービスの機能紹介
- LINEを活用した売上拡大と業務改善
- オンライン診療の需要について
- 導入方法
この記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属