医療機関にとって、「待ち時間が長い」という患者の不満は避けて通れない課題です。待ち時間が長いと満足度が低下し、病院・クリニックの評判にも影響を及ぼす可能性が高まります。
本記事では、なぜ皮膚科の待ち時間が長くなりやすいのか、その根本原因を解説し、具体的な対策法を紹介します。本記事を読めば、待ち時間改善に向けた効果的な対策法がわかり、満足度を高めるためのヒントが得られます。
皮膚科の待ち時間が長いと感じるのはなぜ?
皮膚科での待ち時間が長いと感じるのは、単に時間経過の問題だけではありません。さまざまな要因が不満につながっていると考えられます。
たとえば、何もすることがない状態が続くと、実際の時間以上に長く待たされていると感じられることがあります。また、予約したにも関わらず長時間待たされると、多くの人が不満を感じるのは自然な反応でしょう。
ほかにも、混雑時に座るスペースがなくなり立って待たざるを得ない状況は、患者のストレスを増大させる要因となります。
このように「待ち時間が長い」と感じる要因は、単に時間そのものだけでなく、待つ環境にも影響を受けています。待ち時間を短くすることも対策のひとつですが、「待ち時間のストレスを軽減させる」という方法にも目を向けることが重要です。
患者の一番の不満は「待ち時間」
厚生労働省の調査によると、患者が最も不満を感じている要因として挙げているのが「診察までの待ち時間」です。外来患者の24.1%が「不満である」と回答しており、この割合は他の項目と比較して際立って高いことがわかります。
待ち時間の問題は、単なる時間的な不便さにとどまらず、患者とのコミュニケーション不足や業務効率とも関連している場合があります。たとえば、「10分待ち」と案内されたにも関わらず、実際には15分や20分待たされるといった状況では、患者の不満は大きくなるでしょう。
このような不満が積み重なると、患者が別の医療機関を利用することを検討するリスクが高まります。そのため、待ち時間の短縮に向けた具体的な対策が急務です。
皮膚科の待ち時間が長くなる根本原因
では、なぜ皮膚科の待ち時間は長くなりがちなのでしょうか。ここでは、待ち時間が長くなる具体的な要因として3つ解説します。
季節性疾患による患者の増加
皮膚科の待ち時間が長くなる原因のひとつとして、季節性疾患による患者の一時的な増加が挙げられます。特に花粉の飛散時期は、花粉皮膚炎などの症状で外来患者が急増し、診察を希望する方が多くなり、必然的に待ち時間が長くなりがちです。
季節性の患者増加は一時的なものですが、初めて来院した患者には「待ち時間が長い病院」という印象を与えてしまいかねません。よって、事前に「この時期は待ち時間が長くなる可能性がある」ことをホームページや受付時に伝え、了承を得るなどの対策が必要です。
受付・会計に時間がかかっている
皮膚科で待ち時間が長くなる要因として、受付や会計業務に時間がかかることが挙げられます。特に、診察が立て込んでいる時期には、会計処理が後回しになってしまい、診察が終わった患者が会計待ちで滞留することも珍しくありません。
会計待ちの患者が増えると受付業務が滞り、結果として新規の受付も遅れます。さらには診察室で待機している患者の呼び込みも遅くなり、院内全体の待ち時間が連鎖的に長引くリスクがあります。受付・会計業務をスムーズに済ませるためには、自動精算機の導入や、一時的なスタッフの増員などの対策が必要です。
外科的処置が必要なケースがある
比較的症状が軽い患者は短時間で診察が終わる一方、重症の患者や外科的処置が必要とされる場合、問診から処置まで時間がかかります。外科的処置が発生し、その対応に時間がかかれば、他の患者の診察にも遅れが生じてしまうでしょう。
特に、処置が複雑なケースや緊急性が高いケースは、診療スケジュールの大幅な変更を余儀なくされることがあります。こうした突発的な処置は避けられないため、早い段階で院内の患者に「診察が遅れる可能性がある」旨を説明し、理解を得ることが重要です。
待ち時間の負担を軽減する対策法
先述のように、病院やクリニックの「待ち時間」は患者にとって一番の不満要因です。しかし、工夫次第で待ち時間の負担を軽減できます。ここでは、待ち時間を短縮するための具体的な対策を紹介します。
オンライン診療を導入する
オンライン診療を導入すれば、来院が必要な患者数を減らし、待合室の混雑を避けられます。特に、再診の患者で定期投薬による経過観察が可能な方や、検査などが不要な方は、必ずしも来院を必要としません。
オンライン診療導入時にハードルを感じる場合もあるかもしれませんが、自宅にいながら医師に相談できる、待ち時間がなくスムーズに診察を受けられるなど、多くのメリットがあります。
オンライン診療システム「march」は、パソコン一台で予約受付からオンライン診療、決済、処方箋の配送までを一括で行える便利なツールです。また、医療DXのプロがサポートしているため、IT機器に不慣れな方でも、スムーズに環境を整えられます。混雑解消策として、ぜひご検討ください。
ソファの配置変更・増設する
必要に応じてソファの増設を行えば、待合室の快適性が向上し、患者のストレス軽減につながるでしょう。病院が混雑すると、待合室で座る場所が不足し、立って待つ患者が増加してしまいます。
特に、感染症対策としてソファ間に一定のスペースを設けている場合、通常よりも立って待つ患者が多くなります。立って待たなければならない状況は、軽症の患者だけでなく体調が優れない患者にとっても大きな負担となります。
立って待つ患者が多い場合は、ソファの増設や配置変更を検討しましょう。配置変更や増設が難しい場合は、混雑時に備えてパイプ椅子を常備しておくことも有効です。
手持ち無沙汰の解消を図る
何もすることがない状況では、待ち時間が実際よりも長く感じられ、患者のストレスが増してしまいます。そのため、待合室にテレビや漫画などを設置し、手持ち無沙汰を解消する工夫が重要です。
また、院内に病院の取り組みや健康に関する情報を掲示することで、待ち時間を有意義に過ごしてもらえるようになります。幼児の患者が多いクリニックでは、キッズスペースや子ども向けの絵本・おもちゃなどを用意することで、お子様連れの方にも配慮した環境を提供できます。
順番待ちシステムの導入する
順番待ちシステムを導入し、待ち状況を整理すれば、長時間待つ負担を軽減できます。順番待ちシステムは、予約の時間や呼び出し時間が近くなった際、患者へメール・プッシュ通知などでお知らせする仕組みです。
患者は「いつ呼び出されるか」を予測できるため、時間まで院内の売店やトイレなどに気軽に立ち寄れます。また、機機械が順番を管理するため、スタッフによる順番整理が不要なほか、不公平感が生まれにくいメリットもあります。
さらに、待合室の混雑を緩和できれば、密集を避ける感染対策にもなります。患者同士の接触機会を減らすことで、感染症のリスクを低減し、安心して医療機関を受診できる環境となるでしょう。
待ち時間を表示させる
デジタルサイネージを利用して、待ち時間を明確に表示することで、患者の「いつまで待てばいいのか」という不安を軽減できます。工夫次第では、患者の不満をさらに軽減することが可能です。
たとえば、テレビ横など目につきやすい場所にモニターを設置すれば、視線の移動が少なく確認も容易となるため、よりストレスの緩和につながるでしょう。文字を適切な大きさにする、シンプルなフォントや明るい色を使用するなどして、高齢者や視力の弱い患者にも配慮した表示も重要です。
時間が多少前後することもあるため、「実際の時間よりも前後する可能性があります」といった注釈を付け加えると、待ち時間に関するクレームを避けられるでしょう。
待ち時間対策を実施する際の注意点
待ち時間対策を実施する際には、いくつかの注意点があります。効果的な対策を講じるだけでなく、無理のない範囲で取り組むことも大切です。ここでは、2つの注意点を解説します。
コストをかけすぎない
待ち時間対策を進める際は、予算の範囲内で実施することが不可欠です。たとえば、デジタルサイネージや予約管理システムの導入は有効ですが、必ずしも高額な設備投資が最善とは限りません。オプションを増やしすぎると予算オーバーとなり、当初の計画から逸脱する恐れがあります。
待ち時間対策の目的は、患者の負担を軽減することです。無理にコストをかけすぎないよう、計画的に進めましょう。
スタッフの負担も考慮する
待ち時間対策を実施するには、スタッフの業務負担にも配慮が必要です。予約システムや順番待ちシステムの導入は便利ですが、使い方に慣れていないと逆に負担となってしまうでしょう。
業務効率化を目的にシステムを導入する際は、スタッフへの教育やサポートが重要です。また、業務の分担や人員配置の見直しなど、負担が偏らない工夫も行う必要があります。
スタッフがシステムにスムーズに移行できるよう、不安や疑問を事前に解消することを優先しましょう。システムに対する理解を深めることで、スタッフはシステムを積極的に活用し、業務効率化に貢献します。結果として、患者への対応が迅速かつ正確になり、待ち時間の短縮や、より丁寧な説明が可能になるでしょう。
まとめ
患者の満足度を高めるためには、待ち時間を短くするだけでなく、患者が感じる負担を減らすことも重要です。たとえば、オンライン診療を導入すれば、受付での手続きや、他の患者との接触を減らせるので、院内での待ち時間が大幅に短縮されます。事前に問診票を入力したり、必要な情報を共有したりすることで、診察時間をさらに短縮できるでしょう。
ITツールの導入によって待ち時間が短縮すれば、患者の満足度向上につながります。再診率の向上や口コミによる新規患者の増加にもつながり、結果としてクリニックの収益向上に貢献します。また、スタッフの業務効率化にもつながり、働きやすい職場環境づくりも期待できるでしょう。
本記事で紹介したコスト管理やスタッフの負担などに留意しながら、無理のない範囲で実践してみてください。
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この記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属