オンライン診療の導入を検討するクリニックにとって、2026年4月の医療法改正は見逃せない節目です。制度として位置づけられたことで、対応すべきことも明確になりました。
本記事では、オンライン診療の定義と背景、診療の流れ、医療法改正のポイント、メリットとデメリット、クリニックが始めるまでの流れを解説します。
最短10秒、かんたんオンライン診療とは?
オンライン診療は、近年急速に身近になった診療のかたちの一つです。まずは、その正確な定義と、ここまで普及してきた背景やこれまでの経緯を押さえておきましょう。
オンライン診療の定義
オンライン診療とは、スマートフォンやパソコンなどの情報通信機器を使い、医師が離れた場所にいる患者をリアルタイムに診察し、必要に応じて処方などを行う診療です。
2026年4月施行の改正医療法では、医師と患者の端末を電気通信回線で接続し、映像と音声の送受信によって、互いの状態を認識しながら通話できる方法による診療、と定義づけられました。ここで重要なのは、映像と音声の両方が必要だという点です。
電話のように音声だけのやり取りは、オンライン診療とは認められません。患者の表情や様子を画面越しに確認しながら診療を行うことが前提となっています。遠隔医療の一つとして、医師と患者を直接つなぐ形態にあたります。
普及の背景とこれまでの経緯
オンライン診療が広まった大きなきっかけは、新型コロナウイルスの感染拡大です。
通院による感染リスクを避ける手段として、時限的な特例措置のもとで一気に普及が進みました。それ以前は、医師法が無診察での治療を禁じていることとの関係で、慎重に運用されてきた経緯があります。
2018年には「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が定められ、遵守すべき事項が整理されました。その後、感染症対応や技術の進歩、医師の偏在対策といった観点から、活用の機運が高まっていきます。
そして2026年4月、後述する医療法改正により、指針ベースの運用から法律に位置づけられた制度へと移行しました。例外的な扱いから、正式な診療形態へと位置づけが変わったのです。
オンライン診療の仕組みと診療の流れ

実際にオンライン診療はどのように行われるのでしょうか。予約から薬の受け取りまで、一連の流れを具体的に追いながら、その仕組みを確認していきましょう。
予約から問診・診察・処方・決済までの流れ
オンライン診療は、いくつかのステップで進みます。まず患者が、Webやアプリからオンライン診療の予約を取ります。続いて、事前にWeb問診で症状や経過を入力してもらうと、当日の診察がスムーズに進みます。
予約した日時になると、医師と患者がビデオ通話でつながり、画面越しに診察を行います。医師は症状を確認し、必要に応じて検査や対面受診を案内したり、薬を処方したりします。診察が終わると、料金はクレジットカードなどでオンライン決済するのが一般的です。
これらの工程が一つのシステム上でつながっていれば、患者は予約から支払いまでをスマートフォンだけで完結できます。受付や会計の負担が減る点は、クリニックにとっても利点です。
処方・薬の受け取り方法
オンライン診療では、対面と違って処方箋を直接手渡せないため、薬の受け取り方に独自の流れがあります。医師が処方を決めると、処方箋の情報が患者の利用する薬局へ送られます。
従来は、クリニックがFAXやメールで薬局へ情報を送り、紙の原本を後から郵送する方法が一般的でした。
近年は、処方箋を電子化する電子処方箋も広がっており、これを使えば原本の郵送が不要になります。患者は、薬局の窓口で薬を受け取るか、自宅への配送を選べます。薬剤師による服薬指導も、オンラインで受けられる場合があります。
なお、安全性の観点から、初診のオンライン診療では麻薬や向精神薬は処方できないなど、薬に関するルールも定められています。処方から薬の受け取りまでの段取りを、あらかじめ整えておくことが大切です。
2026年4月施行の医療法改正のポイント

2026年4月の医療法改正は、オンライン診療のあり方を大きく変えるものです。クリニックが押さえておくべき改正の要点を、二つの側面から整理します。
オンライン診療の法制化と届出義務
今回の改正で最も大きいのが、オンライン診療が医療法に正式に位置づけられたことです。これまでは指針というガイドラインに沿って運用されてきましたが、2025年12月に公布された改正医療法により、2026年4月1日から法律上の制度となりました。
背景には、特に自由診療の分野で、誰がどこでどのようにオンライン診療を行っているかが見えにくいという課題があり、これを見える化するねらいがあります。
これに伴い、オンライン診療を行う医療機関は、その旨を所在地の都道府県へ届け出ることが必要になりました。
なお、2026年4月1日の時点ですでにオンライン診療を実施している医療機関については、事務負担に配慮し、2027年3月末までに届け出ればよいとする経過措置が設けられています。これから始めるクリニックは、届出が必要になる点を念頭に置いておきましょう。
オンライン診療基準・受診施設の新設
もう一つの大きな変更が、ルールの位置づけの格上げです。従来の指針は法的拘束力の弱い通知という扱いでしたが、改正により「オンライン診療の適切な実施に関する基準」、いわゆるオンライン診療基準として省令に引き上げられました。
これにより、基準に違反した不適切な事例には、都道府県知事などが是正命令や立入検査を行えるようになります。基準の具体的な内容は、施行に向けて整備が進められています。あわせて新設されたのが、「オンライン診療受診施設」という仕組みです。
これは、患者がオンライン診療を受ける専用の場所を提供する施設で、医療提供施設として医療法に位置づけられました。
公民館や郵便局、駅構内のブースなどが想定されており、医療機関でなくても設置できます。設置者は、設置後10日以内に都道府県へ届け出る必要があります。
オンライン診療のメリットとデメリット

オンライン診療には多くの利点がある一方で、できないことや注意すべき点もあります。導入を判断するために、メリットとデメリットの両面を見ていきましょう。
クリニック・患者双方のメリット
オンライン診療は、クリニックと患者の双方にメリットをもたらします。患者にとっては、通院の負担が大きく減るのが何よりの利点です。自宅や職場から受診でき、待合室での待ち時間や移動の手間がありません。
仕事や育児で忙しい人、通院が難しい高齢者や遠方の患者にとって、医療へのアクセスが格段によくなります。感染症が気になる時期でも、人との接触を避けて受診できます。クリニック側にとっては、診療圏を地理的な近さに縛られず広げられる点が魅力です。
働く世代など、これまで来院しにくかった層の取り込みにもつながります。再診や継続的な経過観察と相性がよく、患者の通院継続を支えることで、結果として安定した経営にも寄与します。利便性の高さが、選ばれるクリニックづくりを後押しします。
デメリット・実施できないケース
一方で、オンライン診療には限界もあります。最も大きいのは、画面越しでは得られる情報が対面より限られる点です。触診や聴診ができず、視覚と聴覚に頼った診察になるため、適さない症状や疾患があります。
医師が対面での診察が必要と判断した場合は、来院を案内することになります。急を要する重い症状や、検査が欠かせないケースも、オンラインだけでは完結しません。
前述のとおり、初診での麻薬や向精神薬の処方など、安全性の観点から禁じられている行為もあります。また、患者側にスマートフォンなどの機器や通信環境が必要で、操作に不慣れな高齢者には支援がいる場合もあります。
オンライン診療は万能ではなく、対面診療と適切に組み合わせて使うことが前提です。すべてをオンラインに置き換えようとせず、向いている場面で活用する姿勢が大切です。
クリニックがオンライン診療を始める流れ

オンライン診療を導入するには、制度への対応とシステムの準備の両方が必要です。クリニックが実際に始めるまでの流れを、準備すべきことを順を追って確認していきましょう。
基準・初診ルールの確認と研修
オンライン診療を始めるには、まず守るべきルールを正しく理解することが欠かせません。
オンライン診療基準や指針の内容を確認し、初診で行える範囲や、処方が制限される薬、対面診療と組み合わせるべきケースなどを把握しておきます。特に、安全性に関わるルールは慎重な確認が必要です。
あわせて、オンライン診療を適切に行うための研修の受講も求められます。厚生労働省が定める研修を修了しておくことで、制度に沿った診療を行う体制が整います。
院長だけでなく、受付や案内を担うスタッフも含めて、運用の流れを共有しておくと、開始後の混乱を防げます。
システム選定と届出・施設基準
次に、オンライン診療を行うためのシステムを選びます。ビデオ通話の品質や使いやすさはもちろん、予約や問診、決済といった機能と連携できるか、医療情報の安全管理ガイドラインに準拠しているかを確認しましょう。
システムのめどが立ったら、改正医療法にもとづき、オンライン診療を実施する旨を都道府県へ届け出ます。
届出の方法や時期は自治体によって案内が異なるため、管轄の窓口で確認しておくと安心です。制度への対応とシステムの準備を並行して進めることで、開始までの流れがスムーズになります。
予約〜問診〜決済の運用設計
最後に、日々の運用をどう回すかを設計します。患者が予約し、問診に答え、診察を受け、決済するまでの一連の流れが、無理なくつながるように組み立てることが大切です。
予約から問診・オンライン診療・決済までをLINEやWebで一体化できるmarchのような仕組みを使えば、開始当初から負担の少ない運用を築けます。
まとめ
オンライン診療は、情報通信機器で医師が患者を遠隔診察し、処方まで行う仕組みで、2026年4月から医療法に位置づけられました。医療機関の届出や、指針から格上げされたオンライン診療基準への対応が求められます。
患者の利便性や集患の面でメリットがある一方、対面が必要なケースもあります。基準とシステムを整え、予約から問診・決済までを一体運用できるmarchを活用すれば、無理なく導入を進められます。
最短10秒、かんたんこの記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属


