オンライン診療は近年急速に普及し、今後もその需要の拡大が期待されています。しかし、現状ではさまざまな課題も残されており、今後の発展に影響を与える可能性があります。
本記事では、オンライン診療の動向や今後の課題、将来性について詳しく解説します。この記事を読むことで、オンライン診療の今後の可能性について理解を深めることができ、適切なタイミングで導入を検討できるようになるでしょう。
オンライン診療の動向
まず、オンライン診療の歴史を振り返りながら、過去から現在までの流れを確認していきましょう。歴史を知ることで、今後の展望を予測しやすくなります。
ここでは、オンライン診療の始まりから現在までの主要な出来事を解説します。
1997年|現代のオンライン診療の始まり
1997年に、遠隔診療が日本で正式に認可され、現代のオンライン診療の始まりとなりました。遠隔診療とは、当時は離島やへき地など、医療機関へのアクセスが難しい地域に住む人々に対して、対面診療の補助として行われる医療サービスのことです。
遠隔地に住む人々が医療機関に相談したい場合、当時は電話やファックスを使った情報のやり取りが中心でした。しかし、技術の進歩とともにインターネットが活用されるようになり、現在では遠隔地にいる医師と患者がリアルタイムで、まるで対面しているかのような質の高いコミュニケーションを取れるようになっています。
このように、遠隔診断といった高度な医療サービスが実現可能となり、質の高い医療を身近に受けることができるようになりました。
遠隔診療とオンライン診療についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
遠隔診療とオンライン診療の違いとは?メリット・デメリットを解説
2020年|コロナ禍による規制緩和が普及を後押しする
2020年、新型コロナウイルス感染症の拡大により、オンライン診療の需要が急速に高まりました。こうした状況を受けて、厚生労働省は「時限的・特例的措置」としてオンライン診療に関する規制緩和を発表。規制緩和により、従来は対面診療が原則とされていた初診でもオンライン診療が可能となり、多くの医療機関がオンライン診療の導入を進めました。
また、診療報酬の見直しにより、オンライン診療の報酬点数が引き上げられたほか、一時的にオンライン診療の研修を受けていない医師でも診療が許可されるなど、柔軟な対応が行われました。
このように、2020年の新型コロナウイルスによる混乱の最中、政府が主導となってオンライン診療の普及を後押しした背景があります。
2024年|医療DXの実現に向けて議論が進められている
2024年に向けて、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が加速しており、その一環としてオンライン診療はますます注目されています。具体的には、データの一元化、AIによる診療支援、遠隔診療の普及などが挙げられます。
こうした政府主導の取り組みにより、医療のデジタル化が進み、診療の効率化や患者の利便性向上が期待されています。
なお、厚生労働省の調査によると、令和5年3月時点で18,121の医療機関が「電話や情報通信機器を用いた診療を実施できる」と回答しています。令和3年4月末時点では、オンライン診療を実施している医療機関は16,843機関に達し、年々増加傾向にあります。この数字は、オンライン診療が医療現場に根付きつつあることを示す一つの指標と言えるでしょう。
オンライン診療の今後の課題
オンライン診療は、感染リスクを抑えつつ利便性が高いという点で一定の需要がありますが、同時に解決すべき課題も少なくありません。
ここでは、オンライン診療が抱えている現状・今後の課題を紹介します。
診療報酬の水準を見直す
オンライン診療の普及に向けて、診療報酬の見直しが重要な課題となっています。現状、対面診療とオンライン診療の初診における報酬点数に差があり、このことがオンライン診療の導入に消極的な要因の一つとなっています。
※2024年10月現在
初診料 | 再診料 | |
対面診療 | 291点 | 75点 |
オンライン診療 | 253点 | 75点 |
この報酬制度を考慮すると、初診は対面診療、再診はオンライン診療という流れが適切とされる場合が多いです。しかし、今後診療報酬が見直されれば、初診からオンライン診療を利用する機会が増え、患者の利便性も向上すると考えられます。医療機関にとっては、収益性が改善し、導入へのハードルが下がることが期待されます。
導入コストを軽減させる
オンライン診療を導入には、PCやカメラ、通信環境などの設備投資が必要です。小規模なクリニックにとっては、これらの初期費用が大きな負担となり、普及の妨げとなっています。
現状では、既存機器の有効活用や、一括管理型のオンライン診療システムの導入によってコスト削減が図られていますが、それだけでは十分ではありません。今後は、補助金制度の充実や医療機器のリース、クラウドサービスの利用促進を通じて、導入コストを軽減する対策が求められるでしょう。
法整備や規制緩和を図る
オンライン診療の安全性と信頼性を確保するためには、適切な法整備と規制の明確化が不可欠です。特に、診療の質を維持しながら、患者情報を保護するための法的枠組みが求められています。
また、診療報酬の格差や、対面診療を優先する現行の規制(初診は原則として対面診療を行う規制)がオンライン診療の普及を妨げているため、今後はこれらの規制を見直し、時代のニーズに合った規制緩和が求められるでしょう。
オンライン診療の歴史を振り返ると、施設基準の見直しや診療報酬の改定が繰り返し行われてきたため、今後も法整備の動向に注目する必要があります。
ITリテラシー向上を図る
オンライン診療を円滑に運用するためには、医療従事者が一定のITリテラシーを持つことが必要です。現状では、簡単に使用できるオンライン診療ツールの導入や、操作マニュアルの整備、サポート体制の強化が行われていますが、医療現場の多忙さから、十分なIT教育を行う時間が確保できないという問題があります。
今後は、オンライン研修やリモート学習を院内で手軽に受講できる環境が、普及を後押しする鍵となるでしょう。また、実際の運用を想定したトレーニングなど、スムーズに技術習得できる環境が求められることから、医療機関のさらなる負担軽減が課題となります。
オンライン診療の今後と将来性
オンライン診療には解決すべき課題が残されていますが、同時に普及を後押しする取り組みも進んでいます。
ここでは、今後のオンライン診療の展望と将来性について解説します。
医療DXの推進が重要政策となっている
厚生労働省は、医療DXの推進に力を入れており、オンライン診療の普及がその一環として進められています。たとえば、「オンライン資格確認の導入」や「電子カルテ情報共有サービス」などの導入が進み、診療の効率化や患者情報の一元管理が実現されています。
さらに、AI診断支援やビッグデータを活用した病気の早期発見、ロボットによる遠隔手術
なども進行中で、今後は医療現場のデジタル化が加速する見込みです。
このように医療DXが進むことで、患者の利便性向上や医師の負担軽減が実現し、世論も医療DXの加速に前向きな姿勢を示していくことでしょう。
規制や法制度が変化している
新型コロナウイルスのパンデミックにより、オンライン診療に関する法制度が大きく見直され、急速に整備が進められた歴史的な背景があります。たとえば、対面診療が基本とされていた初診については、コロナ時の特例措置としてオンラインでの対応が認められるようになりました。
また、診療報酬制度の改定などにより、対面診療とオンライン診療の公平な評価が求められるようになり、その差は徐々に縮小していくと考えられます。令和4年の診療報酬改定では「オンライン診療の再診料」が新設され、最初は73点でしたが、令和6年の改定で、対面診療・オンライン診療ともに75点に統一されました。
こうした法制度の見直しが、オンライン診療の普及を後押ししています。
オンライン診療は一定の需要がある
高齢者を含め、多くの人々にオンライン診療への需要があります。株式会社MICINの調査では、オンライン診療未経験の高齢者の47%が「医師から勧められたら利用したい」と答えています。
また、現状の高齢者のオンライン診療利用率は1.8%と決して高くないものの、利用していない人の47%は、一定の条件のもとで「利用したい」と回答していることから、オンライン診療の需要は今後も増加する可能性があります。利便性が広く認知されれば、さらなる普及が期待できるでしょう。
世界のオンライン診療市場は拡大している
世界的にもオンライン診療市場は急速に拡大しています。モルドールインテリジェンスの調査によると、世界の遠隔診療市場は2024年には1,724億4,000万米ドルに達し、2029年までに3,302億6,000万米ドルにまで成長する見込みです。
新型コロナウイルスの影響でオンライン診療の規制が緩和されたのは、世界共通の現象です。今後も世界的な市場拡大に追随する形で、日本のオンライン診療市場も成長していく可能性があります。
オンライン診療の今後・将来性については、以下の記事でも詳しく解説しています。
まとめ
オンライン診療を導入する際は、課題を解決しながら準備を進めることが重要です。
たとえば、患者のプライバシー保護のため、高度なセキュリティシステムを導入したり、高齢者の方でも安心してオンライン診療を利用できるよう、スタッフがITリテラシーを高めたりすることが考えられます。
オンライン診療の導入は、医療機関の競争力を強化し、地域の医療に貢献する、未来への投資でもあります。未来を見据えた投資として、ぜひオンライン診療の導入をご検討ください。
「march」は、診察予約・事前問診・オンライン診療・決済・処方薬の配送まで一括で行えるオンライン診療システムです。 marchを導入することで、オンライン診療に必要な環境を整えられるため、電子カルテシステム、決済システムなどを個別に導入する必要がなく、結果的にコスト削減に寄与します。
加えてシンプルなUIで、ITに不慣れな医療従事者でも簡単に利用できるので、ITリテラシー向上のための教育負担の軽減にもつながります。オンライン診療の導入を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属