オンライン診療の収支設計とは?損益分岐点と回収の考え方を解説 | 【公式】march(マーチ)

オンライン診療の収支設計とは?損益分岐点と回収の考え方を解説

2026.10.01

オンライン診療の収支設計とは?損益分岐点と回収の考え方を解説

オンライン診療の制度と費用を調べ終えると、次に出てくるのが「うちの規模で採算が合うのか」という問いです。ここで判断が止まる医療機関は少なくありません。

先に前提を1つ置いておきましょう。保険診療では、オンラインの1件あたりの点数は対面より下がります。ただし、システム利用料は医療機関が金額を決めて患者から徴収できます。これを含めた1件あたりの受取額は、対面とほぼ変わりません。判断の焦点は、システムの月額をどう回収するかです。

本記事では、収支を左右する変数の整理から始めて、システム利用料を含めた収支、損益分岐点となる件数、自費や継続処方を含めた場合の考え方までを解説します。

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オンライン診療の収支を左右する3つの変数

オンライン診療の収支を左右する3つの変数

オンライン診療の収支を動かせる変数は、3つしかありません。

単価・件数・固定費

1つ目が1件あたりの単価です。保険診療では点数が定められていますが、システム利用料の額は医療機関が決められます。

2つ目が件数になります。オンラインの枠をいくつ置き、そこがどれだけ埋まるかです。

3つ目が固定費です。システムの月額と、件数に比例する決済手数料が該当します。前者は契約で決まり、後者は売上に連動する費目です。

厳密には、スタッフの工数も費用に含まれます。ただし工数は運用の設計で大きく変わるため、まずは金額として見える3つで試算するほうが判断は早いでしょう。

保険と自費で動かせる変数が違う

ここが設計の分かれ目です。保険診療で固定されているのは点数であり、システム利用料と件数、固定費は自院で動かせます。

自費診療なら単価も設計の対象です。メニューの内容と価格、そして継続の仕組みを自院で決められます。オンライン診療の収支を語るとき、保険と自費で話が噛み合わないのはこの違いが原因です。

自院がどちらを主軸にするのかを先に決めてから、試算に入りましょう。

保険を主軸にするなら、目標は件数の純増です。自費を主軸にするなら、単価とリピートの設計が中心になります。同じシステムを使っても、見るべき数字が変わります。

▶︎関連記事:オンライン診療の診療報酬とは?2026年度の点数・算定要件を解説

点数差とシステム利用料|1件あたりの受取額

点数差とシステム利用料|1件あたりの受取額

点数だけを見ると、対面の患者をオンラインに移した1件あたりは下がります。差を生むのは、再診料ではなく加算と管理料です。

点数だけを見ると1件あたりが下がる

情報通信機器を用いた再診料は76点で、対面と同額です。ただし、情報通信機器を用いた再診では外来管理加算の52点を算定できません。

特定疾患療養管理料も下がります。診療所の場合、対面の225点に対して情報通信機器を用いた場合は196点です。生活習慣病管理料(Ⅱ)は333点が290点になります。

再診料と管理料を合わせた差は、次のとおりです。以下は基本的な点数を積み上げたもので、実際の算定可否は患者の状態や実施内容によって変わります。

算定する管理料対面情報通信機器を用いた場合1件あたりの差
特定疾患療養管理料(診療所)353点/3,530円272点/2,720円81点/810円
生活習慣病管理料(Ⅱ)409点/4,090円366点/3,660円43点/430円

特定疾患療養管理料の欄には、対面のみ算定できる外来管理加算52点を含めています。差の81点は、この加算と管理料の減少分の合計です。

システム利用料で差は埋められる

この差は、システム利用料で埋められます。情報通信機器の運用に要する費用は、療養の給付と直接関係ないサービス等の費用として患者から別途徴収できます。2026年6月からは、実費徴収できるものの具体例に「予約やオンライン診療の受診に係るシステム利用料」が明記されました。金額に公定価格はなく、設定するのは医療機関です。

厚生労働省の調査では、患者から費用を徴収している医療機関は約29%で、1人あたりの徴収額は中央値600円、平均891円でした。特定疾患療養管理料を算定する再診なら、600円の徴収で1件あたり3,320円、810円に置けば対面の3,530円と並びます。

ただし、徴収する額は社会的にみて妥当適切なものとされています。内容と料金の院内掲示とウェブサイトへの掲載、料金を明示した文書での同意、区別した領収証の発行も要件です。「お世話料」などの曖昧な名目では徴収できません。なお、利用料は患者の自己負担です。600円を徴収すると、3割負担の患者が窓口で払う額は対面より約350円増えます。

特定疾患療養管理料を算定する再診を月20件移す場合、点数だけで見た減収は810円×20件で16,200円です。ここでシステム利用料を810円徴収すれば、この減収は打ち消せます。残るのはシステムの月額と決済手数料で、決済手数料は公開されている料率のうち確認できたもので2.95%でした。

システム月額が15,800円なら、決済手数料の約2,000円と合わせて、月およそ17,800円が回収すべき固定費です。月額33,000円のサービスなら、およそ35,000円です。

つまり、1件あたりで見れば対面とオンラインの差はほぼ消え、判断は固定費を回収できるかどうかに移ります。ただし、実際に徴収している医療機関は3割弱です。取らない場合は、点数差がそのまま残ります。利用料を取るかどうかを決めないまま導入すると、数か月後に「思ったより増えなかった」という結論になります。

置き換えの価値は、今月の数字だけでは測れません。通院の負担で治療から離れていた患者をつなぎとめれば、離脱を防いだ分は将来の収入として残ります。ただし、それは今月の収支には表れない性質のものです。試算と、導入の目的を分けて考えましょう。

損益分岐点|何件でシステム費用を回収できるか

損益分岐点|何件でシステム費用を回収できるか

では、どう使えば合うのか。答えは、置き換えではなく純増を作ることです。

管理料別・月額別の分岐点

オンラインでなければ来なかった患者が増えた分は、そのまま増収になります。システムの月額を回収するのに必要な純増件数を計算しました。決済手数料2.95%を差し引いた実質の単価で割り、システム利用料は徴収しない前提を置いています。

システム月額特定疾患療養管理料(実質2,640円/件)生活習慣病管理料(Ⅱ)(実質3,552円/件)
0円0件0件
15,800円月6件月5件
33,000円月13件月10件

月額15,800円のサービスなら、純増が月6件あればシステム費用を回収できる計算です。1日あたりに直すと1件に満たない水準になります。

一方で月額33,000円なら、必要な純増は月13件です。同じ純増件数でも、月額の水準によって黒字になるかどうかが変わります。

管理料による差も見ておきましょう。生活習慣病管理料(Ⅱ)を算定する患者は1件あたりの単価が高いため、同じ月額でも必要な件数が少なくなります。どの患者層をオンラインに向けるかで、分岐点は動く形です。

システム利用料を600円徴収するなら、実質の単価は1件3,222円まで上がります。必要な純増は、月額15,800円なら月5件、33,000円なら月11件です。

月額0円のサービスをどう見るか

月額0円で決済手数料のみというサービスもあります。この場合、固定費がないため1件目から収支はプラスです。

件数が読めない立ち上げ期には、この設計が向きます。ただし、機能の範囲が限られる場合があり、予約や問診を別に契約すると総額は変わります。月額だけでなく、必要な機能をそろえたときの合計で比べましょう。

決済手数料の料率が公開されていないサービスもあります。固定費が0円でも、料率が高ければ件数が増えるほど負担は重くなる構造です。見積もりの段階で料率まで確認しておきます。

▶︎関連記事:オンライン診療システム比較13選|費用相場・選び方を解説

自費・継続処方を含めた場合

保険だけで組むと、収支は件数の勝負になります。自費を含めると、単価と継続という2つの変数が使えるようになります。

単価そのものを設計できるのは自費

自費診療には公定価格がありません。メニューの内容と価格を自院で設計できます。

同じ1件でも、保険の再診がシステム利用料を含めて3,300円前後であるのに対し、自費のメニューは単価の置き方次第です。件数を大きく増やさなくても、収支の絵が変わります。

ただし、保険診療と自費診療を併用すると原則として全額が自己負担になります。会計と記録を分けて設計することが前提です。

継続の設計が効く

もう1つが継続です。単発の診察だけでは、毎月ゼロから件数を積み上げることになります。

継続処方や定期購入の仕組みがあれば、翌月の件数もある程度読める形になるでしょう。marchの導入事例では、定期購入プランへの移行率が約50%、売上が導入から5か月で約60%アップという数値が公開されている医療機関があります。これは特定の医療機関の事例であり、すべての導入先で同じ結果になるものではありません。

なお、自費のメニューと、保険診療で徴収するシステム利用料は別の費目です。どちらをいくらに置くかで、患者から見た1回あたりの支払いは変わります。

回収期間の見積もり方

回収期間の見積もり方

分岐点の件数に届くまでには、患者への周知が進む時間がかかります。回収の見積もりは、その期間を織り込んで立てます。

初期費用と立ち上げ期間

初期費用を0円としているサービスは複数あります。その場合、回収すべきものは月額の固定費だけになるため、回収期間という考え方より「何件で黒字になるか」で見るほうが実態に合います。

考慮したいのは立ち上げの期間です。開始した月からいきなり分岐点の件数に届くことはまれで、患者への周知が進むまでに数か月かかります。3か月は分岐点に届かない前提で見ておきましょう。

途中で判断するための数字も決めておきます。3か月目に何件なら継続し、何件なら運用を見直すのかを先に決めておけば、感覚での中止を避けられるものです。

見積もり時に確認すること

見積もりを取る段階では、月額に加えて決済手数料の料率を必ず聞きます。料率が数%動くと、件数が増えるほど差が広がるためです。

電子カルテ連携の費用が別途かかるかどうかも確認しておきます。月額に含まれると思っていた項目が別料金だと、分岐点の件数が変わります。

最低契約期間と解約時の費用も、試算の前提に入れておきましょう。件数が伸びなかったときに止められるかどうかで、取れるリスクの大きさが変わります。年間一括のプランは月額換算で安く見えますが、途中でやめられない前提の金額です。立ち上げ期は月次契約から入り、件数が読めてから切り替える進め方もあります。予約から問診・診察・決済・配送までを1つで扱えるmarchのような構成なら、機能ごとの契約を積み上げずに総額を把握しやすくなります。

まとめ

収支を動かせる変数は、単価・件数・固定費の3つです。情報通信機器を用いた再診では外来管理加算52点を算定できず、特定疾患療養管理料も225点が196点に下がります。点数だけで見た1件あたりの差は81点、金額にして810円です。ただしシステム利用料は医療機関が額を決めて徴収できるため、810円に置けば1件あたりの受取額は対面と並びます。

そのため、1件あたりで見た対面との差はほぼ消え、残るのはシステムの月額と決済手数料です。収支を合わせるには純増が要り、利用料を徴収しない前提での分岐点は、月額15,800円なら特定疾患療養管理料で月6件、生活習慣病管理料(Ⅱ)で月5件です。

自費を含めると、単価と継続という2つの変数が使えます。ただし保険との併用は原則として全額自己負担になるため、会計と記録は分けて設計します。見積もりの段階では、月額だけでなく決済手数料の料率、電子カルテ連携の費用、最低契約期間まで確認しておきましょう。marchのような一気通貫の構成も含め、総額で比べることが判断の前提になります。

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この記事の監修者

監修者尾崎 功治

2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。

日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属