「遠隔診療」と「オンライン診療」は似た言葉ですが、その関係や種類は意外と整理されていません。クリニックが導入を検討する際は、まず全体像を押さえておくことが大切です。
本記事では、遠隔診療と遠隔医療の定義、DtoD・DtoPなどの種類、オンライン診療との違い、メリットとデメリット、そしてクリニックが実際に始めるまでの流れを解説します。
最短10秒、かんたん遠隔診療とは(定義と遠隔医療の中での位置づけ)
遠隔診療を理解するには、まず「遠隔医療」という大きな枠組みの中での位置づけを押さえることが近道です。定義と、呼び名が変わってきた経緯を確認しましょう。
遠隔診療・遠隔医療の定義
遠隔医療とは、情報通信機器を活用して、離れた場所の間で行われる医療行為全般を指す広い概念です。
画像や検査データを送って専門医に意見を求める行為から、患者の健康状態を遠隔で見守る仕組みまで、幅広い取り組みが含まれます。
このうち、医師が情報通信機器を通じて患者を診察し、診断や処方といった診療行為を行うものが「遠隔診療」です。つまり、遠隔医療という大きな枠組みの中に遠隔診療があり、さらにその中に後述するオンライン診療が含まれる、という関係です。
まずはこの全体像をつかんでおくと、それぞれの言葉の違いを理解しやすくなります。
「遠隔診療」から「オンライン診療」への呼称変更
かつては、情報通信機器を用いた診療を広く「遠隔診療」と呼ぶ場面が多くありました。
その後、2018年に国が「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を示し、医師と患者がリアルタイムの映像と音声を通じて行う診療を「オンライン診療」と定義しました。これにより、実施のルールや守るべき要件が整理されています。
現在では、患者向けのサービスやニュースでも「オンライン診療」という呼び方が広く定着しています。
ただし、遠隔医療や遠隔診療という言葉が使われなくなったわけではありません。より広い概念を指す場面では、今も用いられています。
遠隔診療の種類(DtoD・DtoP)

遠隔医療は、誰と誰の間で行われるかによって分類されます。代表的な「DtoD」「DtoP」、そして看護師が同席する形態について、それぞれの特徴を見ていきましょう。
医療従事者間の遠隔医療(DtoD)
DtoDとは、Doctor to Doctorの略で、医師など医療従事者どうしが情報通信機器を介して連携する形態です。たとえば、地域のクリニックの医師が、撮影した画像やデータを大学病院の専門医に送り、診断の助言を受ける遠隔画像診断や遠隔病理診断が代表例です。
専門外の症例について、その場で専門医に相談できるため、専門性の高い医療を地域に届けられます。患者を遠方の病院へ搬送する負担を減らせる点も大きな利点です。医師の知見を補い合う仕組みとして、医療の質と地域格差の是正に貢献しています。
医療従事者と患者間の遠隔医療(DtoP・代表例がオンライン診療)
DtoPとは、Doctor to Patientの略で、医師が情報通信機器を通じて患者を直接診察する形態です。
その代表例が、リアルタイムの映像と音声で行うオンライン診療にあたります。患者は自宅やオフィスにいながら、スマートフォンやパソコンを使って医師の診察を受けられます。
慢性疾患で症状が安定している患者の定期的な経過観察や、再診を中心に活用が広がってきました。通院にかかる時間や交通の負担を減らせるため、仕事や育児で忙しい人、通院が難しい高齢者にとって利便性が高い仕組みです。
一般に「遠隔診療」と聞いてイメージされるのは、このDtoP、すなわちオンライン診療であることが多いでしょう。
看護師等が同席する形態(DtoP with N など)
DtoPには、患者側に看護師などの医療従事者が同席する応用的な形態もあります。これは「DtoP with N」(Nはナース)と呼ばれ、患者のそばに看護師がいる状態で、医師がオンラインで診察を行うものです。
看護師が血圧測定や聴診の補助、患者への説明などを担うことで、対面に近い情報を得ながら診療を進められます。離島やへき地、介護施設の入所者、オンライン操作に不慣れな患者などで活用が期待されています。
このほかにも、薬剤師や別の医師が同席する形態など、状況に応じたさまざまなバリエーションが整理されています。
遠隔診療とオンライン診療の違い

よく混同されがちな「遠隔医療」「遠隔診療」「オンライン診療」ですが、指し示す範囲には違いがあります。三者の関係を整理しておきましょう。
「遠隔医療」「遠隔診療」「オンライン診療」の関係
三つの言葉は、範囲の広さで区別すると理解しやすくなります。最も広いのが「遠隔医療」で、情報通信機器を使った医療行為全般を指します。その中に、診察や診断、処方といった診療行為を行う「遠隔診療」が位置づけられます。
さらにその内側で、医師と患者がリアルタイムの映像でつながる形態が「オンライン診療」です。つまり遠隔医療を最も大きな概念として、遠隔診療、オンライン診療の順に範囲が絞られていく入れ子構造になっています。
日常会話ではほぼ同義で使われることもありますが、厳密には指す範囲が異なる点を押さえておきましょう。
言葉の使われ方と診療報酬上の整理
実務では、患者向けの案内やサービス名として「オンライン診療」という呼び方が定着しています。一方、制度や学術的な文脈では、より広い「遠隔医療」という用語が使われる場面も多く見られます。
診療報酬上は、情報通信機器を用いた診療として評価される仕組みが設けられ、オンライン診療を行った場合に算定できる項目が定められています。
ただし、対象となる患者や算定要件、点数は診療報酬改定のたびに見直されます。最新の取り扱いは、改定ごとに厚生労働省の通知などで必ず確認しておくと安心です。
遠隔診療(オンライン診療)のメリットとデメリット

オンライン診療には多くの利点がある一方で、対面診療にはない注意点も存在します。導入を検討する際は、両面を正しく理解しておくことが欠かせません。
クリニック・患者双方のメリット
オンライン診療は、患者とクリニックの双方にメリットをもたらします。患者にとっては、通院にかかる移動時間や交通費の負担が減り、自宅や職場から診察を受けられる点が大きな魅力です。
待合室で長く待つ必要がなく、ほかの患者との接触による感染リスクも避けられます。仕事や育児で通院しづらい人、通院が体力的に難しい高齢者にとっても、医療へのアクセスが広がります。
クリニック側にとっては、来院患者の集中を緩和でき、遠方の患者や再診患者を取り込めることが利点です。診療時間の柔軟な設定により、医師の働き方の選択肢が増える効果も期待できます。
慢性疾患の定期管理など、相性のよい場面で活用すれば、患者満足度の向上と効率的な診療の両立につながります。
注意すべきデメリット・限界
一方で、オンライン診療には対面診療にはない限界もあります。最も大きいのは、得られる情報が限られることです。医師は画面越しに患者の様子を見ることはできても、触診や聴診といった身体診察ができず、視診も照明や画質に左右されます。
そのため、的確な診断が難しいケースや、検査が必要な場合には、対面診療への切り替えが求められます。また、初診からのオンライン診療には、安全性を確保するための一定のルールがあり、麻薬や向精神薬など処方できない薬剤も定められています。
通信環境のトラブルで診察が中断するリスクや、患者本人であることを確認する手続きの必要性、情報セキュリティ対策も無視できません。すべての診療を置き換えるものではなく、対面診療を補完する手段として、適切な場面を見極めて使うことが重要です。
クリニックが遠隔診療を始める流れ

オンライン診療を導入するには、ルールの確認から院内体制の準備まで、いくつかのステップを踏む必要があります。実際に始めるまでの流れを順に見ていきましょう。
指針・医療法ルールの確認と研修の受講
最初に行うべきは、守るべきルールの確認です。オンライン診療は「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づいて行う必要があり、医療法や関連法令上の要件も押さえておかなければなりません。
指針では、診療の対象や本人確認の方法、診療計画の作成など、安全に実施するための条件が定められています。また、担当する医師には国が定める研修の受講が要件として課されています。eラーニング形式で受講できるため、導入前に必ず修了しておきましょう。
システム・通信環境・院内体制の準備
次に、診療を支える環境を整えます。オンライン診療システムを選定し、安定した通信環境を確保することが基本です。システムは、予約や問診、決済まで対応できるかどうかで使い勝手が大きく変わります。
あわせて、患者本人であることを確認する仕組みや、通信内容を守るセキュリティ対策も欠かせません。院内では、誰がどのように予約を受け、どの端末で診察するのか、受付や会計をどう連携させるのかといった運用体制を決めておく必要があります。
スタッフ間で手順を共有し、患者への案内方法も準備しておくと、導入後の混乱を避けられます。
予約から決済までの運用設計
最後に、患者がスムーズに利用できる一連の流れを設計します。予約の受付から事前の問診、当日の診察、会計や処方箋の取り扱い、決済までを、どのツールでどうつなぐか具体的に決めておきましょう。
各工程がばらばらのツールに分かれていると、患者にもスタッフにも負担がかかります。予約から問診、オンライン診療、決済までをLINEやWebで一体化できるmarchを使えば、患者の操作も一つの導線にまとまり、運用設計がぐっと楽になります。
まとめ
遠隔診療は、情報通信機器を活用した幅広い医療行為を含む遠隔医療の一部で、医師と患者をつなぐDtoPは現在「オンライン診療」と呼ばれています。種類や言葉の関係を理解し、メリットだけでなく限界や注意点も踏まえることが適切な導入の前提です。
実施には指針や医療法ルールの確認、研修、システムや院内体制の準備が必要です。予約から診療・決済までをまとめられるmarchは運用設計に役立ちます。
最短10秒、かんたんこの記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属


