電子カルテの導入を検討するとき、まず迷うのが「どの種類を選べばよいか」という点ではないでしょうか。種類ごとに費用や運用の仕方が異なり、自院に合うものを見極めることが欠かせません。
本記事では、提供形態や構造による分類、オンプレミス型・クラウド型・ハイブリッド型それぞれの特徴、国が進める標準型電子カルテ、自院に合う種類の選び方を、クリニックの視点から解説します。
最短10秒、かんたん電子カルテの種類の全体像
ひとくちに電子カルテといっても、その分け方はいくつかあります。まずは全体像として、提供形態と構造という二つの切り口で、どんな種類があるのかを整理しておきましょう。
提供形態による分類
電子カルテは、データをどこに保存し、どう利用するかという提供形態によって大きく3つに分かれます。1つ目は、院内にサーバーを設置する「オンプレミス型」です。2つ目は、インターネットを通じて事業者のサーバー上のシステムを利用する「クラウド型」です。
そして3つ目が、両者の特徴を組み合わせた「ハイブリッド型」になります。それぞれ初期費用やカスタマイズ性、災害への強さなどに違いがあり、どの形態を選ぶかが導入後の運用を大きく左右します。
まずはこの3つの違いを押さえておくことが、種類選びの出発点です。
構造による分類
もう一つの分け方が、レセプトコンピュータ(レセコン)との関係による分類です。レセコンは、診療報酬を計算して請求するためのシステムで、電子カルテと密接に連携します。
電子カルテとレセコンが一つになった「一体型」は、カルテの内容がそのまま会計に反映され、入力の手間や転記ミスを減らせるのが利点です。
一方、それぞれを別の製品として組み合わせる「分離型」は、すでに使っているレセコンを活かせたり、機能ごとに最適な製品を選べたりする柔軟さがあります。提供形態と構造、この二軸を組み合わせて自院に合う一台を考えていくことになります。
オンプレミス型電子カルテ

従来から多くの医療機関で使われてきたのがオンプレミス型です。自院でサーバーを管理する仕組みならではの強みと弱みを、どんな医療機関に向いているかとあわせて見ていきましょう。
仕組みとメリット
オンプレミス型は、電子カルテのデータを保存するサーバーを、院内に設置して運用する方式です。最大の強みは、自院の診療スタイルに合わせて細かくカスタマイズできる点にあります。
診療科ごとの独自の運用や、特殊な検査・処置の記録にも柔軟に対応しやすく、機能を作り込みたい医療機関に向いています。また、システムが院内のネットワークで完結するため、インターネットの接続状況に左右されにくいのも利点です。
通信トラブルで診療が止まるリスクが小さく、安定した動作を求める現場では安心感があります。長年の実績がある方式で、大規模病院を中心に広く採用されてきました。
デメリット・向いている医療機関
一方で、オンプレミス型には負担も少なくありません。サーバーなどの機器を自前でそろえる必要があるため、初期費用が高額になりやすく、設置スペースも求められます。導入後も、保守やメンテナンス、定期的な機器の更新に費用がかかります。
さらに、サイバーセキュリティ対策やデータのバックアップ、システム障害への備えを自院で担わなければならず、IT人材の確保が課題になることもあります。
こうした特徴から、オンプレミス型は、独自性の高い運用が必要な医療機関や、十分な予算と管理体制を確保できる中〜大規模の病院に向いた方式といえます。
クラウド型電子カルテ

近年、急速に広がっているのがクラウド型です。インターネットを介して使う手軽さから新規開業でも選ばれることが増えています。その仕組みと特徴を、向き不向きとあわせて確認しましょう。
仕組みとメリット
クラウド型は、院内にサーバーを置かず、インターネットを通じて事業者が管理するサーバー上のシステムを利用する方式です。
複数の医療機関が同じ基盤を共同で使う形のため、自前でサーバーを構築するオンプレミス型に比べ、初期費用を大きく抑えられるのが最大の魅力です。
開業時や小規模なクリニックでも導入しやすく、月額制で予算を立てやすい点も支持されています。インターネット環境さえあれば場所を問わず使えるため、在宅医療やオンライン診療との相性がよく、システムを院外へ持ち出せるのも強みです。
データは外部のデータセンターに保管されるため、災害時にも情報を守りやすく、機能のアップデートが自動で行われ、制度改定への対応もスムーズです。こうした利便性から、近年はクラウド型のシェアが着実に伸びています。
デメリット・向いている医療機関
便利なクラウド型にも、注意すべき点はあります。インターネット回線を前提とするため、通信障害や停電でネットにつながらないと、電子カルテが使えなくなる恐れがあります。安定した回線の確保や、万一に備えた運用ルールを決めておくことが欠かせません。
また、データを外部のサーバーに預ける形になるため、信頼できる事業者を選び、セキュリティ体制を確認しておく必要があります。カスタマイズの自由度はオンプレミス型ほど高くなく、独自の細かな運用には合わない場合もあります。
とはいえ、標準的な機能で十分なクリニックにとっては、こうした制約より導入のしやすさが上回ることが多いでしょう。費用を抑えて始めたい開業医や、在宅・オンライン診療を行う医療機関に特に向いた方式です。
ハイブリッド型・レセコン一体型/分離型

オンプレミスとクラウドの中間にあたるハイブリッド型や、構造による一体型・分離型の違いも、種類選びでは押さえておきたいポイントです。それぞれの特徴を整理します。
ハイブリッド型の特徴
ハイブリッド型は、オンプレミス型とクラウド型のよいところを組み合わせた方式です。たとえば、ふだんは院内のサーバーで運用しつつ、データのバックアップや一部の情報共有をクラウド上で行う、といった使い方が考えられます。
これにより、オンプレミス型の安定性やカスタマイズ性を保ちながら、クラウドならではの災害対策や外部からのアクセスといった利点も取り入れられます。
一方で、二つの仕組みを併用する分、構成が複雑になり、費用や運用管理の負担が増えやすい面もあります。それぞれの強みを生かしたい医療機関にとっては有力な選択肢ですが、自院に本当に必要な構成かを見極めることが大切です。
レセコン一体型と分離型の違い
構造の面では、レセコンと一体になっているか、分かれているかで使い勝手が変わります。一体型は、電子カルテとレセコンが同じシステムにまとまっており、診療内容を入力すれば会計や請求にそのまま反映されます。
二重入力や転記ミスを減らせるため、業務効率を重視するクリニックに向いています。分離型は、電子カルテとレセコンを別々の製品として組み合わせる方式です。
すでに使い慣れたレセコンを継続して活用できるほか、それぞれの分野で評価の高い製品を選べる柔軟さがあります。ただし、両者の連携設定が必要になる点には留意が必要です。どちらが適しているかは、既存のシステムや重視するポイントによって変わってきます。
標準型電子カルテと種類の選び方

電子カルテの種類を考えるうえで、国が整備を進める標準型電子カルテの動きも見逃せません。最新の方針を踏まえつつ、自院に合う種類を選ぶための視点を整理しましょう。
国が進める標準型電子カルテとは
標準型電子カルテとは、国が医療DXの一環として整備を進めている、共通仕様にもとづくクラウド型の電子カルテです。
電子カルテがまだ導入されていない診療所などを主な対象とし、医療DXに必要な機能に絞ることで、小規模な医療機関でも過度な負担なく導入できるよう設計されています。
全国で診療情報を共有する基盤への接続や、電子処方箋への対応といった機能が想定されており、モデル事業を経て2026年度中の完成が目指されています。
国は、おおむねすべての医療機関での電子カルテ導入を2030年に向けて進めており、今後の種類選びでは、こうした標準化や情報共有への対応も判断材料の一つになります。最新の動向を確認しておくと安心です。
自院に合う種類の選び方
自院に合う種類を選ぶには、まず何を重視するかを整理することが大切です。初期費用を抑えて手早く始めたいならクラウド型、独自の運用を作り込みたいならオンプレミス型、というように、優先順位によって適した形態は変わります。
あわせて、診療科や患者層、スタッフのITへの習熟度も考慮しましょう。操作のしやすさは日々の負担に直結するため、導入前にデモやトライアルで実際に試しておくと安心です。
費用は初期費用と月額のバランスで比べ、サポート体制やデータの互換性まで含めて総合的に判断することをおすすめします。
周辺システムとの連携で選ぶ
電子カルテは単体ではなく、ほかの業務システムとつながって効果を発揮します。予約や問診、会計、オンライン診療といった周辺システムと連携できるかは、種類選びの重要な視点です。
予約から問診・オンライン診療・決済までをLINEやWebで一体化できるmarchのような仕組みと組み合わせれば、現場の運用がぐっと楽になります。
まとめ
電子カルテの種類は、提供形態ではオンプレミス型・クラウド型・ハイブリッド型、構造ではレセコン一体型・分離型に分かれます。初期費用やカスタマイズ性、災害対応などそれぞれに特徴があり、近年は標準化との親和性が高いクラウド型が広がっています。
種類の違いを理解したうえで、自院の診療スタイルや、予約・オンライン診療などの周辺システムとの連携まで見据えて選ぶことが大切です。
最短10秒、かんたんこの記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属


