令和4(2022)年度の診療報酬改定では、「情報通信機器を用いた診療」に係る施設基準の届出によって、オンライン診療の継続が可能となりました。患者だけでなく医療機関にもメリットがあることから、新たに導入を検討する医師や医療機関も多いのではないでしょうか。
この記事では、オンライン診療を始めるにあたって必要な施設基準と届出について、詳しく解説します。
オンライン診療とは?
オンライン診療とは、パソコンやタブレットなどの情報通信機器を用いて行う診療形態を指します。患者の診察や服薬指導をオンライン上で実施可能とする遠隔医療サービスです。
オンライン診療の定義
厚生労働省によるオンライン診療の定義は、次のとおりです。
「遠隔医療のうち、医師―患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為」
引用元:厚生労働省|オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針
簡単にいうと、パソコンやスマートフォンなど、リアルタイムで通信が可能な情報通信機器を活用することで、医師による診療行為を受けられるのがオンライン診療です。患者は自宅から受診できるため、体力・心理的な負担が少なく済むメリットがあります。
オンライン診療のみでの開業はできる?
オンライン診療に関する所定の届出が受理されれば、オンライン診療のみでも開業できます。ただし、オンライン診療の施設基準の1つである「対面診療を行える体制である」を満たさないといけません。
そのため、オンライン診療のみでの開業を検討していても、開業時にはオンライン診療だけでなく対面診療を行える体制を整え、条件を満たすことが必要です。開業を進める前に、オンライン診療の施設基準に準じた体制を整えているか確認しましょう。
オンライン診療を始める前にクリアすべき施設基準とは
オンライン診療を始める前に、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針(オンライン指針)」に準じた体制を整える必要があります。ここでは、オンライン診療を扱う医療機関として評価されるための施設基準を詳しく紹介します。
情報通信機器を用いた診療を行う際に十分な体制が整備されている
オンライン診療を始める場合は、オンライン診療を行うためのシステムの導入やオペレーションが構築されていることが必須条件です。
以下にオンライン指針における基準の詳細をまとめました。
- 保険医療機関外で診療を実施することが想定される場合は、実施場所がオンライン指針に該当し、事後的に確認できる
- 対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められていることを踏まえ、対面診療を提供できる体制を有する
- 患者の状況に応じ当該保険医療機関での対面診療が困難な場合は、他の保険医療機関と連携し対応できる
なお、オンライン診療を行うに際して、通信機器や通信環境など十分な体制が整えられているかの確認が必要です。
オンライン指針に沿って診療を行う体制を有する保険医療機関である
オンライン診療可能な施設として評価されるには、対面診療も適切に組み合わせて行うことが求められています。
また、医師が自身での対応が難しい病態の場合や緊急性のある状態については、オンライン診療を行った医師が適切な医療機関へ連絡し紹介する必要があります。そのため、オンライン診療であっても、他の医療機関と連携して対応できる体制を整えることが必須条件です。
診療報酬における算定要件について
オンライン診療として評価を受けるためには、一定の施設基準を満たし、診療報酬における算定要件を満たす必要があります。以下は、オンライン診療における初診時の算定要件を要約したものです。
- 施設基準を満たしている旨を書類で地方厚生局長等に届出を行う
- 厚生労働省による「オンライン指針」に準じて診療を行う場合※診療内容や診療日時の要件を診療録へ記載が必要
- 原則として保険医療機関に所属している保険医が保険医療機関内で実施する
- 急変時には必要な対応が行える※対応できない場合は、他の医療機関へ医師が紹介
- 対面診療の体制があり、患者の状況に応じて他の医療機関と連携する
- 厚生労働省「オンライン指針」をはじめとした各ガイドラインに沿って診療を行い、当該診療が指針に沿ったものであることを診療録及び診療報酬明細書の摘要欄へ記載
- 予約料の徴収は不可
- オンライン診療における情報通信機器の運用費は、療養の給付と直接関係のない「サービス等の費用」として別途徴収が可能
主に、施設基準の届出や診療録への記載、緊急時の対応、予約料・情報通信機器の運用費についての算定要件が定められています。これらの算定要件をクリアすると、オンライン診療が行える施設として評価を受けることが可能です。
オンライン診療の開始・継続に必要な届出は2つ
オンライン診療の開始あるいは継続には、開始の旨と診療実績を証明する書類の届出が必要です。ここでは、実際にオンライン診療を開始する場合と、継続する場合に必要な2つの届出について解説します。
開始時|オンライン診療開始の旨の届出
オンライン診療を始める際は、オンライン診療開始の旨を書類にて届出を行う必要があります。必要な書類は、「基本診療料の施設基準等に係る届出書」及び「情報通信機器を用いた診療に係る届出書添付書類」です。
これらの書類には、実施する医療機関の場所や所定のオンライン診療の研修が修了した日付などを記載する項目があり、届出書に記載のある基準をすべて満たしていることが条件となります。また、届出書は保険医療機関として違反している点や不当な行為などがないかを判断するための材料となるため、オンライン診療開始の際には項目を押さえた準備が必要です。
継続時|オンライン診療の診療実績の届出
すでにオンライン診療を始めており、診療報酬改定に伴い継続したいという場合は、「情報通信機器を用いた診療に係る報告書」を用い、施設のある各地方厚生(支)局へオンライン診療の診療実績の届出が必要です。
この届出は、前年の7月1日もしくは「情報通信機器を用いた診療」に係る届出を行って以降~当年6月30日の診療実施状況を記載しなくてはなりません。また、情報通信機器を用いた診療実施状況や診療の件数について、過去12ヶ月間に遡って記載が必要です。具体的には、対面診療で実施した診療の算定件数や情報通信機器を用いた診療の算定件数など、詳細な実績の届出が求められます。
施設基準の届出を提出する方法
オンライン診療を開始する際、また継続する際にはそれぞれ届出が必要であることを解説しました。ここからは、施設基準に関する届出を提出する方法について説明します。
書類をダウンロード
オンライン診療における施設基準の届出を行うには、まず以下の書類が必要となります。
別添7 基本診療料の施設基準等に係る届出書
様式1 情報通信機器を用いた診療に係る届出書添付書類
上記の書類は、各地方厚生(支)局のホームページからダウンロード可能です。オンライン診療を利用したい施設の所在地に応じ、各地方厚生(支)局のホームページにて確認してください。
作成した書類を最寄りの地方厚生(支)局へ提出
オンライン診療開始における2つの必要書類をダウンロード・印刷後、必要事項を記入して書類を作成します。その際は注意すべき項目があります。
「別添7 基本診療料の施設基準等に係る届出書」は以下の項目に注意が必要です。
- 不正または不当な届出を行ったことがない
「様式1 情報通信機器を用いた診療に係る届出書添付書類 」は以下の項目に注意しましょう。
- 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に準じて診療を行う体制があること
- 対面診療を行う体制があること
- 厚生労働省が定めるオンライン診療研修を修了していること
上記の項目にチェックを入れ、書類を完成させましょう。書類の記載が完成したら、当該施設の管轄となる地方厚生(支)局へ提出します。提出をもって施設基準に係る届出は完了です。
オンライン診療を導入するメリット
オンライン診療導入による患者側のメリットには、待ち時間の短縮や感染症予防といったものがあります。一方で、医療機関側が得られるメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
ここからは、オンライン診療によって医療機関側が得られるメリットを3つ解説します。
新患獲得につながる
1つ目は、病院との距離や予約のしやすさなど、患者側が受診の際に抱える問題が解決し、新規患者が増えやすくなることです。オンライン診療によって患者と医療機関との物理的問題が解決し、遠方に住む患者も獲得しやすくなるでしょう。
オンライン診療の導入により時間・物理的な問題が解決することで新患獲得へのハードルが下がります。このようにオンライン診療は、医療機関と患者の架け橋となるでしょう。
患者の通院継続率が上がる
2つ目は、患者の通院継続率が上がることです。通院継続を妨げる要因には、患者の体力的な問題や施設との距離的な問題、診療時間との時間的な問題が挙げられます。これらの問題の解決策として、オンライン診療の導入が有効でしょう。
例えば、「体調不良で受診したいが通院する体力がない」、「仕事や家事が忙しく距離・時間的に通院できない」といった患者の場合であれば、オンライン診療が利用できると普段慣れ親しんだかかりつけ医療機関をより受診しやすくなると考えられます。
医療スタッフの業務負担を軽減できる
3つ目は、オンライン診療導入により、医療事務員や看護師による院内での患者フォロー業務が軽減されることです。例えば、車椅子での通院が必要な患者が来院される場合、医療スタッフによるサポートが必要になります。また、感染症防止のために院内のこまめな消毒や清掃に時間をかけている医院もあるでしょう。
このような医療スタッフの業務負担は、オンライン診療の導入により解決できるでしょう。オンライン診療により空いた時間を他の院内業務へ回すことで、業務改善が行えます。
まとめ
オンライン診療を始めるには、厚生労働省が定める施設基準を満たし、所定の届出を行う必要があります。現段階でオンライン診療を導入していない医療機関も、導入に必要な準備を行い、オンライン診療を取り入れることが可能です。対面診療のみではカバーしづらい新規患者の獲得や院内業務の改善、また通院継続率の向上には、オンライン診療の導入が役立つでしょう。
これからオンライン診療システムの導入を考えている方は、ぜひ「march」をご検討ください。診療予約・問診・決済・処方薬配送までを一元化できるシステムであり、簡単にオンライン診療の導入が可能です。オンライン診療の導入を検討している人は、この機会にぜひご利用ください。
無料トライアルのお申込
- オンライン診療の進め方
- 医療機関様にあったサービスのご利用方法のご提案
- 実際のサービスを見ていただけます
※医療DXのプロが貴社にあった導入方法をご提案 担当者よりサービス内容のご案内をさせていただきます。
この記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属