会計時の現金対応に手間を感じたり、患者から「カードは使えますか」と聞かれたりする機会が増え、キャッシュレス決済の導入を検討するクリニックが増えています。一方で、手数料や導入時の負担が気になり、踏み切れないケースも少なくありません。
本記事では、クリニックにおけるキャッシュレス決済の種類や導入状況、メリット・デメリット、導入方法、自院に合った決済手段の選び方まで解説します。
最短10秒、かんたんクリニックのキャッシュレス決済とは
クリニックのキャッシュレス決済は、患者の支払いを便利にするだけでなく、受付業務の効率化にも役立つ仕組みです。まずは、利用される主な決済方法と医療機関での導入状況を確認しておきましょう。
キャッシュレス決済の種類
キャッシュレス決済とは、現金を使わずに支払いを行う方法の総称です。医療機関で導入される代表的なものは、主に3種類あります。
1つ目は、クレジットカードやデビットカードです。後払いまたは即時払いで利用でき、高額になりやすい自由診療にも対応しやすいため、比較的導入が進んでいます。
2つ目は、電子マネーです。交通系ICカードやチャージ式の決済方法があり、端末にかざすだけで支払える手軽さが特徴です。
3つ目は、PayPayなどのQRコード決済です。スマートフォンのアプリを使って支払う方式で、導入コストを抑えやすく、若い世代を中心に利用が広がっています。
実際には、1つの決済手段に限定せず、複数の方法を組み合わせて導入するケースが一般的です。
医療機関での導入状況
医療機関におけるキャッシュレス決済は、ほかの業種と比べて普及が遅れてきました。
2019年の厚生労働省の調査では、導入率はクレジットカードで約17%、電子マネーで約2%、QRコード決済はわずかな割合にとどまっています。背景には、保険診療では支払額が比較的安定していることや、決済手数料への懸念などがあります。
しかし近年では、状況が変化しています。国全体でキャッシュレス化が進むなか、新型コロナウイルスの流行をきっかけに、接触機会を減らせる決済方法として注目が集まりました。
総合病院や大学病院を中心に導入が進み、クリニックでも検討する動きが広がっています。未導入の医療機関でも導入に前向きな意向が見られ、今後さらに普及が進むと考えられます。
キャッシュレス決済を導入するメリット

キャッシュレス決済の導入は、クリニックの運営と患者の双方に利点をもたらします。業務面から患者サービスまで、代表的なメリットを見ていきましょう。
会計業務の効率化・待ち時間短縮
キャッシュレス決済の大きなメリットは、会計業務を効率化できる点です。現金対応では、釣り銭の準備や受け渡し、レジの現金確認といった作業に手間がかかります。
キャッシュレス化によって、こうした業務負担を減らせるほか、釣り銭の渡し間違いや金額の確認ミスも防ぎやすくなります。会計処理がスムーズになれば、患者の待ち時間短縮にもつながります。
特に混雑しやすい時間帯では、受付業務の負担軽減を実感しやすいでしょう。スタッフが会計以外の業務に対応しやすくなり、クリニック全体の運営効率向上にも役立ちます。
患者の利便性・集患・差別化
患者にとっても、キャッシュレス決済は利便性の高い支払い方法です。現金の持ち合わせを気にせず受診でき、高額になりやすい自由診療でもスムーズに支払えます。ポイント還元などを魅力に感じる患者もいるでしょう。
こうした利用しやすさは、患者満足度の向上にも影響します。また、支払い方法の選択肢が多いことは、受診先を選ぶ際の判断材料にもなります。
まだキャッシュレス対応が十分に進んでいない医療機関もあるため、導入していること自体が他院との差別化につながる可能性があります。
感染対策・未収金対策
非接触で支払えるキャッシュレス決済は、感染対策の面でもメリットがあります。現金の受け渡しを減らせるため、患者とスタッフ双方の安心感につながります。
また、決済がその場で完了することで、後日支払いになるケースを減らし、未収金の防止にも役立ちます。確実に会計を完了できる仕組みは、クリニックの安定した運営を支える大切なポイントです。
導入のデメリット・注意点

多くのメリットがある一方で、キャッシュレス決済の導入には費用や運用面の注意点もあります。導入前に理解しておきたいポイントを確認しましょう。
手数料・入金サイクル
キャッシュレス決済で特に気になるのが、決済手数料です。患者が支払った金額に応じて、一定割合の手数料を決済事業者へ支払う必要があります。
料率はサービスによって異なりますが、一般的には決済額の2〜3%程度が目安です。近年では、医療機関向けの料金設定を用意する事業者もあり、1.5%前後で利用できる場合もあります。
ここで確認しておきたいのが、保険診療における手数料の対象です。手数料が発生するのは、患者が窓口で支払う自己負担額であり、診療報酬全体ではありません。自己負担が原則3割であることを考えると、実際の負担額は料率から受ける印象より小さくなります。
もう一つ注意したいのが、入金のタイミングです。現金払いとは異なり、売上が口座へ反映されるまでには時間がかかります。入金サイクルは月1〜2回などサービスごとに異なるため、資金繰りへの影響も含めて事前に確認しましょう。
導入費用・運用面のポイント
手数料だけでなく、導入時や運用時に発生する費用も確認が必要です。決済端末の購入・レンタル費用や、月額利用料がかかる場合があります。
初期費用が無料のサービスもあれば、端末代が必要なものもあるため、ランニングコストを含めた総額で比較することが大切です。
運用面では、スタッフが端末操作に慣れるまでの準備も欠かせません。導入直後に会計対応で混乱しないよう、事前に操作方法を共有し、練習しておくと安心です。
また、通信環境が不安定だと決済エラーにつながるため、安定したネットワーク環境を整えておく必要があります。
対応する決済ブランドやサービスは、自院の患者層を踏まえて選びましょう。必要以上に種類を増やすより、利用が見込まれるものに絞ることで、管理や手数料の負担を抑えられます。
決済手段と導入方法

実際にキャッシュレス決済を導入するには、どの決済手段を選び、どのような流れで準備を進めるのかを確認しておく必要があります。主な決済方法の特徴と、導入までの流れを見ていきましょう。
クレジット・電子マネー・QRなどの決済手段
導入する決済手段は、患者層やクリニックの立地に合わせて選ぶことが大切です。
クレジットカードは、幅広い年代で利用されており、高額な支払いにも対応しやすいため、基本的に導入しておきたい決済方法です。分割払いに対応できる点も、自由診療を扱うクリニックではメリットになります。
電子マネーは、短時間で支払いを完了でき、少額の会計でも利用しやすい方法です。駅やバス停の近くにあるクリニックでは、交通系ICカードの需要も見込めます。
QRコード決済は、導入コストを抑えやすく、スマートフォンを使った支払いに慣れた若い世代を中心に普及しています。
これらの決済方法は、必ずしも一つに絞る必要はありません。複数の決済手段に対応できるサービスも多いため、患者のニーズに合わせて組み合わせるとよいでしょう。ただし、対応する種類を増やすほど管理の負担も大きくなるため、利用状況を見ながら選ぶことが重要です。
決済端末やサービス導入までの流れ
キャッシュレス決済の導入は、いくつかの手順に沿って進めます。まずは、複数の決済サービスを比較し、自院に適したものを選定します。手数料や初期費用、対応する決済方法、入金サイクル、サポート体制などを確認しましょう。
サービスを決めた後は、事業者へ申し込み、審査を受けます。審査完了後、決済端末が届いたら初期設定を行います。端末には、据え置き型やタブレットと連携するタイプ、レジや自動精算機と一体になったものなど、さまざまな種類があります。
設定や動作確認を終え、スタッフが操作方法を把握できれば、実際の運用開始です。
なお、日本医師会の関連団体が、医療機関向けに割安な手数料の決済サービスを提供している例もあります。導入時は一般的なサービスだけでなく、医療機関向けの選択肢も含めて比較すると、自院に合った方法を見つけやすくなります。
自院に合ったキャッシュレスの選び方

キャッシュレス決済のサービスは数多く、自院に合うものを選ぶのは簡単ではありません。導入時は、いくつかの視点から比較して判断することが大切です。
まず確認したいのが、患者層です。高齢の患者が多いのか、若い世代が中心なのかによって、適した決済手段は変わります。
自由診療が多く単価が高い場合は、クレジットカードへの対応が欠かせません。一方で、少額の会計が多い場合は、電子マネーやQRコード決済との相性がよいでしょう。
次に重視したいのが、手数料と費用のバランスです。料率だけでなく、初期費用や月額利用料、入金サイクルまで含めて総合的に確認しましょう。医療機関向けの料率が用意されているかも、選定時のポイントになります。
また、ほかのシステムとの連携性も重要です。会計や電子カルテ、予約システムとスムーズにつながるかによって、日々の業務効率は大きく変わります。
特に、予約から問診、オンライン診療、決済までを一つの流れで管理できれば、患者にとって使いやすい環境づくりにも役立ちます。
予約から問診・オンライン診療・決済までをLINEやWebで一体化できるmarchのような仕組みを活用すれば、会計だけでなく診療全体の流れを効率化できます。
目先の手数料だけで判断せず、長期的な運用のしやすさまで考えて選ぶことが、後悔しないキャッシュレス導入のポイントです。
まとめ
クリニックのキャッシュレス決済は、会計業務の効率化や待ち時間の短縮、患者の利便性向上に役立つほか、集患や他院との差別化にも有効です。一方で、手数料や入金サイクル、導入費用には注意が必要です。
クレジットカードや電子マネー、QRコード決済などの特徴を理解し、患者層や運用体制に合った方法を選びましょう。予約から診療、決済までを一体化できる仕組みを取り入れることで、会計業務を含めたクリニック運営の効率化にもつながります。
最短10秒、かんたんこの記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属

