電子処方箋の受付から調剤記録までの流れは?導入方法も紹介

近年、医療現場において注目を集めているのが「電子処方箋」です。すでに電子処方箋の導入に向けて、準備を進めている人もいるでしょう。しかし、導入後にスムーズな運用を実現するためには、電子処方箋の流れを知り、業務のイメージをつけておくことが重要です。

本記事では、電子処方箋の発行から調剤記録までの一連の流れを解説します。電子処方箋の導入方法や補助金の活用についても解説しているので、電子処方箋の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

電子処方箋とは?

電子処方箋とは、紙で発行していた処方箋をデジタル化して、クラウド上で管理・運用する仕組みのことです。

電子処方箋を活用することで、患者ごとの受診履歴や服薬履歴を安易に確認できるようになり、より適切な服薬指導を行えるようになります。また、重複投薬や併用禁忌がないかの確認もできるため、安全性の向上につながります。

令和5年4月23日時点で、全国3,352施設で電子処方箋の運用が始まっており、システム・運用においての大きなトラブルは発生していない現状です。

電子処方箋の仕組み

電子処方箋は、国が運営している電子処方箋管理サービスを通じて、医師・歯科医師・薬剤師間で処方箋を電子的にやり取りできる仕組みです。

従来の紙の処方箋では、医師が手書きで処方内容を記入し、患者が薬局に持参する必要がありました。ですが、電子処方箋が導入されたことで、オンライン上で処方箋のやり取りを完結できるようになったため、患者は紙の処方箋を持ち運ぶ必要がなくなります。

また、瞬時に薬局との情報連携が可能となるため、調剤までの待ち時間の短縮にもつながります。

電子処方箋の受付から調剤記録までの流れ

ここでは、電子処方箋の受付から調剤記録までの流れについて解説します。

1.医師が電子処方箋を発行

患者が電子処方箋を選択した場合は、医師が診察の内容に基づいて電子処方箋を発行します。

もし、患者がマイナンバーカードを持っていない場合は、「引換番号」の発行が必要です。引換番号は、電子処方箋と一緒に発行される「処方内容(控え)」に記載されており、薬局が本人確認として使用します。

2.薬剤師が処方箋情報を確認

電子処方箋の内容を確認し、薬剤師が調剤を行います。この際、薬剤師は過去の調剤情報や医師の処方意図を確認できるため、より安全にかつ正確に薬剤の調剤が可能です。

また、重複投薬や禁忌併用等のチェック結果も参照できるため、薬剤師はこの結果も参考にしながら調剤を行います。

3.調剤内容を電子処方箋管理サービスに登録

調剤が完了したら、薬剤師は調剤した薬剤の内容を電子処方箋管理サービスへ登録します。そして、調剤情報がオンライン上で共有されるため、医師は「薬剤が正しく調剤されているか」「処方した薬に誤りはないか」の確認が可能です。

患者には、マイナポータルや電子版お薬手帳アプリで確認できる旨を説明する必要があります。

なお、処方箋を調剤済みとして登録するには、 ICカード「HPKIカード」が必要です。HPKIカードは、医師や薬剤師の資格を電子的に証明するためのカードであり、日本医師会電子認証センターで取得できます。

電子処方箋を導入するメリット

ここでは、電子処方箋を導入するメリットを3つ紹介します。

3過去3年分の患者の調剤データを閲覧できる

電子管理処方サービスに登録した調剤データは、過去3年間分蓄積されており、いつでも閲覧できます。

令和3年3月より開始されたオンライン資格確認では、直近の処方内容を確認できず、お薬手帳にて情報収集をするしか方法がありませんでした。しかし、電子処方箋を導入することで、処方データをリアルタイムで確認できるようになります。もし、患者がお薬手帳を紛失した場合でも、直近の調剤情報はクラウド上に記録されているため、再診を行わなくても治療の継続が可能となります。

薬局の業務効率化が期待できる

電子管理処方を利用すれば、処方箋のデータをシステムに取り込めるため、薬局がデータを手入力する必要がなくなります。結果的に業務短縮となり、人的ミスの削減にもつながるでしょう。

また、紙の処方箋を保管する必要もなくなるため、処方箋のファイリングや物理的な保管スペースが不要となります。さらに、医師とのコミュニケーションの円滑化につながるため、必要な情報を電話等で確認する手間も省けるでしょう。

併用禁忌や重複投薬を避けられる

電子管理処方であれば、患者がお薬手帳を持参していなくても、医師は過去の服薬履歴を確認できるため、併用禁忌や重複投薬を防ぐことができます。

従来の紙の処方箋では、過去の服薬履歴を確認するために、患者がお薬手帳を持参する必要がありました。そのため、お薬手帳を忘れてしまったり紛失したりした場合は、過去の服薬履歴を確認できず、併用禁忌や重複投薬のリスクが高まりました。

電子管理処方の導入により、初診の医療機関でも、医師に正確に薬剤情報を確認してもらうことが可能になるため、より安全な医療提供につながります。 

電子処方箋を導入するデメリット

ここでは、電子処方箋を導入することで起こり得るデメリットを2つ紹介します。

システム操作に慣れるまで時間がかかる

デジタルツールに慣れていない医師や薬剤師にとっては、データ入力に時間がかかる場合があります。また、操作ミスによって誤った処方が行われてしまう可能性もあるため、操作に慣れるまでは注意が必要です。

操作に慣れるまでは、紙の方が速く記録できるかもしれません。ですが、操作に慣れると、従来の紙の処方箋よりも正確かつ迅速に業務を処理できるようになるため、将来的には業務の負担軽減につながるでしょう。

操作ミスによるトラブルを防ぐには、操作方法を説明したマニュアルを作成したり、研修を実施したりするなどして対策しましょう。研修では、実際に画面を見ながら操作方法を指導することが大切です。

運用コストがかかるがかかる

電子処方箋の導入から運用に至るまでには、運用コストがかかります。運用コストは導入するシステムにより異なるものの、システムによっては数百万円かかる場合もあります。小規模な医療機関や薬局にとっては、大きな負担となる可能性があり、デメリットとなるでしょう。

ですが、電子処方箋の導入には補助金を活用できます。電子処方箋の補助金については後ほど詳しく解説します。

電子処方箋を導入する流れ

電子処方箋を導入するには、システム導入やカード発行など、いくつかの手続きが必要となるため、スムーズな導入には事前準備が不可欠です。ここでは、導入までの具体的な流れを紹介します。

また、電子処方箋の導入で活用できる「電子処方箋管理サービス等関係補助金」の申請方法についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。

1.オンライン資格確認システム導入

電子処方箋は、オンライン資格確認システムの仕組みを活用したサービスです。そのため、まずはオンライン資格確認システムを導入する必要があります。令和5年4月より、オンライン資格確認システムの導入は原則義務化しているため、すでにほとんどの医療機関が導入を済ませているかもしれません。

まだ導入が済んでいない方は、機器の準備やシステム登録に3カ月程度はかかるため、早めに導入の手続きを始めておくことが大切です。手続きの方法については、厚生労働省の「オンライン資格確認の導入に向けた準備作業手引き」を参考にしてください。

2.医師と薬剤師のHPKIカードを発行

電子処方箋を利用するにあたり、 ICカード「HPKIカード」が必要となります。 HPKIカードとは、医師や薬剤師の資格を電子的に証明するためのカードのことです。

HPKIカードを発行するには、まず日本医師会電子認証センターのホームページから、オンラインで申し込みを行います。申し込みには、医師免許証や歯科医師免許証などの本人確認書類が必要です。

HPKIカードは、薬剤師が調剤済みの操作を行う場合にも必要となるため、1人につき1枚を用意しておけなくてはいけません。なお、過去の処方・調剤情報を閲覧するだけであれば 、HPKIカードは必要ありません。

3.ポータルサイトより利用申請

全ての準備が整ったら、ポータルサイトで電子処方箋の利用申請を行いましょう。申請が完了してから約1週間で、電子処方箋管理サービスのシステム利用ができるようになります。

いきなりシステムの利用を開始すると、思わぬ不具合や操作方法の理解不足による混乱が生じる可能性があります。このような事態を回避するためにも、運用テストを事前に実施し、システムの動作を徹底的に検証しましょう。

電子処方箋導入には補助金が使える

電子処方箋の導入では、「電子処方箋管理サービス等関係補助金」を利用できます。補助の対象となるのは、下記の3つの費用です。

・基本パッケージ改修費用(電子カルテシステム、レセプト電算化システム等の既存システム改修にかかる費用)

・接続・周辺機器費用(オンライン資格確認端末の設定作業、医師・薬剤師の資格確認のためのカードリーダー導入費用)

・システム適用作業費用(現地システム環境適用のための運用調査・設計、システムセットアップ、医師、運用テスト、運用立会い等)

補助される費用の上限や割合については、医療機関の規模や導入内容、導入のタイミングによって異なるため、厚生労働省のサイトを確認しましょう。また、補助金制度を利用するには、令和7年3月31日までに電子処方箋管理サービスの導入を完了した上で、令和7年9月30日までに申請しなければもらえません。

まとめ

電子処方箋を導入すれば、医師や薬剤師の連携がスムーズになり、業務効率化につながります。また、従来の紙の処方箋のように手書きで記入する必要がなくなるので、人的ミスによる調剤ミスを防げて、より安全な医療を患者に提供できるでしょう。

電子処方箋の導入は、令和7年3月31日までに完了すれば補助金の対象となります。システム導入には一定期間が必要となるため、早めの準備をご検討ください。

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この記事の監修者

監修者尾崎 功治

2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。

日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属

リンク:オンライン診療クリニックmarch clinic

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