自由診療とは、保険が適応されない診療のことです。保険診療とは違い、クリニックの裁量で自由に治療を提供できるため、より患者のニーズに応じたサービスを提供できます。
近年、オンライン診療を活用した多様なサービスを提供する自由診療クリニックが増えています。しかし、独立を考える中で、クリニックの開業手順や運営について悩む人も多いでしょう。
本記事では、自由診療クリニックの開業手順や自由診療のメリット、留意点を詳しく解説します。自由診療の開業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
自由診療クリニックとは?
自由診療クリニックとは、自由診療が診療の大部分を占めるクリニックのことをいいます。自由診療クリニックが提供しているサービスの例として、以下のようなものがあります。
- 二重手術をはじめとする美容外科
- ボツリヌス注射などの美容皮膚科
- 審美歯科、矯正歯科
- 一部の不妊治療
- 生理に伴う症状緩和や避妊目的の低用量ピル
- ED、AGA(脱毛症)、筋肉増強外来
- アンチエイジング
- メディカルダイエット
最先端の技術や薬、美容目的の施術を提供できるため、患者の多様なニーズに応えられます。
保険診療との違い
保険診療では、厚生労働省が認めた検査や治療の範囲内でしか診療ができません。一方、自由診療では保険の制約がなく、日本でまだ認められていない検査や技術、薬を使って治療が可能です。
また、保険診療国が定めた診療報酬に基づいて金額を請求しますが、自由診療ではクリニックの裁量で価格を設定でき、上限もありません。ただし、患者側は保険診療であれば、医療費の1~3割のみを負担すれば良いのに対し、自由診療では全額を負担することになります。
保険診療と自由診療の両方を提供しているクリニックもありますが、原則としてこれらを併用することは禁じられているため注意が必要です。
自由診療クリニックを開業する手順【7ステップ】
自由診療クリニックを開業したいと考えても、「何から始めれば良いか」「開業資金はどう準備するか」と悩むことがあるでしょう。
ここでは、開業手順を7ステップに分けて解説します。
1.コンセプトの設定
最初に行うべきことは、コンセプトや経営理念の設定です。つまり、どのような診療方針に基づき、どのような診療を提供していくかを明確にしていきます。
コンセプトは今後の事業計画や開業地選びなど、さまざまな決定事項の「軸」となります。診療を行う医師の強みや提供したい診療内容、患者のニーズ、ターゲット層などを考慮して設定しましょう。
コンセプトを明確にしておくことで、開業準備中における意思決定が容易になり、スタッフが共通認識を持って働けるメリットがあります。開業前にしっかりとコンセプトや経営理念を固めて、開業準備を進めましょう。
2.立地を定めて事業計画を立てる
コンセプトや経営理念が確立したら、それに基づいて開業地を選定し、事業計画を立てましょう。診開業地の選定には、診療科の特性やターゲット層、地域の患者ニーズ、自分に縁のある土地など、さまざまな観点を考慮する必要があります。
たとえば、30~40代女性をターゲットとした美容整形クリニックを開業する場合、通勤帰りに立ち寄れる駅近の物件を選ぶことが理想でしょう。オンライン診療を中心とする場合は、郊外の立地でも問題ありません。
また、クリニックの運営を安定させるためには、事業計画の策定が不可欠です。事業計画は、大きく「経営基本計画」「資金計画」「収支計画」に分けられます。
用語 | 概要 |
経営基本計画 | クリニックの目指す方向性や具体的な戦略をまとめた長期的な計画のこと。 |
資金計画 | 開業に必要な資金を具体的に算出し、その調達方法を検討するための計画のこと。 |
収支計画 | クリニックの収入と支出を予測し、収益性を高めるための計画のこと。 |
事業計画は、開業資金を調達する際に融資を受けるための重要な書類となります。金融機関に認めてもらうためには、緻密で説得力のある計画書を作成しましょう。
3.資金を集める
自由診療クリニックの開業には、資金調達が欠かせません。開業資金には、建物や内装、医療機器などの初期投資に加えて、開業後の運転資金も確保しておく必要があります。
自己資金だけでは難しい場合が多いため、銀行や日本政策金融公庫からの融資を検討すると良いでしょう。また、融資以外にも創業者向けの補助金や給付金、事業継承の引き継ぎ補助金、トライアル雇用助成金など活用できる制度があります。
自由診療クリニックの開業資金は、通常のクリニックよりも高額になることがあります。そのため、資金調達は複数の方法を組み合わせて行うと良いでしょう。
4.開業手続きを開始する
自由診療クリニックを開業するには、多くの手続きを公的機関に対して行う必要があります。その一つが「診療所開設届」です。法的には開設日から10日以内に管轄の保健所に届け出ることになっていますが、届出内容に指導が入ることがあるため、スケジュールに余裕を持って事前相談から始めることをおすすめします。
次に「保険医療機関指定申請」を管轄の厚生局に提出しましょう。自由診療クリニックであっても、保険診療のメニューを提供する場合にはこの申請が必要です。申請書が受付されてから、保険医療機関として指定されるまでには時間がかかるため、計画的に申請を進めましょう。
また、設備や保険の種類によっては、他の手続きが必要になる場合もあります。開業前にしっかりと情報を収集し、早めに手続きを進めましょう。
5.スタッフや医療機器を選定
スタッフの採用は、クリニック運営を円滑に進めるために非常に大切です。優秀な人材を採用することで、より良い医療やサービスを提供でき、患者満足度が向上し、クリニックの評判も向上します。
ただし、運営を考える際には適正な人件費についても考えなければなりません。サービスと経営のバランスに配慮しながら、適切なスタッフを採用をしましょう。
また、診療を提供するためには、医療機器の選定も重要です。自由診療では、選定する医療機器がクリニックの差別化要素となります。そのため、提供する診療内容だけでなく、運用コストや競合クリニックが採用している機器も考慮しながら選定しましょう。
勉強会や学会などに参加して、最新の医療機器について十分な情報収集を行うことも大切です。
6.料金を設定する
提供する診療内容やサービスが決まったら、次に料金を設定しましょう。自由診療では料金設定が自由である一方、過度に高額だと患者が利用をためらい、逆に低すぎるとサービスの価値が低下し、運営に支障が出る可能性があります。
競合クリニックが提供しているサービス内容や価格をリサーチし、患者にとって適切な価格設定を検討しましょう。
7.集患を行う
開業準備が整ったら、効果的な集患対策を行いましょう。チラシ配布に加え、WebサイトやSNSといった多様な手段を活用することが大切です。ターゲット層の特性に応じて、集客のツールを選択することで、効果的に患者を集められるでしょう。
広告を作成する際は、「医療広告ガイドライン」に厳密に従う必要があります。規制に違反した場合、罰則だけでなく、診療所の開設許可が取り消される可能性もあるため、慎重に対応しながらクリニックの魅力を最大限に伝えましょう。
自由診療クリニックを開業するメリット
自由診療クリニックを開業することで、保険診療では実現できない医療やサービスを提供し、より理想に近い診療スタイルを追求できるでしょう。
ここでは、自由診療クリニック開業におけるメリットを3つ紹介します。
最先端の医療機器を提供できる
自由診療クリニックでは、最先端の医療技術に挑戦できます。保険診療の枠にとらわれず、国内でまだ認可されていない最新の医療機器や薬を使用できることは、大きなメリットです。
最先端の医療を提供することで、競合クリニックとの差別化が図れて、独自性の高いクリックとなるでしょう。また、従来の治療に満足していない患者が新たな治療を求めて来院するため、集患にもつながります。
料金設定を自由に行える
自由診療クリニックでは、診療にかかる料金を自由に設定できるのが、大きなメリットです。自由な料金設定により、クリニックの収益性を高め、より良い医療環境を整えることができるでしょう。
ただし、価格設定が高すぎると患者に敬遠される可能性があるため、競合クリニックのサービス内容や価格をリサーチし、適正な価格設定を慎重に検討することが重要です。
患者に合った最適な医療を提供できる
自由診療クリニックのメリットは、患者一人ひとりに合ったサービスを提供できる点です。保険診療ではカバーできない患者ニーズを満たすことが、自由診療では可能になります。
患者が求めるサービスを提供することで、満足度の向上に直結し、クリニックの評判も高まるでしょう。
自由診療クリニックの開業前に留意すべき点
自由診療は、国の認可を受けないため、開業者が多くの責任を負うことになります。ここでは、自由診療の開業における留意点を見ていきましょう。
厚生労働省が認可していない治療はリスクを伴う
自由診療で提供する治療や施術については、患者が不利益を被った場合、クリニック側が責任を負うことがあります。保険診療の場合、副作用に対する国の救済制度がありますが、自由診療で提供される治療は厚生労働省に認められていないため、これらの制度は適用されません。そのため、クリニック側に法的責任を追及される可能性があります。
こうしたリスクを回避するためには、患者への丁寧な説明とアフターフォローが不可欠です。治療のメリットとデメリットを十分に説明し、患者に納得してもらったうえで治療を選択してもらいましょう。
料金が高くなりがち
自由診療は公的医療保険の対象外となるため、料金が高くなりがちです。保保険診療では患者の負担が1~3割で済むのに対し、自由診療では全額を患者が負担する必要があります。さらに、最先端の医療機器や薬剤を使用する場合、そのコストが医療費に上乗せされることが多くなります。
開業準備段階では、医療機器や設備の導入費用を慎重に検討し、料金が高騰しすぎないように配慮しましょう。
オンラインで自由診療を始めるならmarchがおすすめ
オンライン診療は、新型コロナウイルスの流行をきっかけに広く普及しました。特に自由診療との相性が良く、オンライン診療を提供する医療機関が増えています。
オンラインで自由診療をすることで、以下のメリットがあります。
- 通院の手間や交通費、時間などの負担が減るため通院継続率が上がる
- AGAやEDなど通院に抵抗のある患者にとって受診のハードルが下がる
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まとめ
自由診療クリニックとは、保険診療では扱えない最先端の技術や薬剤、美容目的の施術などを提供しているクリニックのことです。
自由診療クリニックの開業には、コンセプトや経営理念の設定、事業計画の立案、スタッフの採用、設備の選定、資金調達、開業手続き、集患対策と段階的な準備が求められます。
近年では、オンライン診療の需要も高まっているため、開業前からオンライン診療の導入も視野に入れて検討することをおすすめします。
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この記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属