2022年(令和4年度)の診療報酬改定により、オンライン診療における診療報酬や算定要件が変更となりました。
この記事では、オンライン診療における診療報酬改定による変更点や算定要件について詳しく解説します。
オンライン診療とは
オンライン診療とは、パソコンやタブレットなどの情報通信機器を用いて行う診療形態のことをいいます。患者の診察や服薬指導をオンライン上で実施可能とする遠隔医療サービスです。
厚生労働省によるオンライン診療の定義は、次のとおりです。
「遠隔医療のうち、医師―患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為」
引用元:厚生労働省|オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針
パソコンやスマホなど、リアルタイムで通信が可能な情報通信機器を活用することで、患者は医師による診療行為を受けられます。患者にとっては自宅から受診できるため、体力・心理的な負担が少なく済むメリットがあります。
2022年(令和4年度)の診療報酬改定による変更点
2022年(令和4年度)の診療報酬改定によって、初診・再診におけるオンライン診療の適切な実施に関する評価が見直されました。また、コロナ禍における特例措置は終了し、診療報酬は令和4年の改定後の評価となったのが変更点です。
ここからは、具体的な変更点について紹介します。
情報通信機器を用いた初診・再診等の評価が新設
2022年(令和4年度)の診療報酬改定によって、これまでの枠組みであったオンライン診療料は廃止となり、情報通信機器を通じた初診・再診において診療報酬が算定可能となりました。
また、電話でのオンライン診療は不可となり、リアルタイムでのビデオ電話のみを対象とするなど、オンライン診療における対象患者や算定要件等に関しても大幅な変更が行われています。これらの変更により、患者の通院負担の軽減や待ち時間の短縮など、患者側のメリットが期待できるでしょう。
コロナ禍の特例措置が2023年7月31日をもって終了
コロナ禍の特例措置が設けられた期間は、オンライン診療の届出がなくとも初診料214点の算定が可能でした。しかし、2023年7月21日以降、コロナ禍の特例措置が終了するに従い、以下の措置が終了しています。
電話や情報通信機器を用いた初診及び定期受診における診療報酬の算定(214点)
医療機関を管轄する地方厚生(支)局への施設基準の届出が不要
2023年8月1日以降、情報通信機器を用いたオンライン診療を実施するには、オンライン診療を行う医療機関を管轄する地方厚生(支)局へ施設基準の届出をして、施設基準に準じた体制でオンライン診療の実施が求められます。
オンライン診療における改定後の診療報酬
診療報酬改定により、以下の項目が変更されました。
- 初診料
- 再診料・外来診察料
- 医学管理料
- 外来栄養食事指導料
それぞれについて、詳しく解説します。
初診料
医師が情報通信機器を用いた初診が可能と判断した患者に対しては、初診時からもオンライン診療が恒久的に可能となりました。オンライン診療での初診料は251点に改定され、対面診療の288点よりも37点低い点数です。
加えて、以下の点も改定されています。
患者の自宅と医療機関の距離が30分以内
オンライン診療の場合は算定を1割以下とする
上記の点が撤廃され、オンライン診療の間口が広がったことにより、患者側も医療機関側もメリットを享受できるようになりました。
再診料・外来診察料
再診料や外来診察料については、オンライン診療費の撤廃により、以下の項目が新設されています。
- 情報通信機器を用いた場合の再診料:73点
- 情報通信機器を用いた場合の外来診療料:73点
上記に加えて、初診と同じく距離や算定割合の条件が撤廃され、3ヶ月に一度は対面診療という要件も併せて廃止となりました。
医学管理料
医学管理料についても、算定可能な項目が追加され、点数が引き上げとなっています。以下は、医学管理料に関するオンライン診療と対面診療の対比表の一部を抜粋したものです。
点数名称 | 対象医学管理料 | (参考)対面診療での点数 |
特定疾患療養管理料 | 196点 | 225点 |
小児科療養指導料 | 235点 | 270点 |
てんかん指導料 | 218点 | 250点 |
※公益社団法人東京都医師会「新規開業医のための保険診療の要点(総論)〔6〕オンライン診療 Ⅲ情報通信機器を用いた医学管理料等」より一部抜粋
また、以下の項目は今回の診療報酬改定においては算定対象外となっています。
- 地域包括診療料
- 認知症地域包括診療料
- 生活習慣病管理料
外来栄養食事指導料
外来栄養食事指導料に関しては、栄養食事指導の実施を推進するといった背景もあり、初回から情報通信機器を用いた場合の栄養食事指導が算定可能となりました。また、外来栄養食事指導料の算定に関しては、電話診療による実施も可能です。
以下は、外来食事指導料に関する表です。
イ 外来栄養食事指導料1 | 初回(月2回まで) | 対面時260点 | オンライン235点 |
2回目以降(月1回) | 対面時200点 | オンライン180点 | |
ロ 外来栄養食事指導料2(診療所) | 初回(月2回まで) | 対面時250点 | オンライン225点 |
2回目以降(月1回) | 対面時190点 | オンライン170点 |
※引用元:公益社団法人東京都医師会「新規開業医のための保険診療の要点(総論)〔6〕オンライン診療 Ⅵ外来栄養食事指導料」
上記表のうち、項目イは当該医療機関の管理栄養士のみ、項目ロは当該医療機関以外の管理栄養士が算定可能となっています。
オンライン診療の対象者
オンライン診療の対象者は、厚生労働省が策定した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づき、医師がオンライン診療による初診が可能であると判断した患者が対象とされています。
また、オンライン診療を実施する場合、原則として「かかりつけ医」によって初診を行うよう示されています。ただし、医学的情報が十分に把握でき、かつ患者の症状と併せて医師が可能であると判断した場合は、オンライン診療が可能です。
加えて、オンライン診療中に患者の病態に緊急な対応を要するなど、対面診療が必要と判断した場合には、かかりつけ医をはじめ適切な医師及び医療機関への紹介が必要であることを留意しましょう。
オンライン診療の施設基準
「令和4年度診療報酬改定の概要」において、厚生労働省は以下の2点を施設基準として定義しました。
- 情報通信機器を用いた診療を行うにつき十分な体制が整備されている
- オンライン指針に沿って診療を行う体制を有する保険医療機関である
これらは、オンライン診療を行うためのシステムの導入やオペレーションが構築されているかどうかを意味します。オンライン診療の実施に際して、通信機器や通信環境など十分な体制が整えられていることが必須条件といえるでしょう。
また、オンライン診療可能な施設として評価されるには、オンライン指針に沿って診療を実施する体制をとることが必須条件です。オンライン診療を行っていても、対面診療も適切に組み合わせることが求められます。
オンライン診療の算定要件
「令和4年度診療報酬改定の概要」において、オンライン診療の算定要件は以下のとおりです。
- 初診は保険医療機関で行う
- 基準を満たしたオンライン診療を行う
- 保険医療機関に属する保険医が保険医療機関内で行う
- オンライン診療を行った医療機関で緊急時の対応を行う
- 臨機応変に対面での対応を行う
- 厚生労働省が提示する指針に沿う
それぞれについて、詳しく解説します。
初診は保険医療機関で行う
オンライン診療の初診は、保険医療機関において行うことが算定要件です。ただし、「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長等に届け出た保険医療機関において、情報通信機器を用いた初診を行なった場合には、251点を算定する。」と規定されています。
基準を満たしたオンライン診療を行う
情報通信機器を用いた診療は、厚生労働省が策定する「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を基に診療を行った場合に算定されます。また、情報通信機器を用いた診療を行った際には、診療録において診療内容や診療日時の要点の記載が必要です。
オンライン診療では、指針に準じた診療を行い、内容を詳細に記録しておくことが求められます。
保険医療機関に属する保険医が保険医療機関内で行う
情報通信機器を用いた診療では、「原則として保険医療機関に所属する保険医が保険医療機関内で実施すること」と定義されています。
しかし、保険医療機関以外でオンライン診療を実施する際は、厚生労働省が定める「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に準じた診療が行われ、オンライン診療を行った場所を事後に確認できる場所であることが条件です。
オンライン診療を行った医療機関で緊急時の対応を行う
情報通信機器を用いた診療を行う保健医療機関は、患者の急変等の緊急時において、原則として当該保険医療機関が必要な対応を行う必要があります。ただし、やむを得ずに対応できない場合は、患者が速やかに受診できる医療機関で対面診療が行えるよう、事前に受診可能な医療機関について患者への説明が必要です。
また、かかりつけ医がいる場合は当該医師が所属する医療機関の名称、いない場合には対面診療により診療できない理由や紹介先の医療機関名のほか、紹介方法及び患者の同意が必要となります。
臨機応変に対面での対応を行う
「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、情報通信機器を用いた診療を行う際、対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められています。
また、「オンライン診療を行った医師自身では対応が困難な疾患あるいは病態の患者や緊急性の高い状況では、オンライン診療を行った医師がより適切な医療機関に自ら連絡して紹介することが求められる。」とされており、患者の状態に応じて臨機応変な医療連携対応が必要です。
厚生労働省が提示する指針に沿う
情報通信機器を用いた診療を実施する際には、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に準じて診療を行い、当該指針において示される一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状」などを踏まえ、当該診療が指針に準じた適切な診療であったことを診療録、及び診療報酬名作書の摘要欄に記載が必要です。
また、処方時は当該指針や一般社団法人日本医学会連合の「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」など、各種ガイドラインに準じた適切な処方であったことを診療録、及び診療報酬名作書の摘要欄に記載するよう求められています。
まとめ
2022年(令和4年度)の診療報酬改定により、オンライン診療への評価や項目が新設されています。オンライン診療の算定要件は今度も随時改定されていくことが予想されるため、最新情報の確認が大切です。
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この記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属