近年、オンライン診療を導入する医療機関は増加傾向にあります。「オンライン診療を導入したい」と考えているものの、そもそもオンライン診療とは何か、システムを導入するにはどうすればよいのか知らない人もいるでしょう。オンライン診療の導入を検討している人は、自院にとってどのようなメリットやデメリットがあるのか知っておくことも大切です。
本記事では、オンライン診療を導入する方法やメリット、デメリットについて詳しく解説します。
オンライン診療とは?
オンライン診療とは遠隔診療の1つです。スマートフォンやパソコン、タブレットなどのビデオ通話機能を活用して診療を行います。オンライン診療では、触診や聴診ができないため、慢性期疾患の患者を診察する場合は、対面診療と組み合わせて行う必要があるでしょう。
オンライン診療の導入率
総務省の調査によると、オンライン診療を導入している医療機関は、2021年6月末時点で全体の15.0%とされています。2023年8月以降は、診療報酬に係るコロナ特例措置が終了し、音声通話による診療が算定基準に含まれなくなるため、今後ますますオンライン診療の導入が進んでいくことでしょう。
これまで音声通話のみの診療を実施していた医療機関は、ビデオ通話を用いたオンライン診療へと切り替える動きが出てきています。なお、施設別では病院よりも診療所でオンライン診療を導入している傾向にあります。日本オンライン診療研究会の調査によると、オンライン診療を導入している施設の57.1%が診療所である結果となりました。
オンライン診療の受診者層
総務省が発表した「オンライン診療の受診者層」のデータによると、40歳以下が全体の約4分の3を占めています。なかでも、スマホやタブレット、パソコンなどに使い慣れている若い世代は、オンライン診療による受診を希望している傾向にあるようです。
一方で、年代が高くなるほど、対面での診療を希望するケースが多い傾向にあります。そのため、若年層をターゲットとしている診療科であれば、オンライン診療の導入は受診者の増加によい影響をもたらすといえるでしょう。
オンライン診療を導入するメリットとデメリット
オンライン診療の導入が増えているとはいえ、本当に自院に必要なのか判断に迷う人もいるでしょう。ここでは、オンライン診療を導入するメリットとデメリットを紹介しているので、導入の検討材料として参考にしてください。
オンライン診療を導入するメリット
オンライン診療の導入は、患者側だけでなく医療機関側にも大きなメリットをもたらします。これから紹介するメリットを知ることは、自院が抱える課題を解決するきっかけになるでしょう。
治療継続率を高められる
オンライン診療を導入することは、患者の治療継続率を高めることにつながります。仕事や学業で多忙な患者は、まとまった時間がなかなか取れないため、対面診療のみだと負担となるでしょう。また、高血圧やAGA、アレルギー性鼻炎、EDなど継続的な治療を必要とする方にとっては、受診のたび交通費が大きな負担となります。
オンライン診療であれば、時間や場所を問わずに受診できるため、治療離脱を防げるでしょう。患者が治療を継続することで、患者にとっては健康維持につながり、医療機関側にとっては収益の向上につながるでしょう。
診療範囲が広がる
オンライン診療を導入すれば、遠方の患者の診療も可能となり診療範囲が広がります。医院を構える地域だけではなく、全国各地の患者も診療可能になることで受診数の増加へとつなげられるでしょう。オンライン診療が可能な疾患は限定されていますが、自院の診療科が患者のニーズにマッチする場合もあるので、診療範囲を広げられるでしょう。
院内業務を効率化できる
オンライン診療を導入することで、看護師や事務職は患者に直接対応する必要が無くなるため、院内業務の効率化につながります。新型コロナウイルス感染症が収束しないなか、患者が入れ替わるたびに発生する消毒作業も、医療スタッフにとっては負担となるでしょう。
オンライン診療を導入し、消毒作業などの作業負担が軽くなれば、他の業務にあてる時間に余裕が生まれるため、院内全体の業務が円滑に進むようになるでしょう。
院内の混雑を解消できる
オンライン診療の導入は、院内の混雑解消にもつながります。診療所では、土日祝日や週明け、医療機関が定休日のタイミングで患者数が著しく増えて、混雑が発生する傾向にあります。
混雑状況が酷くなれば、待ち時間の長さで患者からクレームを受けることになりかねません。オンライン診療の導入をすることで、医院内の混雑を解消できるため、クレームを未然に防ぎ、医療者の精神的な負担も減るでしょう。
患者の満足度向上につながる
オンライン診療の導入は、患者の満足度向上にもつながります。総務省のアンケート調査によると、患者の約86%(63名中54名)がオンライン診療の評価について「大変満足または概ね満足」と回答しています。そのため、オンライン診療を導入すれば、結果的に医療機関に対するよい評価にもつながるでしょう。
オンライン診療を導入するデメリット
オンライン診療の普及が進んでいるとはいえ、すべての医療機関に適しているとは限りません。ここでは、オンライン診療を導入するデメリットを事前に理解し、自院のニーズとマッチしているか適切に判断しましょう。
画面上での診療が難しいケースがある
オンライン診療が難しいケースとして、触診、聴診が必要な患者の診察が挙げられます。これらの診察は、画面上の情報のみで判断できるものではないため、適切な治療判断が難しいでしょう。他にも、オンライン診療で対応できないケースがあるため、詳しくは厚生労働省が発表している「Ⅲオンライン診療の適切な実施に関する指針等の関連ルール」を一読することがおすすめです。
高齢の患者確保ができない
オンライン診療は若い患者を獲得できる一方、高齢の患者の確保は難しいといえます。前述のとおり、総務省の調査データによると年齢が高くなるほど対面での診療を希望する傾向にあります。特に高齢者はスマートフォンやタブレット端末、パソコンの操作が難しい人が多いうえに、直接医師と会話をしたいと希望する人が多い傾向にあります。そのため、オンライン診療をメインとすれば、高齢の患者の確保につながらないでしょう。
オンライン診療を導入する前に、自院のニーズと合致しているかを把握するために、利用者の年齢層を調査することをおすすめします。
収益性が低い
オンライン診療を導入すると、受診数の向上につながるので、必然的に収益を上げられると考える人もいるでしょう。しかし、診療内容によっては算定点数が低くなってしまうことから、収益性が低くなる可能性があります。
初診料を例とすると、対面とオンラインでは、対面の方が30点ほど高くなっています。また、疾患に対する指導料や管理料も対面の方が高くなります。このように診療内容によっては、収益が低くなる可能性があるので、収益とコストのバランスで考えることが重要です。
オンライン診療の導入方法
オンライン診療の導入で使われるサービスには、オンライン診療システム、LINEやスカイプなどの汎用ソフト、自社開発ソフトがあります。
ここでは、オンライン診療システムの導入方法を解説します。
1.導入に必要な設備を整える
オンライン診療をするときには、パソコンやスマートフォンなどの通信機器以外にも必要な設備があります。例えば、カメラやマイク、インターネット環境です。また、患者の個人情報を守るためセキュリティ対策も必要です。
現在オンライン診療を行っている医療機関の多くは、セキュリティソフトによるセキュリティ対策を実施しています。セキュリティ対策を実施しなくてもオンライン診療は可能ですが、患者からの信頼を得ることや、情報漏えいなどを防ぐ観点からもセキュリティソフトは必須といえるでしょう。
2.システムのセットアップを行う
オンライン診療で必要な機器などをすべて揃えたら、システムのセットアップを行います。まずは、用意した通信機器のセットアップを行い、正常に作動することを確認しましょう。システムのセットアップが完了すれば、用意した通信機器でオンライン診療システムが使えるようになります。
「セットアップの方法がわからない」「機械の扱いが苦手」という場合は、外部委託を視野に入れるのもよいでしょう。
3.オンライン診療研修を受ける
オンライン診療を行うためには、2020年4月以降より厚生労働省が指定するオンライン診療研修を修了することが必須となります。そのため、通信機器の準備が整ったらオンライン診療研修を受けましょう。
この研修を受けなければ、初診料・再診料・外来診察料の算定はできません。研修は全部で5科目あり、講義時間が総計約2時間半、科目ごとに演習問題が10個出題され、すべての科目に合格する必要があります。研修は無料で受けられますが、申し込みをインターネット上でする必要があり、少々手間がかかるかもしれません。しかし申し込みをすれば、オンライン上(e-learning形式)で受講可能なので、移動などの時間的な負担がかからないでしょう。
研修プログラムの受講手続きをする前に、医師等資格確認検索システムに登録しておく必要があります。そのため、まずは登録作業を行っておきましょう。
4.地方厚生局へ施設基準の届出を行う
オンライン診療による診療報酬請求を行うためには、地方厚生局に「基本診療料の施設基準等」の届出をしなければなりません。基本診療料の施設基準には「情報通信機器を用いた診療を行うにつき十分な体制が整備されている」「オンライン指針に沿って診療を行う体制を有する保険医療機関である」の2つが定められています。そのため、まずは自分の医院が施設基準を満たしているか確認しましょう。
施設基準を問題なくクリアできていれば、基本診療料の施設基準等に係る届出書と情報通信機器を用いた診療に係る届出書添付書類を記載して提出しましょう。
5.診療計画書を作成する
オンライン診療をする際には、診療計画書を作成し、患者にオンライン診療をする旨を説明したあとに同意をもらわなければなりません。患者の受診のタイミングに合わせて診療計画書を作成する医師もいますが、診療の混雑によって患者を待たせてしまうため、ひな形を作っておくことをおすすめします。
「作り方がわからない」という方は、日本医師会が作成した「オンライン診療入門~導入の手引~【第1版】」のサンプルを参考にしてください。診療計画書は、文書とメールどちらで患者にお伝えしてもよいとされています。そのため、医療機関でも書面でお渡しするところもあれば、電子媒体(メール)でお渡しするところもあります。双方を比較すると、書面で作成している医療機関が多い傾向にあるようです。電子媒体に慣れていない方はひとまず書面で作成しておくことがおすすめです。
6.スタッフに使用方法を周知する
医師だけが理解している状態でのオンライン診療は、コミュニケーション不足によるトラブルを招きかねません。そのため、オンライン診療の準備が整った段階で、医療スタッフ全員に周知しましょう。高齢のスタッフが多い場合は、オンライン診療に慣れないケースも考えられるため、時間に余裕をもって研修期間を設けることが望ましいでしょう。
なお、複数の医師がオンライン診療を行う場合も、すべての医師でオンライン診療に対して共通認識を持っておくことが大切です。
7.患者向けの説明書を作成する
最後に患者に向けた説明書を作成し、患者にもオンライン診療について説明します。定期受診中の患者には、オンライン診療も対面診療とあわせて活用できるよう、使い方を説明するリーフレットを作成するとよいでしょう。
加えて、自社ホームページにオンライン診療について説明しているページを作成しておくこともおすすめします。患者が当日の診療の流れを理解しておくことで、不安解消につながり、スムーズな診療を実現できるでしょう。
まとめ
新型コロナウイルス感染症の蔓延をきっかけに、徐々にオンライン診療を導入する医療機関が増加傾向にあります。しかし、オンライン診療にはメリットだけではなく、デメリットも存在するため、総合的に判断する必要があります。自院の診療科や利用者の年齢層などを考慮したうえで、オンライン診療の導入を検討しましょう。
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この記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属