クリニックが業務効率化することは、医療スタッフの負担軽減だけではなく、患者の満足度向上などさまざまなメリットがあります。とはいえ、クリニックの業務効率化をどのようにすればよいのか、悩む方もいるでしょう。本記事では、クリニックが業務効率化するメリットと、効率化するための具体的な方法について詳しく解説します。クリニックの業務効率化を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
クリニックにおいて業務効率化すべき理由
近年、クリニックにおける業務は増加傾向にある背景から、業務のデジタル化やプロセスの見直しが必要となり、急務とされています。なぜそれほど優先度が高まりつつあるのか、業務を効率化すべき理由を3つ紹介します。
人手不足の慢性化
医療業界の人手不足は社会的にも大きな問題となっています。厚生労働省のデータを見てみると、2018年の時点で潜在看護師の人数は約69.5万人程度と推計されており、多くの看護師が資格を所有していながら働いていない状況にもかかわらず、求人を出しても人が集まらない状況が長期化しています。現在も看護師の有効求人倍率は、一般職と比べて高い傾向にあり、慢性的な人手不足から抜け出せていません。スタッフがなかなか集まらない結果、現場のスタッフに負担がかかってしまうため、いずれスタッフは退職を検討することとなり、人が減るという悪循環に陥ってしまうでしょう。
看護業務の負担増大
看護師の本来の業務内容は、「傷病者の世話と診療の補助」と保健師助産師看護師法で定められています。しかし実際には、ほかにも清掃や物品の点検、発注など看護業務以外の業務も多くあります。規模の大きい病院では、事務職や看護補助がこれらの業務を担うことも多いですが、クリニックなど規模の小さい病院だと看護師がこれらの業務もすべて行わなければなりません。看護師本来の業務に加えて、看護の枠を超えた業務まで対応しなければならず、看護師にとっては大きな負担となります。身心の負担が理由で退職する看護師もいるため、負担の解消が必要といえるでしょう。
受付業務の負担の増大
医療事務者には、看護師や医師ができない補助業務を担う大切な役割があります。例えば、本来の業務である受付業務や会計業務に加えて電話対応やカルテの入力、紹介状の送付やレセプト請求、さらにはクリニックに来院されたお客様の対応など多岐にわたります。受付の負担が大きくなると、看護師と同様に退職を考えるようになり、人手不足につながるかもしれません。医療事務の有効求人倍率について、具体的なデータはないものの、比較的人材が安定していると考えられています。しかし、新しいスタッフに1からすべてを教えて、一人前まで育てるには時間も労力もかかるため、なるべく1人の人材に長く働き続けてもらえる環境を作る必要があるといえるでしょう。
クリニックで業務効率化するメリット
クリニックで業務を効率化することで、クリニックで働くスタッフだけではなく、経営者にもさまざまなメリットがあります。具体的にどれほど効果が大きいのか、業務効率化によるメリットを3つ紹介します。
スタッフの働きやすさが向上する
クリニックの業務を効率化する最大のメリットは、スタッフが働きやすくなることです。スタッフが働きやすい環境となれば、職場の定着率向上にもつながります。その結果、求人を出す必要もなくなり、求職サイトや転職エージェントにかかる費用も抑えられるでしょう。また、働きやすい環境を整えることでスタッフのモチベーションが高まり、仕事に対する熱量も上がります。必然的に業務スピードも上がり、労働時間の短縮につながるので、残業代といった人件費を圧縮できるでしょう。そのうえ、今まで残業をさせていた時間をスタッフの学習時間として確保できる可能性があるので、接遇の質の向上につながるでしょう。
売上の向上につながる
業務の効率化によって生まれた時間をスタッフの教育時間に充てれば、スタッフの接遇がよくなり、必然的に来院する患者数が増えて、売上の向上につながるでしょう。また、余裕のできた時間でビラ配りや、クリニックのサイト更新を行えば、新規患者の集客ができるため、さらなる売上の向上を目指せます。
患者の満足度向上につながる
業務効率化として、Web問診票や電子カルテなどのデジタルツールを導入すれば、スムーズな診察を実現できます。その結果、患者の待ち時間が減り、混雑の解消が解決されるので患者の満足度向上につながるでしょう。日本医師会の「第5回 日本の医療に関する意識調査」によると、「待ち時間」に関する不満を抱えている患者は、全体の4割を占めている結果となっています。そのため、待ち時間を減らすことは、患者の不満を解消し、クリニックの評判を高めることにもつながるでしょう。
クリニックで業務効率化する方法
業務を効率化するにしても、「具体的に何をすればよいのかわからない」「なるべくコストや時間をかけたくない」という方もいるでしょう。そこで、ここからは時間やコストを抑えながら取り組める、具体的な方法とアイデアを紹介します。
デジタルツールを導入する
電子カルテをはじめとするデジタルツールの導入は、業務効率化に最も効果的といえます。とはいえ、「デジタルツールの導入にはコストがかかるのでは?」と思う方もいるでしょう。これまでデジタルツールを一切導入していないクリニックにとっては、パソコンなどのデバイスから購入しなければならず、費用がかさむ心配もあるでしょう。しかし実際は、多額の費用や時間をかけずにデジタルツールを導入し、業務を効率化できます。デジタルツールにはさまざまなものがあるため、自分のクリニックの状況に合わせた必要最低限の導入がよいでしょう。例えば、医療事務の負担の軽減と考えた場合には、予約システムの導入やWeb問診票のみの導入でも、業務負担を大幅に減らせます。
プロセスの見直し
各業務の負担を洗い出して見直してみるのも、クリニックの業務効率化のために必要です。受付の手続き方法や診察までの流れ、看護師の業務内容など1つずつ見直していくと、不要なものやデジタルツールで代用できるものがあります。見直しには時間がかかりますが、不要なものを減らすことができれば、お金をかけずに業務の効率化が図れるでしょう。
クリニックの業務をアウトソーシング活用で効率化する方法
アウトソーシングを活用して、看護師や医療事務の業務負担を減らすことも業務効率化につながります。院内の対策だけで不十分なものに対して、アウトソーシングツールを活用しましょう。ここでは、受付業務など患者と直接関わる業務に着目してアウトソーシングツールをご紹介します。
診療予約システム
診療予約システムとは、Webやアプリを使用して診察の予約ができるシステムのことです。患者側は自宅や職場から気軽に予約ができるため、受診行動の促進につながるほか、待ち時間の解消につながるメリットがあります。
一方、クリニック側は予約に関する電話対応の時間が減ることから、業務短縮と受診の混雑緩和につながり、クレーム対応の時間を減らせるでしょう。また、予約患者が増えることで収益に直結するメリットもあります。予約システムは、Webサイトを活用するものやアプリを活用するものなどさまざまあるため、予算や使い勝手に合わせて選びましょう。
電子カルテ
電子カルテとは、すべての診療情報をデータにて一括管理できるシステムのことです。医師が書くカルテだけではなく、検査結果や検査画像、処方のオーダー、会計情報などすべての情報を一括管理できます。
これまでは、データやファイルを整理しながら保管する必要があり、必要な時にそれぞれの場所から探す出す手間が発生していました。しかし、データで一括管理することで、検索するだけですぐに情報を見つけ出せるようになります。患者の名前を調べるだけですべての情報が取り出せるので、情報を探す手間が大幅に省けるでしょう。
また、統一された書式で管理できるため、筆跡の癖によりカルテの内容が読解できないということも生じません。すべてのスタッフが共通の認識をもって患者に関われるので、患者の満足度がさらに高まるでしょう。
Web問診票
Web問診票とは、インターネット上で問診票を作れるシステムのことです。導入することで患者は、自身のタブレットやスマートフォンで問診票の入力が可能となります。タブレットやスマートフォンなどをもっていない場合は、医院内でタブレットを貸し出し、医院でWeb問診票を入力してもらうとよいでしょう。
問診票の記入には時間がかかるため、受診をしても問診票の記入によって診察時間が遅くなることがあります。事前に問診票を入力してもらうことですぐ受診できるため、患者の待ち時間の短縮につながります。
自動精算機
自動精算機は、患者の会計を自動で清算できる機械のことです。自動精算機を導入すれば、スタッフが会計に関わる必要がなくなるため、受付業務の大幅な削減につながります。また、会計の計算を間違えたり、クレジットカードの入力をミスしたりなど、ヒューマンエラーの防止にもなるでしょう。さらに、診療終了後のレジ締め作業の手間を減らせるため、残業の削減にも貢献します。
会社によって自動精算機の操作性や機能など特徴が異なるので、クリニックの患者が使いやすいと思うサービスを選択しましょう。
まとめ
クリニックの業務効率化によって、患者側・クリニック側双方にメリットがあります。特にクリニック側は、人材確保や売上の向上など大きなメリットを享受できるでしょう。
システムの導入など初期費用はかかる場合もありますが、長い目で見れば初期費用を回収できるうえ、競合クリニックに引けを取らないサービス提供により、長期的な売上向上につながるでしょう。
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この記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属