オンライン診療の普及が進む中、導入コストの負担は多くの医療機関にとって大きな課題となっています。そこで活用したいのが、オンライン診療に関する補助金制度です。
本記事では、オンライン診療の導入を検討している医療機関向けに、補助金の概要や申請手順、注意点をわかりやすく解説します。補助金制度を活用することで、医療機器や情報通信機器などの初期費用を抑え、スムーズにオンライン診療を開始できるでしょう。
オンライン診療の補助金とは
オンライン診療の補助金制度とは、オンライン診療に必要な機器やシステムを導入する際に、国や地方自治体が費用の一部を補助する制度のことです。
目的は、オンライン診療の普及を促進し、地域間の医療格差の解消することにあります。国が指針を提示し、各都道府県や市町村がその指針に基づいて制度を運営しています。
補助金制度を活用することは、導入コストがネックとなる医療機関にとって、経済的負担を軽減できる有効な手段です。
地方自治体ごとに実施している
オンライン診療の補助金制度は、地方自治体によって実施状況が異なります。国が指針を示す一方、具体的な実施や内容については各自治体に委ねられているため、医療機関が所在する自治体で補助金制度が行われているかどうかを確認する必要があります。
以下は、オンライン診療の補助金制度を実施している一例です。
※過去に実施していた自治体も含む
補助金制度の申請を希望する場合、まずは医療機関が所在する地域の自治体に問い合わせましょう。すでに申請受付が終了している場合でも、次回の募集について情報を得られることがあります。
対象となる経費が定められている
オンライン診療の補助金は、すべての経費が対象となるわけではありません。たとえば、東京都では以下のように対象経費が定められています。
対象となる経費
- パソコン
- タブレット
- カメラ
- マイク
- ヘッドセット
- ルーター
対象外の経費
- リース料
- 保守費用
- 通信費
- スマートフォン
- その他経常的な経費
上記は東京都の例であり、他の自治体でも対象経費が異なる場合があります。そのため、申請の際には必ず対象経費を事前に確認し、申請書類の準備を進めることが重要です。
オンライン診療の補助金はいくら支給される?
オンライン診療の補助金額は、地域や制度によって異なります。通常、補助金には上限額や補助率が設定されており、購入した対象経費に応じて支給されます。
たとえば、東京都のオンライン診療に関する補助金制度では、以下のように基準額・補助率が設定されています。
- 基準額…40万円
- 補助率…1/2
支給される補助金は、基準額と実際の支出を比較し、価格が少ない方の金額に補助率を乗じた金額です。
たとえば、対象経費で30万円を支出した場合、1/2をかけた15万円が補助金として支給されます。一方、対象経費が基準額の40万円を超えた場合、補助金として支給されるのは上限の20万円です。
オンライン診療の導入で利用できる補助金・助成金
オンライン診療の導入にあたり、補助金だけでなく助成金を利用できる場合もあります。ここでは、オンライン診療導入時に利用可能な補助金・助成金制度を紹介します。
オンライン診療の環境整備に係る補助金
オンライン診療の環境整備に係る補助金とは、オンライン診療の設備やシステム導入にかかる費用を補助する制度です。実施の有無や条件は自治体ごとに異なるため、医療機関が所在する地域の自治体に問い合わせる必要があります。
たとえば、東京都では「オンライン診療の環境整備に係る補助金制度」が実施されており、下記のように対象経費と補助率が定められています。
内容 | 詳細 |
対象経費 | 専用の情報通信機器(パソコン、カメラ、マイク等) |
補助率 | 1/2 |
提出方法 | デジタル庁が提供する電子申請システム「jグランツ」を通じて申し込む。 |
補助金制度を活用することで、医療機関は初期投資を抑え、スムーズにオンライン診療を導入できます。特に新型コロナウイルス感染症の影響により、非対面での医療サービスへのニーズが高まっている現状において、補助金制度は医療機関にとって大きな支援となるでしょう。
オンライン資格確認の導入に係る助成金
オンライン資格確認システムとは、患者が医療機関を受診する際にマイナンバーカードを使って健康保険の資格を確認するシステムです。患者の保険証情報をリアルタイムで確認できるほか、医療提供の効率化が期待できます。
「オンライン資格確認の導入に係る助成金」は、システムの導入に必要な経費を支援する制度です。対象となる経費には、「レセプトコンピューターの改修費用」や「モバイル端末や汎用カードリーダーの購入費用」などが含まれています。
補助率や助成金の額は下記の通り、対象となる医療機関によって異なります。
医療機関 | 補助率 | 補助限度額 |
病院 | 1/2 | 39万円 |
大型チェーンの薬局 | 6.5万円 | |
診療所(クリニック)・薬局 | 3/4 | 9.7万円 |
なお、助成金の申請期間は「令和7年1月15日まで」となっているため、早めの申請が推奨されています。
オンライン診療の補助金を申請する手順
オンライン診療の補助金をスムーズに申請するためには、あらかじめ手順を把握しておくことが重要です。ここでは、東京都の例をもとに、申請から補助金の振り込みまでの流れを紹介します。
申請の準備
まず、必要な書類を揃えた上で、電子申請システムを使って手続きを行います。申請に必要な書類は以下の通りです。
- 交付申請書
- 事業計画書
- 経費所要額調書
- 所要額の根拠が確認できる書類(見積書・カタログなど)
- 歳入歳出予算書(見込書)抄本
- 3か年分の決算資料
これらの必要書類には提出期限があるため、早めに準備しましょう。
書類の提出・審査
書類を準備した後は、デジタル庁の電子申請システム「jGrants(ジェイグランツ)」を通じて申請を行います。
jGrants デジタル庁 東京都オンライン医療相談・診療等環境整備補助事業
書類が受理されたら、東京都が内容を審査します。審査の過程で追加書類の提出や問い合わせが発生する場合もあるため、迅速に対応しましょう。
交付の決定・振り込み
審査に通過すると、補助金の交付決定通知が届きます。補助事業が完了した後は、実績報告書や領収書、購入した機器の写真の提出が必要です。
さらに、都の職員による現地調査が実施されることがあり、これを経て補助金の最終額が確定します。補助金は確定後、指定の口座に振り込まれます。
補助金を申請する前に押さえたい注意点
補助金の申請を進める、必ず確認すべき注意点があります。ここでは、申請前に知っておきたい3つのポイントを解説します。
補助金の対象者を確認する
補助金制度には、対象となる医療機関や事業者があらかじめ定められているため、すべての医療機関が対象になるわけではありません。たとえば、病院や診療所に限定される場合や、自由診療のみを行う機関が対象外となる場合があります。
また、すでにオンライン診療を導入している場合や、過去に同じ補助金を受けたことがある医療機関も対象外となります。そのため、補助金の対象者に該当するかどうか、募集要項を必ず確認しましょう。
自治体によって支給額が異なる
補助金の支給額は、自治体ごとに異なることが多いため事前に確認が必要です。たとえば、同じオンライン診療導入の補助金であっても、東京都では上限20万円、千葉県では上限30万円など、支給額や補助率が異なる場合があります。
また、対象となる経費や上限額に独自の条件が付加される場合もあるため、詳細を確認してから申請手続きを進めましょう。
補助金は原則後払いである
補助金は、必要な手続きが完了した後に支給される「後払い」方式が基本です。そのため、まずは自費で機器を購入し、その後補助金が振り込まれるまで待つ必要があります。
申請から補助金の交付までには時間がかかるため、申請期間中の運転資金を確保しておくことが重要です。また、補助金が予定通りに交付されない可能性も考慮し、余裕を持った資金計画を立てましょう。
まとめ
オンライン診療導入時の初期費用を軽減するために、補助金制度を積極的に活用しましょう。また、時間や労力を削減するために、システムの導入も検討することをおすすめします。
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この記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属