オンライン診療システムの比較記事を読んでも、自分の診療科で使えるのかは判断しにくいものです。機能一覧はどこも似ており、診療科ごとの違いまでは書かれていません。
実際に差が出るのは、診察そのものではありません。予約の入口や決済、薬の受け渡し、受診間隔の管理といった診察の前後の業務であり、ここが診療科ごとに違ってきます。
本記事では、歯科・美容・慢性疾患・婦人科それぞれで必要になる要件と、実際の導入事例で何が変わったのかを解説します。
最短10秒、かんたん診療科でシステムの要件が変わる理由

オンライン診療システムの機能一覧は、どのサービスもよく似ています。それでも診療科によって選ぶものが変わるのは、比較表に現れない業務の重さが違うからです。
差が出るのは診察の前後にある業務
ビデオ通話で診察するという部分は、どのサービスでも成立します。差がつくのは、予約から決済、薬の受け渡しまでの流れです。
継続処方が中心の診療科では、受診間隔の管理が業務の中心になります。自費のメニューを扱う診療科では、決済と配送、そして継続の仕組みが要ります。相談から入る診療科では、問い合わせ対応の量が課題になるものです。
同じ「オンライン診療システム」でも、自院で重くなる工程がどこかによって、必要な機能は変わります。
判断を早めるには、自院の1日の流れを書き出してみるのが確実です。予約が入ってから薬が患者の手元に届くまでを工程に分け、どこに人手がかかっているかを見ます。手が止まる工程が、そのまま比較の軸になります。
保険中心か自費中心かで軸が変わる
大きな分かれ目が、保険診療が中心か自費診療が中心かです。
保険中心なら、算定に必要な記録が残るか、既存の電子カルテと連携できるかが軸になります。自費中心なら、決済の柔軟性と、定期購入や配送まで扱えるかが軸です。
両方を扱う医療機関では、会計と記録を分けて管理できるかも確認しておきましょう。保険と自費が同じ画面に混在すると、あとから請求の根拠を追えなくなります。
▶︎関連記事:オンライン診療システム比較13選|費用相場・選び方を解説
歯科|自由診療から始めやすい

歯科は、医科と比べてオンライン診療の前例が少ない領域です。始め方に迷う歯科医院は少なくありません。
歯科には歯科の指針がある
厚生労働省は令和6年3月に「歯科におけるオンライン診療の適切な実施に関する指針」を策定しています。医科の指針とは別に、歯科向けの指針が存在します。
研修も別立てです。医科の「オンライン診療を行う医師向けの研修」は歯科医師を対象としておらず、歯科医師には日本歯科医師会のシステムで用意された研修があります。
システムを選ぶ前に、自院が受けるべき指針と研修がどちらなのかを確かめておきましょう。
決済まで含めて1つにする
歯科でオンライン診療を組む場合、保険診療での適用範囲が限られるため、自由診療のメニューから始める例があります。
marchの導入事例では、歯科のONLINE WHITENINGがホワイトニングサロンと提携し、薬は患者個人に処方したうえで、行為自体はサロンで実施しています。
選定の理由として挙げられているのは、低コストで包括的に導入できた点でした。オンライン診療機能と決済機能が別々になっているシステムが多いなかでの選択です。単価が高くない事業では、機能ごとに契約を分けると採算が合いにくくなります。導入前は月5件程度だったオンライン診療が、導入から5か月で月30件程度まで伸びたと公開されています。
美容・医療ダイエット|物販と定期購入が前提

自費と物販を扱う領域では、必要になる機能がはっきりしています。ここを外すと、サービス設計そのものが成り立ちません。
サブスク決済と配送管理が要件になる
継続的に薬を届けるサービスでは、都度の決済だけでは運用が回りません。定期購入の決済と、配送の管理が前提の機能になります。
marchの導入事例では、日本オンラインドクターズがシステム選定時の課題を3点挙げました。サブスク決済機能・配送管理機能・LINEのシナリオ配信が、いずれも不足していたという内容です。定期購入と遠隔配送を前提にしたサービスでは、これらが欠けると構想そのものが実現できません。
公開されている効果は次のとおりです。
- 定期購入プランへの移行率:約50%
- 新規患者数:月平均20%増、5か月で月150人超え
- 売上:導入から5か月で約60%アップ
これは特定の医療機関の事例であり、すべての導入先で同じ結果になるものではありません。
問い合わせ対応の量も設計に入る
見落とされやすいのが、システムに関する患者からの問い合わせです。件数が増えるほど、スタッフの対応時間は積み上がるものです。
同じ事例では、患者が自分でWeb上から操作できるようにしたことで、システムに関する問い合わせが月5件から1件以下になったと公開されています。スタッフ教育の時間も含めて、月5時間以上かかっていたサポート時間を削減できたとされています。
慢性疾患・内科|受診の間隔を切らさない
継続処方が中心の領域では、業務の中心が「次の受診をどう確保するか」に移ります。
受診間隔が決まっている領域と相性がよい
保険診療で継続するために受診間隔が定められている治療では、通院が途切れること自体がリスクになります。
marchの導入事例では、新橋睡眠・内科クリニックがCPAP治療を挙げています。CPAP治療は、保険で継続するために原則月1回、最低でも3か月に1回の受診が必要です。受診が途切れると自費に切り替わり、治療から離脱する患者も出ます。
患者の通院期限を医療機関側で管理する負担も課題の1つです。オンライン診療で5分ほどの時間を確保できれば診察が可能になるため、通院できずに治療が続かない患者を減らせると見込めます。
短時間の診察を前提に枠を設計する
継続処方の再診は1件あたりの時間が短いため、対面と同じ枠の取り方をすると枠が余ります。
同じ事例では、オンライン診療にかかるスタッフの手間が対面の体感で約10分の1とされています。短時間の診察を前提に、昼休みや診療時間外に枠を寄せる設計が現実的です。
なお、情報通信機器を用いた再診では外来管理加算を算定できません。枠を増やす前に、1件あたりの点数と、システム利用料をいくらに設定するかも決めておきましょう。
▶︎関連記事:オンライン診療の診療報酬とは?2026年度の点数・算定要件を解説
婦人科・レディースケア|相談から診療までの導線

相談が入口になる診療科では、診察の前段階に業務が集まります。
相談窓口が実質の入口になる
不安を感じたときにすぐ相談したい、できるだけ早く受診したいというニーズが強い領域では、相談窓口が診療の入口になります。
marchの導入事例では、モイストクリニックがLINE公式アカウントを相談窓口として活用しています。相談内容に応じて、オンライン診療か対面診療かを案内する流れです。患者が不安を感じた時点で接点を持てるため、受診までの離脱を抑えやすくなります。
複数ツールの横断が起きやすい
相談から診療につなぐ運用では、扱う情報が増えます。相談内容、予約状況、診療履歴、検査内容を確認しながら案内する形になるためです。
同じ事例では、LINE・予約システム・カルテ・CRMを横断していたため、スタッフの作業が増えていました。特定のスタッフに業務が依存する属人化も課題だったとされています。これらを1つの流れで管理する形に変えた結果、従来約10アクション必要だった業務が約4アクションまで減ったと公開されています。
診療科を問わず確認したい共通項
診療科を問わず効いてくるのが、患者の登録負担とメニューの階層設計の2点です。どちらも比較表からは見えてきません。
患者の登録負担
予約が入っても診察に至らない原因の多くは、患者側の登録段階にあります。専用アプリのダウンロードとアカウント登録を求める形では、そこで離脱が起きるものです。
marchの導入事例では、わかさクリニックがアプリ型での患者の離脱を課題に挙げました。切り替え先は、LINEやホームページからそのまま予約と受診ができる導線でした。導入から2か月でオンライン診察件数が前年のピーク期の3倍になったと公開されています。
診療メニューの階層
扱うメニューが多い医療機関ほど、患者が目的のメニューにたどり着くまでの設計が効いてきます。
同じ事例では、メニューの選択画面を2段階・3段階と組めることで、余計な要素を挟まない予約ルートを作れたとされています。メニュー数が増える予定があるなら、階層を組めるかどうかを比較の段階で確認しておきましょう。
あわせて見ておきたいのが、メニューを追加するときに誰が設定するのかという点です。設定のたびにベンダーへの依頼が必要な仕組みでは、季節メニューのような機動的な運用ができません。院内で完結できるかどうかを確かめておきます。
まとめ
差が出るのは診察そのものではなく、予約・決済・薬の受け渡し・受診間隔の管理といった前後の業務です。歯科には医科とは別の指針と研修が用意されており、保険での適用範囲が限られるため自由診療から始める例があります。美容や医療ダイエットでは、定期購入の決済と配送管理が要件になります。
慢性疾患では、受診間隔を切らさないことが業務の中心です。marchの導入事例では、CPAP治療で通院が途切れると自費に切り替わってしまう課題に対し、短時間のオンライン診療で受診機会を確保した例が公開されています。婦人科やレディースケアのように相談が入口になる領域では、相談から診療までの情報が分散しやすく、1つの流れにまとめられるかが分かれ目になります。
どの診療科でも共通するのが、患者の登録負担とメニューの階層設計です。marchのように予約から問診・診察・決済・配送までを1つで扱える仕組みなら、診療科ごとの重い工程に合わせて運用を組みやすくなります。自院で重くなる工程がどこかを先に見極めてから、比較表を見ましょう。
最短10秒、かんたんこの記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属

