オンライン診療を適切に実施するためには、対象疾患・対象とならない疾患を明確に把握しておくことが大切です。オンライン診療関連の法令は、医療需要の変化によって随時見直されるため、定期的に確認しましょう。
本記事では、オンライン診療の対象疾患を診療報酬点数と併せて紹介します。オンライン診療の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
オンライン診療の対象疾患がコロナ規制緩和により拡大
2019年末以前、法的な制限や診療報酬の不備などの問題があり、これらがオンライン診療の普及の妨げとなっていました。当時のオンライン診療で保険適用となる疾患は、生活習慣病(高血圧や脂質異常症など)やてんかん、難病などに限られていました。
しかし、2020年から2022年にかけて、オンライン診療の規制が緩和されます。契機となったのはCOVID-19のパンデミックです。外出自粛や感染防止の観点から、オンライン診療への需要が高まる同時に、オンライン診療の規制緩和が進んだことで、診療できる疾患の範囲が拡大されました。
以前は問診が中心となる高血圧症や糖尿病などの慢性疾患が対象でしたが、現在は身体診察が不可欠な場合を除き、幅広い疾患に対応できる法制度が整いつつあります。
オンライン診療で算定可能な疾患
ここでは、オンライン診療で算定可能な疾患と診療報酬を紹介します。
特定疾患療養管理料
令和6年の診療報酬改定により、高血圧、脂質異常症、糖尿病が特定疾患療養管理料から除外されました。主な対象疾患としては、以下が挙げられます。
・がん
・結核
・甲状腺疾患
・心臓病(狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全など)
・脳血管疾患(脳梗塞や脳出血)
・呼吸器疾患(肺気腫や慢性気管支炎など)
・消化器疾患(胃潰瘍や胃炎など)
・慢性的な肝疾患 など
診療報酬点数は、以下の通りです。
特定疾患療養管理料の診療報酬点数
1.診療所の場合:225点
2.許可病床数が100床未満の病院の場合:147点
3.許可病床数が100床以上200床未満の病院の場合:87点
情報通信機器を用いた場合
1.診療所の場合:196点
2.許可病床数が100床未満の病院の場合:128点
3.許可病床数が100床以上200床未満の病院の場合:76点
小児科療養指導料
小児科療養指導料の主な対象疾患としては、以下が挙げられます。
・脳性麻痺
・先天性心疾患
・ネフローゼ症候群
・ダウン症等の染色体異常
・川崎病で冠動脈瘤のあるもの
・脂質代謝障害
・腎炎
・溶血性貧血
・再生不良性貧血
・血友病
・血小板減少性紫斑病
・先天性股関節脱臼
・内反足
・二分脊椎
・骨系統疾患
・先天性四肢欠損
・分娩麻痺 など
小児科療養指導料の診療報酬点数は、次の通りです。
対面診療 | 270点 |
オンライン診療 | 235点 |
てんかん指導料
てんかん指導料は、てんかんの患者(入院中を除く)に対し、小児科、神経科、神経内科、精神科、脳神経外科、心療内科を標榜する保険医療機関の専任医師が、治療計画に基づいて療養上必要な指導を行った場合に、月1回算定できます。
てんかん患者の家族に対して療養上の指導を行った場合にも算定可能です。
てんかん指導料の診療報酬は、次の通りです。
対面診療 | 250点 |
オンライン診療(情報通信機器を用いた場合) | 218点 |
難病外来指導管理料
難病外来指導管理料は、厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者(入院中を除く)に対して、計画的な医学管理を継続して行い、治療計画に基づき療養上必要な指導を行った場合に月1回算定できます。算定可能となるのは、初診の日から起算して1ヶ月を経過した日以降です。
対象疾患の一部として、主に以下が挙げられます。
・ベーチェット病
・多発性硬化症(MS)
・重症筋無力症(MG)
・全身性エリテマトーデス
・スモン
・再生不良性貧血
・サルコイドーシス など
詳しくは厚生労働省の「難病外来指導管理料 対象傷病名一覧」から確認できます。
難病外来指導管理料の診療報酬点数は、次の通りです。
対面診療 | 270点 |
オンライン診療(情報通信機器を用いた場合) | 235点 |
精神科オンライン在宅管理料
精神科オンライン在宅管理料とは、オンライン診療の施設基準を満たす保険医療機関において、情報通信機器を用いた診察で医学管理を行っている場合に算定できる診療報酬です。
対象となる患者は、在宅時医学総合管理料を算定している初診以外の患者であり、かつ当該管理料を初めて算定した月から6ヶ月以上を経過した患者とされています。
精神科在宅患者支援管理料・精神科オンライン在宅管理料の診療報酬点数は、100点です。
糖尿病透析予防指導管理料
糖尿病透析予防指導管理料とは、糖尿病性腎症の透析移行を予防するため、糖尿病患者に対して医師・看護師又は保健師、管理栄養士などが連携して医学管理を行った場合に、月1回のみ算定できる診療報酬です。
「通院する患者であり、在宅での療養を行う患者を除く」などの条件が定められているため、詳しくは「B0001 27 糖尿病透析予防指導管理料」を確認してください。
糖尿病透析予防指導管理料の診療報酬点数は、次の通りです。
対面診療 | 350点 |
対面診療(特定地域) | 175点 |
オンライン診療 | 305点 |
オンライン診療(特定地域) | 152点 |
生活習慣病管理料(II)
生活習慣病管理料(II)は、令和6年の診療報酬改定により新設された診療報酬項目で、脂質異常症、高血圧症、糖尿病を主病とする、患者の総合的な治療管理を目的としています。許可病床数が200床未満の病院及び診療所である医療保険機関の場合に、月1回のみ算定可能です。
従来の高血圧・糖尿病・脂質異常は「特定疾患療養管理料」に該当していましたが、令和6年の診療報酬改定により「生活習慣病管理料(II)」に該当されることとなりました。
生活習慣病管理料(II)の診療報酬点数は、次の通りです。
対面診療 | 333点 |
オンライン診療 | 290点 |
オンライン診療で算定できない疾患
以前まではオンライン診療で算定できていたものの、令和4年度診療報酬改定によって対象外となった疾患があります。ここでは、対象外となった「地域包括診療料」「認知症地域包括診療料」「生活習慣病管理料(I)」について解説します。
地域包括診療料
地域包括診療料は、厚生労働大臣が定める疾患を有する患者に対して、同意を得たうえで継続的かつ全人的な医療を提供する主治医を決め、その医療を継続的に提供するために算定される診療報酬です。 対象となる患者は、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、慢性心不全、慢性腎臓病(慢性維持透析を行っていない場合)と、認知症の6疾病のうち2つ以上(疑いを除く)を有する患者です。 令和4年の診療報酬改定により、オンライン診療の対象外となりました。
認知症地域包括診療料
認知症地域包括診療料は、厚生労働大臣が定める施設基準を満たす診療所において、認知症患者に対し継続的かつ全人的な医療を提供する主治医を決め、その医療を継続的に提供するために算定される診療報酬です。 認知症地域包括診療加算の対象疾患は、認知症の患者で認知症以外に1以上の疾患(疑いのものを除く)を有する患者などです。 現在はオンライン診療の対象外となります。
生活習慣病管理料(I)
生活習慣病管理料(Ⅰ)とは、脂質異常症、高血圧症、糖尿病などの生活習慣病を主病とする患者の総合的な治療管理を目的とする管理料です。
対象となるのは、脂質異常症、高血圧症、糖尿病のいずれかを主病としている患者です。検査や注射などを包括する場合は、生活習慣病管理料(Ⅰ)に該当します。
生活習慣病管理料(Ⅱ)はオンライン診療の対象ですが、(Ⅰ)は対象外となる疾患であるため注意が必要です。
オンライン診療に向かない疾患とは
オンライン診療は全ての疾患に適しているわけではありません。ここでは、オンライン診療に不向きな疾患を2つご紹介します。
急性期疾患や重篤な疾患
急性期疾患や重篤な疾患は、迅速かつ適切な医療対応が求められます。緊急を要する状況では、対面での診察や緊急処置が必要であることから、オンライン診療は適していません。
オンライン診療は、比較的容体が安定しており、緊急性の低い患者に対して有効な方法です。
検査が必要な疾患
オンライン診療は遠方の患者を対象とした診療方法です。よって、診療の際にレントゲン撮影、血液検査、心電図検査などの検査が必要な疾患には向いていません。
検査を実施する場合は対面診療、経過観察や軽度な症状の診察の場合はオンライン診療など、両方を使い分ける必要があります。
まとめ
オンライン診療の対象疾患と診療報酬点数について解説しましたが、併せてツール選びも重要な要素です。適切なツールを選ぶことで、診療の質が向上し、結果として患者満足度の向上につながります。
「march」は、パソコンやタブレットひとつで導入できるオンライン診療システムです。事前予約・事前問診はもちろん、オンライン診療から決済、処方箋の配送まで一括で実施できます。直感的なUIで使いやすく、導入・運用のサポート体制も充実しております。オンライン診療の導入を検討している方は、お気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属