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電子カルテは義務化される?2030年の目標と法改正・対応を解説

2026.07.12

電子カルテは義務化される?2030年の目標と法改正・対応を解説

電子カルテの導入を検討する開業医のあいだで、「いずれ義務化されるのか」という疑問が高まっています。国の方針や法改正の動きを正しく理解しておくことが、あわてず備える第一歩になります。

本記事では、電子カルテが本当に義務化されているのか、医療DXという背景、2030年に向けたスケジュールと標準型電子カルテ、クリニックが今から備えるべきことを、わかりやすく解説します。

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電子カルテは義務化されているのか

電子カルテは義務化されているのか

「義務化」という言葉が先行しがちですが、まずは現状を正確に押さえることが大切です。法的な位置づけと、近年定められた国の目標について確認しましょう。

現状は一律の法的義務ではない

結論からいえば、2026年時点で、すべての医療機関に電子カルテの導入を一律に強制する法律はありません。

紙カルテで診療を続けても、それ自体が直ちに違法になるわけではない、というのが現状です。「義務化」という言葉が広まっている背景には、後述する国の普及目標や、診療報酬上の評価の動きがあります。

これらが実質的に導入を強く後押ししているため、義務化に近い感覚で受け止められているのです。

とはいえ、罰則をともなう全面的な義務とは性質が異なります。まずは、現時点では一律の法的義務ではないという事実を正しく理解しておくことが、冷静な判断の出発点になります。

2030年末・普及率約100%という法定目標(医療法改正)

一方で、国は明確な普及目標を掲げています。2025年12月に成立した改正医療法のなかで、2030年(令和12年)末までに電子カルテの普及率を約100%とすることが定められました。

これは単なる努力目標の表明にとどまらず、法律のなかに位置づけられた点が重要です。背景には、全国で診療情報を共有できる基盤を整え、医療の質向上と効率化を進めるねらいがあります。

つまり、個々の医療機関への罰則付きの強制ではないものの、国全体としてはほぼすべての医療機関での導入を前提に制度づくりが進んでいるということです。この目標が、今後の導入を促す大きな流れをつくっています。

義務化が語られる背景(医療DX令和ビジョン2030)

義務化が語られる背景(医療DX令和ビジョン2030)

電子カルテの普及が国を挙げて進められているのは、医療DXという大きな構想があるためです。その中心となる仕組みと、電子カルテが果たす役割を見ていきましょう。

医療DXと全国医療情報プラットフォーム

電子カルテの普及推進は、「医療DX令和ビジョン2030」という国家的な構想の一部です。その柱の一つが、全国医療情報プラットフォームの構築です。

これは、オンライン資格確認の仕組みを土台に、レセプトや健診の情報に加え、電子処方箋や電子カルテの情報を全国規模で共有できる基盤を整える取り組みを指します。

患者の同意のもとで、転院先や災害時の避難先でも過去の診療情報を参照できるようになり、重複した検査や投薬を防げます。

この基盤が効果を発揮するには、各医療機関で診療情報がデジタル化されていることが前提です。だからこそ、電子カルテの普及が国全体の課題として位置づけられています。

電子カルテ情報共有サービス・標準化

全国医療情報プラットフォームを実際に動かす仕組みが、電子カルテ情報共有サービスです。これは、医療機関のあいだで傷病名や検査結果、処方などの診療情報を共有できるようにするものです。

ただし、メーカーごとに電子カルテの記録形式がばらばらでは、情報をそのままやり取りできません。そこで、主要な情報について共通の規格を定める標準化が同時に進められています。

標準化に対応した電子カルテであれば、医療機関どうしの連携がスムーズになり、共有サービスの効果も十分に発揮されます。今後、電子カルテを選ぶ際は、こうした標準規格への対応が重要な判断材料の一つになっていきます。

2030年に向けたスケジュールと標準型電子カルテ

2030年に向けたスケジュールと標準型電子カルテ

2030年の目標に向け、国は具体的な工程を描いて施策を進めています。普及のスケジュールと、その鍵を握る標準型電子カルテの動きを確認しましょう。

工程表と段階的な普及の流れ

電子カルテの普及は、国が示した医療DXの工程表に沿って段階的に進められています。これまでに、オンライン資格確認の導入が原則として義務づけられ、電子処方箋の運用も始まりました。これらは、電子カルテの普及を支える土台となる仕組みです。

さらに、医療機関のあいだで情報を共有する電子カルテ情報共有サービスの整備が進められており、2026年夏までに具体的な普及計画を策定する方針が示されています。

こうした施策を積み重ねながら、遅くとも2030年には、おおむねすべての医療機関で電子カルテを導入する状態を目指す、という流れです。

すでに導入している医療機関には、システムの更新時期に合わせて共有サービスや電子処方箋への対応を促し、未導入の医療機関には新たな導入を後押しする形で、段階的に普及を広げていく計画になっています。

標準型電子カルテの試行・本格実施

普及目標の達成に向けて、特に重要な役割を担うのが標準型電子カルテです。これは、電子カルテがまだ導入されていない診療所などを主な対象に、国が整備を進めているクラウド型のシステムです。

医療DXに必要な機能に絞り込むことで、小規模な医療機関でも過度な負担なく導入できるよう設計されています。全国医療情報プラットフォームへの接続や電子処方箋への対応といった機能が想定されており、すでにモデル事業による試行が始まっています。

国は、この試行の結果を踏まえて改良を重ね、2026年度中の完成を目指しています。

本格的に利用できるようになれば、これまで費用や手間を理由に導入をためらってきた診療所にとっても、選択肢が大きく広がります。今後の動向は、導入を検討するうえで注目しておきたいポイントです。

義務化を見据えてクリニックが備えること

義務化を見据えてクリニックが備えること

一律の義務ではないとはいえ、普及を促す流れは年々強まっています。将来を見据え、クリニックが今のうちから準備しておきたいことを整理しましょう。

診療報酬加算と未導入のリスク

電子カルテの導入は、診療報酬の面からも後押しされています。医療DXに対応した体制を評価する加算が設けられており、2026年度の改定では、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスの活用などを評価する「電子的診療情報連携体制整備加算」へと再編されました。

こうした加算は、電子カルテをはじめとするデジタル環境が整っていることが前提になります。つまり、未導入のままでは、算定できる加算の面で不利になる可能性があるということです。

さらに、医療機関どうしの情報連携が当たり前になっていくなかで、紙カルテのままでは地域の医療連携に乗り遅れる懸念もあります。目先の費用だけでなく、こうした中長期的なリスクも踏まえて判断することが大切です。

クラウド型・標準規格対応の選定

これから電子カルテを選ぶなら、将来の制度の流れに沿った製品を選んでおくと安心です。国はオンプレミス型から廉価なクラウド型への移行を促しており、今後の主流はクラウド型になると見込まれます。

あわせて確認したいのが、医療情報の標準規格に対応しているかどうかです。標準化に対応した製品であれば、電子カルテ情報共有サービスとの連携もスムーズで、後から大きな改修費用がかかる事態を避けやすくなります。長く使うことを前提に、制度対応の見通しが立つ製品を選びましょう。

補助金の活用

導入費用の負担を軽くするには、補助金の活用も有効です。中小企業や小規模事業者のITツール導入を支援する制度は、2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」へと名称が変わり、電子カルテが対象となる場合があります。

医療機関向けには医療情報化支援基金といった支援もあります。対象や金額は年度ごとに変わるため、最新の公募内容を確認しておきましょう。

早めの導入がもたらすメリット

電子カルテの導入を、義務化への対応というだけで後ろ向きにとらえる必要はありません。むしろ、早めに導入することには多くのメリットがあります。

まず、日々の業務効率が大きく改善します。過去の経過や検査結果をすぐに呼び出せるため、診療がスムーズになり、紙カルテの保管や検索にかかる手間も減ります。

会計や請求との連携によって、転記ミスや作業の重複も抑えられます。記録や事務にかかる時間が減れば、スタッフの残業や持ち帰り仕事の軽減につながり、働きやすい職場づくりや離職対策の面でも効果が期待できます。

次に、医療DXの基盤に早くから乗れる点も見逃せません。電子カルテ情報共有サービスや電子処方箋と連携することで、地域の医療連携に参加しやすくなり、患者により安全で切れ目のない医療を提供できます。

早く導入してシステムに慣れておけば、制度が本格化したときにあわてず対応できるという安心感もあります。

さらに、電子カルテは単体ではなく、予約や問診、オンライン診療といった周辺システムとつながって初めて、その効果を最大限に発揮します。予約から問診・オンライン診療・決済までをLINEやWebで一体化できるmarchのような仕組みとあわせて整えておけば、受付から診療後までの流れがまとまり、患者にもスタッフにも負担の少ない運用が実現します。

義務化を待って動くのではなく、自院のペースで早めに準備を進めることが、結果として大きな強みになります。

まとめ

電子カルテは現時点で一律に法的義務化されているわけではありませんが、2025年12月の医療法改正で2030年末・普及率約100%という目標が示され、導入を推進する流れは明確です。

医療DXや全国医療情報プラットフォームと一体で標準化が進むなか、未導入のままでは加算や医療連携で不利になる可能性もあります。クラウド型・標準規格対応の電子カルテと周辺システムの連携を見据え、早めの準備が安心につながります。

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この記事の監修者

監修者尾崎 功治

2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。

日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属