オンライン診療が普及しない理由とは?定着させる進め方を解説 | 【公式】march(マーチ)

オンライン診療が普及しない理由とは?定着させる進め方を解説

2024.09.26

オンライン診療が普及しない理由とは?定着させる進め方を解説

オンライン診療を導入したものの、月に数件のまま伸びない。そうした声は珍しくありません。導入前から「うちが入れても定着しないのではないか」と考える院長も多いはずです。

普及しない理由としてよく挙がるのは、診療報酬の水準や導入コスト、患者側のリテラシーです。ただし、実際に止まっている医療機関を見ると、要因はもっと手前の工程にあります。

本記事では、普及しない理由の整理から始めて、導入後に止まる工程の分解、定着したクリニックが実際に変えたこと、そして導入前の準備までを解説します。

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データで分かるオンライン診療の普及率

データで分かるオンライン診療の普及率

日本でもオンライン診療の実施は徐々に広がっていますが、医療機関全体から見れば一部にとどまります。

日本のオンライン診療の普及率

情報通信機器を用いた初診料等の届出医療機関数は、経時的に増加しています。令和5年10月1日時点では約10,100医療機関で、1年3か月ほどの間に約1.8倍になりました。

制度面の整備も進みました。2026年4月1日には医療法改正が施行され、オンライン診療が医療法上に位置づけられています。国としても、医療資源が少ない地域をはじめ医療アクセスの確保に有用な手段として推進する方向です。

つまり、届出を済ませた医療機関は着実に増えています。それでも件数が伸びないのであれば、届出と実施は別物だと考えるほうが自然でしょう。届け出た段階では、まだ何も動き出していません。

日本でオンライン診療が普及しない理由

オンライン診療が日本で十分に普及しない要因は、大きく3つあります。診療報酬の水準、導入コスト、そして患者側のリテラシーです。

対面診療と比較した診療報酬の低さ

オンライン診療は対面診療と比較して診療報酬が低く、収益性の面から導入に消極的な医療機関が多いと考えられます。2026年6月1日に施行された令和8年度診療報酬改定では、点数は次のようになりました。

項目対面診療情報通信機器を用いた場合
初診料291点253点
再診料76点76点

初診では38点の差があります。再診料は同額ですが、情報通信機器を用いた再診では外来管理加算の52点を算定できません。特定疾患療養管理料も診療所で225点が196点に下がるため、点数だけで見た1件あたりの総額は対面より低くなります。ただし、システム利用料を徴収すればこの差は埋められます。

医療機関にとって導入のインセンティブが低いことが、普及を妨げている一因です。

導入コストの高さ

オンライン診療の導入にあたり、大きな課題の一つが導入コストの高さです。オンライン診療の環境を整えるには、専用のシステムや機器の導入が必要であり、経済的なコストがかかります。

加えて、スタッフの教育や新しいワークフローの構築も必要となり、時間的なコストも発生するため、導入時は大きな負担となるでしょう。こうした経済的・時間的なコストが、導入に対する障壁となっている可能性があります。

一定のリテラシーが求められる

オンライン診療を利用するには、医療機関と患者の双方に一定のITリテラシーが求められます。医療機関のスタッフは、システムの導入や運用に関する基本的なIT知識が必要です。一方、患者はデバイスの操作やアプリの利用に慣れておく必要があるでしょう。

特に高齢の患者は、スマートフォンやアプリの操作に不慣れな場合が多くなります。分かりやすいマニュアルの作成と、サポート体制の整備が求められます。

導入後に止まるのは4つの工程

導入後に止まるのは4つの工程

ここまでの3つは、導入する前の障壁です。実際に導入した医療機関で件数が伸びない理由は、別のところにあります。止まる場所はおおむね決まっており、患者周知・受付フロー・決済・薬の受け渡しの4つです。

患者への周知と予約の導線

最初の関門が、患者にたどり着いてもらう部分です。オンライン診療を始めても、既存の患者が知らなければ予約は入りません。

導線そのものも障害になります。専用アプリのダウンロードとアカウント登録を求める形では、その手前で離脱が起きるものです。診療メニューが多い医療機関ほど、患者が目的のメニューにたどり着くまでの階層設計も効いてきます。

受付フローと決済・薬の受け渡し

次が院内です。対面とオンラインで受付の流れが分かれると、スタッフの作業は単純に倍近くになります。予約・問診・カルテ・決済がそれぞれ別のツールに分かれていれば、患者1人の対応で画面を何度も行き来する形です。

診察が終わったあとにも工程が残ります。オンライン診療では患者が来院しないため、決済の手段を用意しないまま始めると後日の振込依頼などの手作業が残ります。薬の受け渡しも、院内処方なら集荷の依頼や宛名ラベルの発行までが業務に加わるものです。

診察の予約枠だけを設計して、この後工程を決めずに開始すると、1件ごとにスタッフが判断する状態になります。件数が増えたときに最初に破綻するのがここです。

定着したクリニックは何をしたか

定着したクリニックは何をしたか

以下はいずれもmarchの導入事例として公開されているもので、すべての医療機関で同じ結果になるものではありません。

予約の入口を変えた例

わかさクリニックは、アプリを使うシステムで患者の離脱が多い点を課題としていました。アプリ型ではアカウント登録の負担が大きく、そこで離れてしまうという判断です。

変更したのは予約の入口です。LINEやホームページからそのまま予約と受診ができる形に切り替え、既存の友だち登録済みの患者を保持したまま移行しました。あわせて、診療メニューの選択画面を2段階・3段階と組み、目的のメニューまでの導線から余計な要素を外しています。

結果として、導入から2か月でオンライン診察件数が前年のピーク期の3倍になったと公開されています。

画面を1つにまとめた例

モイストクリニックは、LINE・予約システム・カルテ・CRMを横断していたため、スタッフの対応工数が増えていました。特定のスタッフに業務が依存する属人化も課題だったとされています。

変更点は、LINE相談からオンライン診療・来院案内・診療記録・CRMまでを1つの流れで管理する形にしたことです。LINEの自動配信やタグ付け、シナリオ配信で案内を自動化し、個別のチャット対応の量を減らしています。

公開されている効果は、従来約10アクション必要だった業務が約4アクションまで減ったというものです。歯科のONLINE WHITENINGも、決済まで一気通貫で扱える形に切り替えています。導入から5か月で、月5件程度から月30件程度まで伸びたと公開されています。

オンライン診療を導入する前の準備

オンライン診療を導入する前の準備

3つの例に共通するのは、機能を増やしたのではなく、患者とスタッフの動線を1本に整理した点です。

オンライン診療システムの導入

オンライン診療を実施するには、専用のシステムの導入が欠かせません。一から必要な環境を整えるとなると、非常に手間がかかるでしょう。

自前で環境を整える場合は、通信手段の確保・患者情報の管理方法の構築・セキュリティ対策の実装など、多岐にわたる準備が必要です。既存のオンライン診療システムを導入すれば、こうした準備を一度に解決できます。

選ぶ際は、前章の4工程のうち自院で重くなる部分に対応できるかを見ましょう。予約から問診・診察・決済・配送までを1つの流れで扱えるmarchのようなシステムなら、工程が分断されにくくなります。

IT機器活用のサポート体制を整える

オンライン診療はインターネットを用いるため、IT機器活用のサポート体制を整えることが重要です。具体的には、安定した回線の確保、セキュリティ対策ソフトの導入、IT機器の使用マニュアルの準備が求められます。

医療スタッフに対するIT機器のトレーニングも欠かせません。システムの基本的な使い方やトラブル発生時の対応について、定期的な研修を通して習得しておきましょう。

オンライン診療の流れを把握する

準備を進めるにあたり、問診から診察終了までの流れを把握しておきましょう。事前に確認することで、自院に不足している点や改善点を明確にできます。

はじめから全診療科・全メニューを開けると、患者もスタッフも迷います。継続処方など対象を絞って1つのメニューから始め、受付から決済、薬の受け渡しまでを誰が担当するかを開始前に決めておきましょう。1か月目の実績が出てから、枠とメニューを広げるほうが定着します。

続いているかを測る

定着したかどうかは、何を見て判断するかを先に決めておきます。指標がないと、感覚で「うまくいっていない」と結論づけてしまいます。

見るべきは件数より継続率

月間の件数は分かりやすい指標ですが、季節要因で動きます。あわせて見たいのが、オンラインで受診した患者が翌月も継続したかどうかです。

予約が入ったのに診察に至らなかった件数も、確認しておきたい数字になります。ここが多いなら、原因は診療そのものではなく、登録や決済の手前にあります。

件数が落ちたときは、機能を足す前に工程を見直しましょう。周知・予約導線・受付・決済・薬の受け渡しのどこで止まっているかを分けて確認します。工程が分からないまま件数だけを見ていると、打ち手も決まりません。

▶︎関連記事:オンライン診療システム比較13選|費用相場・選び方を解説

まとめ

一般に挙げられるのは、診療報酬の水準、導入コスト、患者側のリテラシーの3つです。実際、情報通信機器を用いた初診料は対面より38点低く、再診では外来管理加算を算定できません。一方、2026年6月からはシステム利用料の実費徴収が明記され、点数差を補う手段は整いました。届出医療機関数も増え続けており、2026年4月にはオンライン診療が医療法に位置づけられるなど、制度の整備は進んでいます。

それでも件数が伸びないなら、止まっているのは患者周知・受付フローの二重化・決済・薬の受け渡しという4つの工程のどこかです。marchの導入事例では、予約の入口をLINEやホームページに変えた例が公開されています。導入から2か月で、件数が前年ピーク期の3倍になりました。複数ツールの横断をやめて、業務が約10アクションから約4アクションに減った例もあります。

導入前の準備としては、システムの選定、IT機器のサポート体制、そして診療の流れの把握が要ります。開始後は対象を絞って1つのメニューから始め、担当を決めてから枠を広げましょう。定着の判断は件数だけでなく、継続率と、予約が入ったのに診察に至らなかった件数で見ます。

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この記事の監修者

監修者尾崎 功治

2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。

日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属

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