患者にとって利用しやすい環境を整えるために、オンライン診療システムの導入を検討する医療機関が増えています。導入にあたっては利用料が発生するため、相場はいくらか、医療機関が負担するのが一般的かと疑問に思う方もいるでしょう。
費用は大きく2つ、保険が使える診察料と、保険が使えないシステム利用料や配送料です。さらに医療機関がシステム提供会社に払う費用もあり、どれを誰が負担するかで考え方は変わります。
本記事では、システム利用料の内訳と負担の考え方、そのほかに発生する費用、主要サービスの月額の実額、そして回収に必要な件数までを解説します。
最短10秒、かんたんオンライン診療のシステム利用料とは|診察料とは別に発生する費用

オンライン診療のシステム利用料とは、オンライン診療のシステムを使うことによって発生する、診察代とは別の利用料のことです。
診察料とは別に発生する費用
システム利用料には、導入時にかかる費用や、システムを使い続けるための維持費、アップデートのための費用などが含まれます。そのため、一度の支払いではなく、継続して支払うことが一般的です。
医療機関が支払う月額と、患者から受け取る利用料は別のものです。前者は医療機関とシステム提供会社の契約、後者は医療機関と患者の間の話になります。金額の話が噛み合わないときは、たいていこの2つが混ざっています。
検索して出てきた金額を、そのまま自院に当てはめないよう注意しましょう。患者向けの記事と医療機関向けの記事が同じキーワードで並ぶ領域のため、どちらの立場で書かれた金額なのかを確かめる必要があります。
保険が使える費用と使えない費用
診察料や処方箋料は保険診療の枠内で、患者は自己負担割合に応じた金額を払います。
一方、情報通信機器の運用に要する費用は、療養の給付と直接関係ないサービス等の費用として別途徴収できるとされています。これがシステム利用料の根拠であり、保険の対象ではないため全額が患者の負担です。
なお、予約に基づく診察を理由とした特別の料金は、情報通信機器を用いた診療では徴収できません。同じ「別途の費用」でも、認められるものと認められないものがあります。
利用料は医療機関と患者のどちらが負担するか

オンライン診療のシステム利用料は、医療機関負担と患者負担のどちらになるのか気になる方もいるでしょう。どちらにも負担するケースがあるため、支払いに関するトラブルを防ぐには慎重な判断が要ります。
システム利用料は、医療機関と患者のどちらが負担しても構いません。どちらにするかを決めるのは医療機関です。
医療機関側が負担するケース
導入費や維持費などシステムを利用するにあたりかかる費用が高額であれば、医療機関側が負担するケースが一般的でしょう。システム利用料は、オンライン診療システムを提供する会社によって異なります。
初期費用のみで月額が無料のもの、初期費用が無料で月額がかかるものなど、料金体系にも幅があります。料金が高いからといってサービスの質がよいとは限りません。費用の多寡ではなく、自院の運用に合うシステムを選ぶことが大切です。
判断の目安になるのが、システムがカバーする範囲です。ビデオ通話と決済だけのサービスと、予約・問診・診察・決済・配送管理まで含むサービスでは、同じ月額でも守備範囲が違います。足りない機能を別契約で補うなら、その分も費用に加えて比べましょう。
患者側が負担するケース
オンライン診療のシステム利用料は、患者に請求することもできます。請求する金額は導入しているシステムの利用料によるため、医療機関の判断です。
厚生労働省の調査では、徴収している医療機関は約29%、1人あたりの徴収額は中央値600円でした。
ただし、患者の負担が大きすぎると、オンライン診療の導入による受診促進の効果は期待できません。診察料そのものは対面より安く済むため、利用料の設定次第で患者から見た総額は対面を上回ります。
「オンライン診療は高い」と感じる患者がいるのは、この構造が理由です。対面では診察料と薬代だけだったところに、利用料と配送料が加わります。患者が比べているのは点数ではなく、窓口で払う金額になります。
通院にかかる交通費や、仕事を休むコストまで含めれば見え方は変わるでしょう。ただし、その比較は患者が自分で行うものであり、請求額の内訳が分からなければ判断できません。
患者が負担する場合は事前説明と同意が必要
システム利用料を患者に負担してもらう場合は、療養の給付と直接関係ないサービス等の費用として扱います。2026年6月からは、実費徴収できるものの具体例に「予約やオンライン診療の受診に係るシステム利用料」が明記されました。徴収には、料金の院内掲示とウェブサイトへの掲載、文書での同意、領収証の発行が要ります。
患者がオンライン診療後の請求金額に違和感を持たないよう、事前の説明を徹底し、スタッフ全員にも利用料について周知しておきましょう。予約の段階で内訳を示しておけば、診察後の摩擦は避けられます。
利用料以外に医療機関・患者が負担する費用

医療機関や患者は、システム利用料以外にも診察料や決済手数料など、複数の費用を負担します。
診察料と処方箋料
オンライン診療でも対面診療と同様に健康保険が適用されます。かつては「オンライン診療料」という独立した区分がありましたが、現在の医科診療報酬点数表にこの区分はありません。初診料・再診料の「情報通信機器を用いた場合」として評価されます。
2026年度改定後の点数は次のとおりです。1点は10円で計算し、以下は3割負担の場合の目安になります。自己負担割合は年齢や所得によって1割から3割まで変わります。
| 項目 | 点数 | 総額 | 3割負担の目安 |
| 初診料(情報通信機器を用いた場合) | 253点 | 2,530円 | 約760円 |
| 再診料(情報通信機器を用いた場合) | 76点 | 760円 | 約230円 |
| 特定疾患療養管理料(情報通信機器・診療所) | 196点 | 1,960円 | 約590円 |
| 生活習慣病管理料(Ⅱ)(情報通信機器) | 290点 | 2,900円 | 約870円 |
| 処方箋料(多剤投与などに該当しない場合) | 60点 | 600円 | 180円 |
生活習慣病で月1回の再診をオンラインで受ける場合、再診料と生活習慣病管理料(Ⅱ)で計366点です。3割負担なら約1,100円で、処方箋が出れば180円が加わります。情報通信機器を用いた初診料は対面の291点より38点低いため、診察料だけを見れば患者の負担は軽くなります。
決済手数料
オンライン診療の支払いでは、クレジットカード決済が一般的です。そのため、決済手数料を考慮する必要があります。
料率を公開しているサービスは限られていました。確認できた範囲では、デジスマ診療がオンライン決済のサービス利用手数料を決済額の2.95%としています。ここに入金手数料と口座管理費が加わると記載されています。
決済手数料を負担しているのは、多くの場合は医療機関です。患者負担とする場合には、療養の給付と直接関係ないサービス等の費用に該当するため、説明と同意が前提になります。
薬の配送料
薬を自宅へ送る場合は、配送料も発生します。公開している例では、SOKUYAKUが当日配送660円、翌日配送550円といずれも税込で示しています。
院外処方で患者が薬局へ行く場合は、配送料そのものが発生しません。宅配の実費がかかるのは、院内処方で自宅へ送る場合です。薬局から送ってもらう場合も、薬局側の設定によって金額が変わります。どのルートになるのかを、案内の時点で伝えておきましょう。
主要サービスの利用料の実額
ここからは医療機関が負担する側の話です。公開されている金額を並べます。いずれも2026年8月31日時点の公開情報です。
公開しているのは13社中4社
| サービス | 初期費用 | 月額 | 決済手数料 |
| curon | 0円 | 0円 | 別途負担(料率の記載なし) |
| ヘルステックONE byGMO | 0円 | 0円 | 記載なし |
| デジスマ診療 | 0円(スタンダードプラン) | 15,800円 | 決済額の2.95% |
| YaDoc | 無料 | 33,000円(税込・19床以下向け基本プラン) | 記載なし |
| march | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
主要13サービスを調べたところ、初期費用と月額の両方を公開していたのは4社だけでした。残りは問い合わせや見積もりでの案内です。
金額を出さない理由は、料金体系が件数や機能の組み合わせで動く点にあると考えられます。診療科・想定件数・既存システムとの連携範囲で見積もりが変わるため、一律の価格を載せにくい事情があります。「相場は月額◯円」という言い方は、この領域では成立しにくいものです。
見落としやすいのが電子カルテ連携の費用です。Symviewは、電子カルテ連携を利用する場合に連携費用が別途発生すると明記しています。月額に含まれると思っていた項目が別料金だと、想定した総額と変わります。
何件で回収できるか
システムの月額を回収するには、オンラインでなければ来なかった患者を増やす必要があります。既存の対面患者を移すだけでは点数が下がるため、システム利用料を徴収しない限り1件あたりの収入は減ります。
情報通信機器を用いた再診では、外来管理加算の52点を算定できません。特定疾患療養管理料も診療所で225点が196点に下がるため、1件あたりの差は81点、金額にして810円です。システム利用料を810円徴収すれば、この差は埋まります。
必要な純増件数を計算しました。決済手数料2.95%を差し引いた実質の単価で割り、システム利用料は徴収しない前提を置いています。以下は基本的な点数を積み上げたモデルで、実際の算定可否は患者の状態や実施内容によって変わります。
| システム月額 | 特定疾患療養管理料を算定する場合 | 生活習慣病管理料(Ⅱ)を算定する場合 |
| 0円 | 0件 | 0件 |
| 15,800円 | 月6件 | 月5件 |
| 33,000円 | 月13件 | 月10件 |
月額15,800円のサービスなら、純増が月6件あれば費用を回収できる計算です。月額0円のサービスは固定費がないため、件数が読めない立ち上げ期と相性のよい設計になります。
立ち上げの期間も見込んでおきましょう。開始した月からいきなり分岐点の件数に届くことはまれで、患者への周知が進むまでに数か月かかるものです。3か月は届かない前提で計画を立てておくと、途中で判断を誤りません。
導入に関する注意点

自院とオンライン診療のミスマッチが生じると、導入によって損失が発生することもあります。そうならないよう、費用以外の注意点も確認しておきます。
処方できない薬がある
初診からのオンライン診療では、処方できない薬があります。厚生労働省の指針は、初診の場合に麻薬および向精神薬の処方を行わないこととしています。
加えて、基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対しては、特に安全管理が必要な薬品の処方と、8日分以上の処方も行えません。睡眠薬や抗不安薬を扱う可能性がある精神科や心療内科では、オンライン診療の適用範囲を慎重に検討することになります。
対面で薬剤を処方し、オンラインでは経過観察を担う。そのように役割を分けて運用するクリニックもあるでしょう。
なお、令和8年度改定後の施設基準では、自院のウェブサイトへの掲示も求められています。掲示する内容は、情報通信機器を用いた診療の初診で向精神薬の処方を行わない旨です。運用の設計と掲示の準備は、あわせて進めておきましょう。
初診はできない可能性がある
初診からオンライン診療を実施できるのは、原則として日頃より直接の対面診療を重ねている医師、いわゆる「かかりつけの医師」です。
ただし例外もあり、既往歴・服薬歴・アレルギー歴などから、問診と視診を補完するのに必要な医学的情報を把握できる場合は実施できます。可能かどうかは、患者の症状と合わせて医師が判断します。この場合、事前に得た情報は診療録に記載しなければなりません。
かかりつけの医師以外が初診から実施する場合には、診療前相談という枠組みも用意されています。初診の患者を多く受け入れる想定でオンライン診療を設計するなら、この要件を先に確認しておきましょう。
▶︎関連記事:オンライン診療の診療報酬とは?2026年度の点数・算定要件を解説
まとめ
システム利用料は、オンライン診療のシステムを使うことで診察代とは別に発生する費用で、医療機関が負担することも、患者に請求することもできます。患者に請求する場合は、療養の給付と直接関係ないサービス等の費用として、事前の説明と同意が必要です。
システム利用料以外では、診察料と処方箋料、決済手数料、薬の配送料が発生します。2026年度改定後の点数では、情報通信機器を用いた初診料が253点、再診料が76点で、3割負担なら約760円と約230円です。診察料だけを見れば対面より安く済みますが、システム利用料と配送料が乗ると総額は変わります。
医療機関側の費用は、システムの月額が0円から33,000円まで幅があり、決済手数料が加わります。主要13サービスのうち初期費用と月額を公開していたのは4社だけでした。回収に必要な純増件数は、月額15,800円なら特定疾患療養管理料で月6件です。予約から問診・診察・決済・配送までを1つで扱えるmarchのような構成も含め、必要な機能をそろえたときの総額で比べましょう。
最短10秒、かんたんこの記事の監修者
監修者尾崎 功治
2014年北京大学医学部卒業後、中国医師免許取得。17年日本へ帰国後、日本医師免許を取得し、順天堂大学付属順天堂医院に勤務。国際診療部に従事後、現マーチクリニック院長。
日本美容皮膚科学会・国際臨床医学会所属

