歯科業界においても、オンライン診療が注目を集めています。しかし、具体的な進め方についてイメージしにくいこともあるでしょう。
本記事では、歯科医向けにオンライン診療の基本的なやり方と注意点を解説します。歯科でオンライン診療の実施を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
オンライン診療を実施するには「届出」が必須
歯科医院でオンライン診療を実施するためには、以下の2点の書類を記入し、医療機関が所在する都道府県を管轄する「地方厚生(支)局」へ届け出なければなりません。
これらの書類は、自院がオンライン診療の施設基準を満たしていることを証明するものです。施設基準には、以下の2つの条件があり、両方を満たす必要があります。
- 情報通信機器を用いた診療を行うにつき十分な体制が整備されていること
- 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療を行う体制を有する保険医療機関であること
厚生労働省が発行する「オンライン診療の適切な実施に関する指針」には、オンライン診療を安全かつ効果的に実施するための基本的なルールや注意点が記載されています。必要書類の準備と併せて、一度目を通しておきましょう。
歯科医院のオンライン診療のやり方
オンライン診療を導入する前に、実際にどのような流れで行うのか把握しておきましょう。事前に流れを把握しておくことで、準備がスムーズに進み、当日のトラブルを未然に防げます。
1.診療前相談
かかりつけ医ではない医師が初診からオンライン診療を実施する場合、まずは「診療前相談」を行う必要があります。診療前相談とは、オンライン診療を実施する前に、患者の口腔の状態や症状について事前に確認することです。
診療前相談では、診断や処方などの診療行為は含まれず、患者から得られた情報をもとに、オンライン診療が適切かどうかを判断します。オンライン診療が適切であり、かつ医師と患者の双方が合意した場合にのみ実施できます。
2.事前予約
診療前相談で患者の合意が得られたら、希望する日時に事前予約をしてもらいます。予約方法には「電話受付」と「アプリ受付」の2種類がありますが、アプリ受付がおすすめです。
アプリを使用することで、医療機関側の予約対応の手間が省け、患者は都合のよい時間に簡単に予約できます。また、予約の変更やキャンセルもアプリ上で簡単に行えるため、急な予定変更にも柔軟に対応できます。
そのほか、過去の診療履歴を確認したり、予約リマインダーを活用したりと、豊富に機能を備えている点もアプリ受付のメリットといえます。
3.問診票への記入
予約受付のタイミングで、問診票の記入を依頼しておくと、当日の診療がよりスムーズに進みます。問診票は、診療当日までにオンラインで記入・送信してもらうことが一般的です。
Web問診サービスを利用すれば、患者は自宅から簡単に記入でき、医療機関側も問診内容に応じた準備ができます。ただし、重要な項目の未記入や誤記入が発生する恐れがあるため、システムで必須項目を設定したり、記入内容を確認できる機能を設けたりするなどして、対策が必要です。
4.オンライン診療
診療当日、患者は予約時間に指定されたアプリを通じてシステムにアクセスし、オンライン診療を受けます。医療機関側は、事前問診の内容をもとに、患者の状況を確認しながら診療を進めます。
オンライン診療は対面診療とは異なり、映像と音声を通じて患者の口腔状態や症状を確認するため、照明やカメラの位置について患者に協力を依頼することが重要です。
また、診療中に通信が不安定になったり、映像や音声の質が低下したりすることがあるので、診療前に接続状況の確認や、マイク・カメラの動作確認を行うことをおすすめします。
5.支払い・薬の配送
オンライン診療が終了した後、患者には診療料金の支払い手続きをしてもらいます。クレジットカード決済や銀行振込など、オンラインで完結できる方法を用意しておくと、患者の負担を軽減できます。次回の来院予定がある場合は、窓口でまとめて支払うことも可能です。
薬を処方する場合は、医療機関から薬局へ処方箋情報を送付します。患者には薬局で直接薬を取るか、オンライン服薬指導を受けた上で郵送してもらうかのどちらを選択してもらう必要があります。なお、オンライン診療で処方できない薬があるため、必ず事前に確認しておきましょう。
歯科におけるオンライン診療の診療報酬点数
令和6年6月1日の診療報酬改定により「情報通信機器を用いた歯科診療に係る評価」が新設されました。初診・再診の診療報酬点数を、対面診療と併せて以下の表にまとめました。
初診 | 再診 | |
対面診療 | 267点 | 58点 |
オンライン診療 | 233点 | 51点 |
上記の通り、オンライン診療の診療報酬点数は対面診療に比べて低く設定されています。オンライン診療では、対面診療のように患者を直接診察したり、手を触れて検査したりすることが制限されるため、公平な評価として低く見積もられていると考えられます。
なお、オンライン診療における診療報酬点数は、過去の診療報酬改定により何度も変更されています。医療機関側としては、オンライン診療を検討する際、診療報酬点数の設定を考慮しつつ、患者一人ひとりに適した方法を選択することが大切です。
歯科がオンライン診療を実施するメリット・デメリット
オンライン診療は、対面診療と比較して診療報酬点数が低いため、収益性の観点からの導入をためらうかもしれません。しかし、オンライン診療には収益面を超えた大きなメリットも存在します。
ここでは、メリットとデメリットの両方を理解した上で、オンライン診療の導入を検討しましょう。
メリット
オンライン診療を実施することで、患者は歯科医院に足を運ぶ必要がなくなり、通院にかかる時間や手間を軽減できます。加えて、受付から診察開始までの待ち時間が発生しないため、患者の満足度向上にもつながります。
医療機関側にとっても、来院患者数の減少により待合室の混雑が緩和され、院内感染のリスクの軽減につながります。また、オンライン診療と対面診療を組み合わせることで、患者一人ひとりに合わせた柔軟な診療を提供することが可能です。
特にオンライン診療は、急を要さない経過観察や治療計画の確認などに有効です。たとえば、治療後の経過確認や予防的なアドバイスなど、来院の必要性が低い場合にはオンライン診療を活用することが推奨されます。
デメリット
オンライン診療の大きなデメリットは、対面診療と比較して得られる情報が限られる点です。映像や音声のみでは、口腔内の詳細な観察や触診ができず、診断精度に影響を与える可能性があります。
また、オンライン診療には安定した通信環境や、強固なセキュリティ体制を確保しなければなりません。通信トラブルが発生すると診療に支障をきたし、セキュリティに不備があると患者の医療情報が漏洩するリスクが高まります。
さらに、オンライン診療では、患者の容体が急変した際に緊急対応が難しいという課題もあります。厚生労働省の指針では、「患者の安全が確保されるよう、歯科医師は必要な体制を確保しなければならない」と定めています。
歯科医院がオンライン診療を導入する際の注意点
オンライン診療を導入に際に、注意点すべきポイントが3つあります。これらの注意点を事前に把握し、適切な対策を講じることで、スムーズなオンライン診療の導入が可能となります。
患者の情報収集に工夫が必要
オンライン診療では、対面診療に比べて取得できる情報が限られるため、患者の情報収集には工夫が必要です。具体的には、問診票の質問内容を工夫して、症状や既往歴について詳しく記載してもらうことが挙げられます。また、ビデオ通話中に追加で質問を行い、患者の症状や不安を詳しく聞き取ることも重要です。
診察時は、患者から口腔内の写真や動画を事前に送ってもらい、視覚的な情報も多く集めましょう。このようにオンライン診療では、患者の協力が診察の質を左右するため、患者への協力依頼が不可欠です。
通信トラブル対策を実施する
オンライン診療はインターネットを介して行われるため、回線不良や通信トラブルが発生する可能性があります。患者の診療に支障をきたさないためにも、事前に対策を講じることが重要です。
具体的には、安定したインターネット回線を確保することに加え、回線不良時の緊急連絡先や再接続の手順を明確にすることが求められます。また、回線の不具合が続く場合には、迅速に対面診療への切り替えや再予約の提案ができるよう、準備を整えておくと安心です。
IT機器に不慣れな方へのサポートが必須
オンライン診療では、スマートフォンやタブレットなどのIT機器の必要ですが、すべての患者がこれらの操作に慣れているわけではありません。そのため、IT機器に不慣れな患者をサポートする体制が不可欠です。
具体的には、画面キャプチャを使用した、簡潔で分かりやすいマニュアルの作成をすることが挙げられます。また、直感的に使いやすいシンプルで直感的なシステムを導入することも効果的です。
「march」ならスムーズなオンライン診療を実現
「march」は、LINEの基盤を活用したオンライン診療システムであり、「診察予約→事前問診→オンライン診療→決済・薬の配送」までの一連の流れをシステム上で行うことが可能です。
また、医療機関の業務効率化をサポートする機能も充実しており、管理画面から予約状況や診療履歴を一目で把握することができます。
全国のシニア(60~84歳)を対象にした調査によると、2024年時点でシニア層のLINE利用率は78%と、年々増加傾向にあります。シニア層がLINEを頻繁に利用していることを踏まえ、日常的に馴染みのあるツールを用いることで、オンライン診療に対する抵抗感を軽減できるでしょう。
スムーズなオンライン診療を実現するために、「使いやすさ」は不可欠です。オンライン診療の導入を検討している方は、ぜひmarchの無料体験から利用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
オンライン診療の導入にあたっては、メリット・デメリットや注意点を十分に理解し、慎重に検討することが重要です。オンライン診療のやり方を再確認したいときには、ぜひ本記事を参考にしてください。
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この記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属