電子処方箋を導入したクリニックが患者を薬局へ案内するには、薬局側でどう薬が渡るのかを理解しておくことが欠かせません。流れをつかんでおけば、患者への説明や薬局との連携もスムーズになります。
本記事では、発行後の全体の流れ、患者が薬局で薬を受け取るまでの流れ、医療機関と薬局の連携、クリニックが押さえておきたいポイントまでを解説します。
最短10秒、かんたん電子処方箋発行後の全体の流れ
電子処方箋は、発行された後にどのような経路をたどって薬局に届くのでしょうか。まずは、システム上のデータの動きという視点から、全体の流れをつかんでおきましょう。
医療機関での発行から薬局での調剤まで
電子処方箋の流れは、医療機関での処方情報の登録から始まります。医師が処方内容を入力し、電子署名を付けて登録すると、処方情報は電子処方箋管理サービスに保存されます。これは、国が運営する全国共通の仕組みです。
患者が薬局を訪れると、薬局は管理サービスへアクセスし、処方情報を取得します。紙の処方箋のように、患者が原本を持参したり、医療機関が薬局へ郵送したりする必要はありません。
薬局は取得した処方情報をもとに調剤を行い、完了後は調剤結果を管理サービスへ登録します。このように、医療機関と薬局が同じ処方情報を共有しながら、処方から調剤までの流れが進む点が電子処方箋の特徴です。
引換番号・マイナンバーカードの役割
薬局が患者の処方情報を取得する際に利用するのが、引換番号とマイナンバーカードです。電子処方箋を発行すると、患者には「処方内容(控え)」が渡され、そこに薬局で使用する引換番号が記載されています。
患者が薬局で引換番号を伝えると、薬局は該当する処方情報を電子処方箋管理サービスから取得できます。また、マイナンバーカードを利用する方法もあります。薬局で本人確認を行えば、引換番号を提示せずに処方情報を確認することが可能です。
マイナンバーカードを利用する場合、過去の薬剤情報の提供に同意することで、重複投薬の確認など、より安全な調剤にも役立ちます。
患者には、処方内容(控え)を持参する方法と、マイナンバーカードを利用する方法を事前に案内しておくと、薬局での受け取りもスムーズになります。
患者が薬局で薬を受け取るまでの流れ

次に、患者が実際に薬局の窓口で行う手続きを見ていきましょう。受付の方法から、調剤、服薬指導、調剤結果の登録まで、現場での具体的な流れを追っていきます。
引換番号やマイナカードでの受付
患者が薬局に到着したら、まず処方情報を確認するための受付を行います。受付方法は、引換番号を利用する方法と、マイナンバーカードを利用する方法の2つがあります。
引換番号を利用する場合は、クリニックで受け取った「処方内容(控え)」に記載された番号を薬局へ伝えます。
薬局は、健康保険証などの情報とあわせて引換番号を確認し、電子処方箋管理サービスから該当する処方情報を取得します。マイナンバーカードを持参していない患者でも利用できるため、電子処方箋を初めて使う場合にも案内しやすい方法です。
もう一つの方法が、マイナンバーカードを利用した受付です。薬局に設置された顔認証付きカードリーダーにカードをかざして本人確認を行うと、薬局は処方情報を取得できます。その際、過去の薬剤情報や特定健診情報を提供するかどうかは、患者自身が選択できます。
どちらの方法でも、必要な情報を準備しておけば受付はスムーズに進みます。患者が迷わないよう、クリニック側で受け取り方法を事前に説明しておくとよいでしょう。
調剤・服薬指導・調剤結果の登録
受付で処方情報を取得した後、薬剤師が調剤を行います。電子処方箋では、管理サービスに蓄積された過去の処方情報や調剤情報を確認できるため、他院で処方された薬との重複や飲み合わせの確認にも役立ちます。
調剤が完了すると、薬剤師による服薬指導が行われます。薬の正しい飲み方や注意点を説明し、患者の疑問や不安を解消する重要な工程です。服薬指導は、状況に応じて対面だけでなくオンラインで実施できる場合もあります。
薬の受け渡し後、薬剤師は調剤結果を電子処方箋管理サービスへ登録します。この情報により、患者が実際に受け取った薬の内容が記録され、今後の診療や調剤時の確認にも活用できます。処方から調剤までの情報が一貫して管理されることで、より安全で効率的な薬物療法につながります。
電子処方箋による医療機関と薬局の連携

電子処方箋の価値は、医療機関と薬局が処方の情報を共有できる点にあります。安全性を高めるチェック機能と、患者の薬の情報の活用という観点から、その連携を見ていきましょう。
重複投薬・併用禁忌チェックの共有
電子処方箋では、重複投薬や併用禁忌のチェックを医療機関と薬局の双方で行える点がメリットです。電子処方箋管理サービスには、患者の過去の処方・調剤情報が一定期間蓄積されています。
医師は処方時に、薬剤師は調剤時にその情報を確認し、同じ効果を持つ薬が重複していないか、併用に注意が必要な薬が含まれていないかをチェックできます。複数の医療機関や薬局を利用している患者でも、過去の処方状況を踏まえた確認が可能です。
紙の処方箋やお薬手帳だけでは把握しきれなかったリスクにも気づきやすくなり、医師と薬剤師による二重の確認体制を整えられます。処方の安全性を高め、より適切な薬物療法を支える仕組みといえるでしょう。
電子版お薬手帳・薬剤情報の活用
電子処方箋は、電子版お薬手帳との連携にも活用できます。患者がマイナンバーカードとマイナポータルを連携すると、処方や調剤の履歴をスマートフォンで把握できるようになります。
紙のお薬手帳のように持ち歩く必要がなく、記入漏れや紛失のリスクを減らせる点もメリットです。患者自身が服用している薬を管理しやすくなり、市販薬を購入する際の飲み合わせの判断にも役立ちます。
また、患者の同意があれば、医療機関でも薬剤情報を参照でき、より適切な処方判断につなげられます。
かかりつけ以外の医療機関を受診した場合や、災害時など薬の情報が必要な場面でも、蓄積されたデータが活用できます。処方情報を継続的に共有・活用できることが、切れ目のない医療提供を支えます。
クリニックが押さえておきたい連携のポイント

薬局との連携を円滑にするには、クリニック側での対応も重要になります。患者への案内の仕方や、トラブルが起きたときの対処など、押さえておきたいポイントを確認しましょう。
患者への案内・処方内容控えの渡し方
薬局での受け取りをスムーズにするには、クリニックでの患者への案内が欠かせません。会計時に「処方内容(控え)」を渡す際は、記載されている引換番号が薬局で必要になることを説明しておくと安心です。
また、マイナンバーカードを利用すれば、引換番号を提示せずに処方情報を取得できることもあわせて伝えましょう。特に、電子処方箋を初めて利用する患者は、紙の処方箋との違いに戸惑うケースもあるため、受け取り方法を丁寧に案内することが大切です。
なお、患者が希望する薬局が電子処方箋に対応しているとは限りません。未対応の薬局を利用する場合は、紙の処方箋へ切り替えるなど、状況に応じた対応が必要です。受付や会計を担当するスタッフ間で説明内容を統一しておくことで、患者の混乱を防げます。
疑義照会・トラブル時の対応
薬剤師が処方内容に疑問を持った場合は、処方した医師へ確認する疑義照会が行われます。
電子処方箋でも、このやり取り自体は電話など従来の方法で行われるため、薬局からの問い合わせに対応できる体制を整えておくことが重要です。スムーズな連携のために、薬局からの連絡先や院内の対応窓口を明確にしておきましょう。
また、システム障害や通信トラブルへの備えも欠かせません。電子処方箋の利用が一時的に難しくなった場合に備え、紙の処方箋へ切り替える手順など、代替対応をあらかじめ決めておくと安心です。
患者を薬局で待たせる事態を防ぐためにも、トラブル発生時の対応方法をスタッフ間で共有しておくことが大切です。日頃から連携する薬局と情報交換を行い、協力体制を築いておくことで、万が一の際にも柔軟に対応できます。
オンライン診療と電子処方箋・薬局連携

電子処方箋は、オンライン診療との組み合わせによって、診察から薬の受け取りまでの流れをよりスムーズにできる仕組みです。オンライン診療では患者が来院しないため、従来は処方箋情報をFAXやメールで薬局へ送付し、紙の原本を後から郵送する必要がありました。
電子処方箋を活用すると、医師が発行した処方情報は電子処方箋管理サービスを通じて薬局へ共有されます。そのため、紙の処方箋を郵送する手間がなくなり、患者はオンライン診療後に対応する薬局で薬を受け取るか、自宅への配送を選択できます。
さらに、薬剤師によるオンライン服薬指導を組み合わせれば、診察・処方・服薬指導・薬の受け取りまでを自宅で完結することも可能です。医療機関と薬局が処方情報を共有しながら連携することで、患者の移動負担を減らし、より利便性の高い医療提供につながります。
こうした一連の流れを効率よく運用するには、予約や問診、オンライン診療、決済までをまとめて管理できる仕組みも重要です。予約から診療、会計までをLINEやWebで一元化できるmarchのようなシステムを活用すれば、電子処方箋やオンライン資格確認と組み合わせながら、患者が利用しやすい診療体制を整えられます。
オンライン診療、電子処方箋、薬局との連携を個別に考えるのではなく、患者が受診から服薬までスムーズに進められる環境を一体的に整備することが、これからの医療DXでは重要になります。
まとめ
電子処方箋では、処方情報が電子処方箋管理サービスを介して薬局へ共有され、患者は引換番号やマイナンバーカードを利用して薬を受け取ります。医療機関と薬局が重複投薬・併用禁忌のチェックや薬剤情報の共有を行えるため、より安全な薬物療法につながります。
クリニックでは、患者への案内方法や疑義照会、トラブル発生時の対応体制を整えておくことが大切です。オンライン診療との組み合わせも視野に入れ、患者が受診から服薬までスムーズに進められる環境を整備しましょう。
最短10秒、かんたんこの記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属

